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2018年11月18日18:38

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天災から日本史を読みなおす[読書日記700]

題名:天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災
著者:磯田 道史(いそだ・みちふみ)
出版:中公新書
価格:760円+税(2018年9月 21刷発行)
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今、テレビ番組等に出演して、人気の歴史学者(?)磯田道史さんのベストセラーです。
2014年11月に初版本が出てから、21刷り50万部。著者の人気だけでなく、内容も伴っていなければ達成できない部数です。

ページをめくると日本地図があり、そこに“本書に登場する主な被災地”が記されています。
北海道を除く、ほとんど全国各地に印が付いており、改めて驚きます。

目次を紹介します。
 第1章 秀吉と二つの地震
 第2章 宝永地震が招いた津波と富士山噴火
 第3章 土砂崩れ・高潮と日本人
 第4章 災害が変えた幕末史
 第5章 津波から生きのびる知恵
 第6章 東日本大震災の教訓

印象に残ったところを各章から引用しましょう。
【第1章 秀吉と二つの地震】から、天正地震(1585年)が、豊臣秀吉に攻められる寸前だった徳川家康と救ったという話。
“秀吉は(天正)地震の復興を待って、ゆっくりと家康を攻め、徳川家の息の根を止めておくべきであった。
 そうすれば徳川政権は成立せず、秀吉の愛児・秀頼の運命も変わった。秀吉が家康などの有力大名を武力で制圧していれば、近代日本はより中央集権的な国家になっていただろう”(14p)

【第2章 宝永地震が招いた津波と富士山噴火】から、大地震が富士山噴火につながった宝永地震(1707年)の話。
“したがって、宝永地震については、本震から富士山噴火につながるまでの余震や誘発地震の研究が丁寧になされる必要がある。
 なぜなら、現代の我々も、富士山噴火の危険にさらされているからである”(51p)

【第3章 土砂崩れ・高潮と日本人】から、浜辺に水塚(津波が襲ってきた時に逃げ込める人口の山)を作った領主の話。
“(1680年3月の)高潮の後、この地の領主・本多越前守利長が悪政をしき、領地を召し上げられたのだが、本多は良いこともした。
 防潮堤の工事をしていたのだ。(略)
 「寛文年中(1661〜73年)に、本多越前守殿は、浜辺の村々に『水塚』を築いたので村々の男女は心安く住居した」と『百姓伝記』にある”(103p)

【第4章 災害が変えた幕末史】から、討幕の鍵となった佐賀藩の戦力(西洋火器)が台風と関係するという話。
“1828年のシーボルト台風の被害から立ち直るために、佐賀藩に西洋文明を重視する改革派勢力が登場。
 これが日本国内に佐賀藩というミニ西洋工業国家を誕生させ、この権力体が、のちに東芝の元祖となる田中久重(からくり儀右衛門)を雇い、大砲製造を命じるなどあらゆる西洋文物の国産化を試させた”(124p)

【第5章 津波から生きのびる知恵】から、大地震の予兆を捉える方法。
“南海地震の前に井戸水が枯れた、減った、との証言は、実は古文書にもある。
 高知県土佐清水市中浜はジョン万次郎が生まれた村だが、万次郎と同世代で、この村にうまれた池道之助という男が安政南海地震に遭い
「大地震の前には急に井の水へる物なり、へらぬ井戸はにごる物なり。 大ゆり(大揺れ)には井を見るべし」
と書いている(「資料・証言に見る南海地震前の井水涸れ及び異常潮位」(『京都大学防災研究年報』第四八号)”(171p)

【第6章 東日本大震災の教訓】から、東日本大震災で格段に死者・行方不明者の少なかった岩手県普代村の話。
普代村の人々を守った防潮堤と水門を国に掛け合って作った和村幸得 元町長の話。
“もう一度、和村幸得さんの回想録『貧乏との戦い四十年』を読み返したい。和村さんは岩手県の熱心な設計技師とともに、普代村の地形を調査し、設計書を作り上げる。
(略)
 和村さんの水門と太田名部防潮堤は、自然の地形を巧みに利用している。山の谷が狭まったところに水門や防潮堤を造り、その外側には家を建てないよう計画していた。
 自然地形を利用するから、水門や防潮堤の長さは短くてすむ”(210p)

個人的な体験ですが、私は子供の頃に長野県に住んでいて、そこで新潟地震(1964年)に遭いました。
その経験からか、今でも地震には敏感です。

本書を読んで、地震・火山が多い日本に住んでいる以上、人間の知恵で防災・減災に努めるしかないと改めて思いました。

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磯田 道史(いそだ・みちふみ)
1970年、岡山県生まれ、慶応義塾大学大学院文学研究科博士課程修了、博士(史学)。
茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年4月より国際日本文化研究センター准教授。
本書で第63回日本エッセイスト・クラブ賞受賞。2018年、伊丹十三賞受賞。
著書『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞)
  『近世大名家臣団の社会構造』(文春学藝ライブラリー)、
  『殿様の通信簿』(新潮文庫)、
  『江戸の備忘録』(文春文庫)、
  『龍馬史』(文春文庫)、
  『無私の日本人』(文春文庫)、
  『歴史の愉しみ方』(中公新書)、
  『「司馬遼太郎」で学ぶ日本史』(NHK出版新書)、
  『日本史の内幕』(中公新書)、
  『素顔の西郷隆盛』(新潮新書)など多数

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