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2018年10月02日10:38
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「ブロードキャスト」／湊かなえ
序章
第1章 オンエア／第2章 シノプシス／第3章 サウンドエフェクト
第4章 完パケ／第5章 アドリブ
終章
少しばかり走るのが得意な小学生の僕｢町田圭祐｣は､
中学に入学して、同学年の天才ランナー｢山岸良太｣に誘われ、
陸上部に入部、それなりに活躍し、
高校でより一層力を付け、大学では！と未来を夢見、
私立の陸上強豪校｢青海学院｣を目指し、見事合格！
… その合格発表の日の帰途、 交通事故に遭って足を骨折…
陸上競技に賭けた夢を断たれ、
この高校に入学した意味も失って…
そんな､茫然自失の僕の前に｢宮本正也｣が現れた｡
彼は放送作家志望で、活躍が目覚ましい放送部を目標に
青海学院に入学したという。
この高校の放送部は毎年放送コンテストの上位を占める実力があったのだ。
そんな事は全く知らなかった僕。
正也に、｢声が抜群にイイ！｣などと今まで思ってもみたことがないことを言われ
なりゆきで、同級生の少女｢久米咲楽｣も誘って入部することになった。
その時放送部は､JBK放送コンテストに応募する準備に追われていた。
なんとなく緩い3年生5人はテレビドラマ｢チェンジ｣。
妙にキツイ副部長を中心とするヤル気いっぱいの2年生は
ラジオドキュメント作品｢シャッターを再び上げる日｣
テレビドキュメント作品｢トマトクッキーを召し上がれ｣
そして､
ラジオドラマ枠には今年はエントリーせず､という状況を知った2年生に
責められる3年生を見ていて、
正也が｢それなら僕が脚本を書きたい！｣と手を挙げた。
あと1か月で？！と驚く3年生だったが、
やる気のある人間にやる機会をあたえるべき！と2年生の後押しで、
正也の脚本で製作が始まった。
当初､｢実は書いたものがあるんだ｣と言っていた正也だったが、
ある時、咲楽がスマホを持たない理由を知り、
高校生のイジメ、特にwebやNetの世界に絞ったSF作品｢ケンガイ｣を
イッキに書き上げた。
正也の真剣さに、2年も3年も真剣に応えてくれた。
キツイ｢イジメ｣は審査員受けが悪いのでは？という指摘に
｢おもしろい作品っていうのは､怒られたり､非難されたりする覚悟をもって
境界線を越えた先に生まれるもの｣
｢その境界線だって､他人の反応ばかり気にして
自分で勝手に内側に引きすぎたものだったりして、
本当に越えたことには滅多にならないみたい｣
放送部がコンクールに優勝した時の部長だった兄の言葉、
と、3年生の今の部長が語ってくれて､｢ケンガイ｣は動き出した。
様々な問題を乗り越えながら作品が完成。
そしてコンクール本番！
文化部で､試合と同じ緊張感を感じられることを僕は初めて知った。
そのころ､僕の骨折した足が巧く回復していて、
また走れる可能性が出てきた。
高校の陸上部監督に陸上復帰を誘われ、
中学の監督との関係と彼の僕への評価を聞き､心が激しく動くが、
結局､僕は来年の放送コンクールで優勝を目指す。
湊さん…
面白いが､後味の悪いスッキリしない作品、というのが私のイメージ。
なので本作も、で？どこから？どんな不穏な展開に？
と､受け入れ準備バッチリで読み進めたが、
最後まで｢心ふるわす青春小説｣だった。
もちろん、湊さんらしい切っ先の鋭いフレーズが、
佳作にしあげている。
マスコミ界の怪しいミステリーを想定して読み始めたので、
ちょっと､肩透かしを喰わされた感はあるけれど。
作品の所要時間は9分！
3000ｍを9分で！と陸上競技で体に叩き込んできた僕の、
呼吸､ペース配分､スパートをかけるタイミング､
｢それは1つの分野として研究を重ねて完成された物なんだから
他の分野でも充分に生かせる｣と言われ… と
こんな所で、陸上と放送作品をかぶせてきたり、
脚本の骨子、
起･承･転結 ＝ 序･破･急 を正也に語らせたり、
周辺資料をガッツリ読み込んで取材も重ねての結果、の作品完成だろう。
ついつい、作家の資料取材の深さを推し量ってしまうこの頃である。
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