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2018年12月30日18:45

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さざなみのよる[読書日記706]

題名:さざなみのよる
著者:木皿 泉(きざら・いずみ)
出版:河出書房新社
価格:1400円+税(2018年4月 初版発行)
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マイミクさんに教えてもらった小説です。

小説の読書日記を書くのは、ネタばれになるので苦手ですが、帯にあった言葉を引用するなら許されるので引用します。
“「小国ナスミ、享年43。」
 宿り、去って、やがてまた やって来る――
 感動と祝福の物語”

主人公、小国ナスミが亡くなり、その波紋が少しずつ広がっていく物語です。
読み始めて、なぜ「ナスミ」という変わった名前なのか、不思議に思いながら読み進めましたが、その種あかしもされています。

内容がばれないように、印象に残った一節をいくつか引用します。

第1話から。
“あのとき、自分は何に腹を立てていたのだろう。自分の思い通りにならなかった、ということに荒れ狂った。
 もともと人間なんて、思い通りになんてならないのに。それがわかったのは病気になってからだ。
 あの頃の自分に教えてやりたい。あんたは自分で考えていたのより百倍幸せだったんだよって”(6p)

第6話から。
“清二はおかしかった。こうやって、昼下がり、ポテトを食べながらコーラをの飲んでいる二人が悲しみの真っ只中にいるなんて、
そのことについて話しているなんて、誰も知らないのだ。
 そして、泣けないぐらい悲しいことが、この世にあるってことがを、オレたちは知っている。こんなありきたりの風景の中にいるというのに”(69p)

第9話から。
“笑子ばあさんがつくるオハギは人気で、店に出すとすぐ売れてしまう。
 「ばぁちゃんの、その小豆のさわり方がさ、なんていうんだろう、優しいっていうのとはちょっと違うなぁ。
  愛しい? 愛情にあふれてる? ああ、なんか全部違うなぁ。言えば言うほど違ってくる」
 ナスミはうまいコトバが出てこなくて、じれったそうに頭をたたく。
 利恵には、ナスミの言いたい感じがわかる気がした。(略)
 「慣れているはずなのに、初めてみたいな感じであつかうんですよね」
 利恵が思わずそうつぶやくと、
 「そう、それッ! 初めてさわるみたいに、一粒一粒ていねいなのよ」”(114p)

第11話から。
“何をあげて、何をもらったのか、誰も知らない。だからこそ、それは私の体の中にいつまでもいつまでも残るだろうと思った”(170p)

自己満足っぽい読書日記になりましたが、少しでもこの本の良さが伝わったら、幸いです。

数年前、著者の第一作『昨夜のカレー、明日のパン』を読もうとしたら、図書館で150人待ちで諦めたことを思い出しました。
新年に『昨夜のカレー、明日のパン』を読もうと思いました。

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木皿 泉(きざら・いずみ)
1952年生まれの和泉務と、57年生まれの妻鹿年季子による夫婦脚本家。
2003年、初の連続ドラマ「すいか」で第二二回向田邦子賞受賞、さらに同作でギャラクシー賞受賞。
その他のテレビドラマに「野ブタ。をプロデュース」(05年)、「セクシーボイスアンドロボ」(07年)、「Q10」(10年)など。
また、初めて手がけた小説『昨夜のカレー、明日のパン』(小社刊)は2014年本屋大賞第二位、山本周五郎賞にもノミネートされ、のちに自身の脚本で連続ドラマ化もされた。
ラジオドラマ、アニメ映画、舞台脚本などでも活躍。
著書にシナリオブック『すいか1・2』『ON THE WAY COMEDY 道草(全4冊)』(すべて河出文庫)、エッセイ集『二度寝で番茶』『木皿食堂』『6粒と半分のお米 木皿食堂2』(すべて双葉文庫)、『お布団はタイムマシーン 木皿食堂3』(双葉社)など。

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