手入れする者もなく日々密林化しつつある我が家の裏庭は、野良猫どものパラダイスと化してをり、とりわけ、かつて差し押さへられた建物から私が必死の思ひで救ひ出した、ダンボール詰めの書籍の山にブルーシートをかけたものは、シートはめくれ、山はなかば崩れ、風雨にさらされ、そして野良猫たちの巣と化してゐるのだつた。そんな野良猫どもが、家のなかにまで侵入することは、これまでもたびたびあつた。
ところで、先日、仕事休みで家に居た弟が、暗い廊下でばつたり出くはしたのは、うちのチワワ犬よりも二回りも小さな、毛色はそつくりな白黒の、子猫であつたといふ。弟と出くはすやいなや、子猫は逃げ出して、弟はその姿を見失つてしまつた。それからしばらくして、寝たきりの母の病室に弟が入ると、なんと、母の脚に掛けた毛布の上に子猫がちんまりと座つて居たといふのだ。しかも、子猫のすぐそばの、母のわきの下あたりには、我が家の盲目のチワワが、子猫には何の反応もせずに寝てゐたのである!目が見えぬのは致し方ないとして、匂ひや気配で猫と察知して吠える甲斐性も無かつたのだつた。
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