みな人の 迷いの海は深くとも
法の船にて 渡す岸寺 (江州伊香三十三所五番札所)
数ある仏像の中でも特に十一面観音が好きだ。
仏像の頭の上にさらにいろんな表情の頭が乗っかっている。頭上の
前3面が菩薩の慈悲相。
左3面が瞋怒相。
右3面が狗牙上出相。
うしろ一面が暴悪大笑相。
これら10の相の頂上に立つ仏面が如来相。
湖北・高月町 渡岸寺(向源寺)の国宝十一面観音に、11年ぶりの再会。
10数年前仏像ブームが起こりはじめたころ、近畿各地の有名な十一面観音を観て回った(法華寺、室生寺、長谷寺、聖林寺等)が、中でもやはりこの渡岸寺の十一面観音はパーフェクトだと思う。
天平時代に一木彫りで造られ数々の戦禍を逃れて保存されてきた美仏で、仏像マニアの中で大変人気があり、過去には白洲正子、井上靖などもこの仏像のことを書いている。
2006年、東京国立博物館で開催された「仏像、一木にこめた祈り」という空前絶後の仏像展に初めて出展され、2時間待ちの行列ができたそう。
この十一面観音は皇后様もご覧になったそうで、そのように大変箔が付いたので、今や立派な収蔵庫を新設し現地を訪れる人が心ゆくまで360度どの方向からもその姿を拝めるようになっている。この美仏が滋賀を出たのは2006年の東京の仏像展への一回切りらしく、たぶんそれが最初で最後だと解説の人が言っていた。
渡岸寺(向源寺)のすぐそばには観音の里文化歴史館もできていて(10年前はなかった)、立派な観光拠点になっているようだ。
先日の朝日新聞に、東京上野にある「びわ湖長浜KANNON HOUSE」のことが載っていた。
長浜市が管理するギャラリーで長浜の観音堂を東京に作った、というコンセプト。
2016年にオープンし月替りで長浜の仏像を無料展示していて、多くの仏像ファンが訪れているという。ちなみに第一回展示は竹生島の宝厳寺の聖観音だったそう。
長浜市がこのような東京進出に乗り出しているのもびっくりだけど、そのきっかけはやはり滋賀の仏像人気の火付けとなった国宝・十一面観音の2006年仏像展出展のようだ。
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