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2018年07月27日01:32

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杏梨 フラメンコピアノ パセオソロライヴVol.96

杏梨さんのフラメンコピアノ・ソロライヴ。

ロゼに近いワインカラーのドレスをまとい、毅然とした柔らかな微笑みであらわれた。ホルタ―ネックが華奢な肩に似合う。

一曲目のタンゴの色っぽさにやられた。少し緊張した面持ちの、透明で硬質なつやを持つ雰囲気とは裏腹の“熱さ”を感じさせる、そのギャップに惹かれる。

スペイン留学で直に学んだドランテスのモダンフラメンコや古い形式のものを弾きつつ、フラメンコを知らない観客にていねいに由来を説明していく、その優しさもまた彼女らしさだ。

2年前、スクリャービンを主に専攻したと語っていた杏梨さんの感性が、今夜のフラメンコに結びついた。ラフマニノフと同年のスクリャービンは、ラフマニノフのロマンチシズムよりもエロティックであり、さざ波のような音色のうねりは黒くて神秘的だ。そんな音楽を好む杏梨さんがフラメンコに来たのは必然だったといえる。

すべてをなげうってフラメンコに臨んだひたむきさ、そして、身体に叩き込んだフラメンコを途上にあるままをさらけ出す、そのまっすぐ過ぎるほどまっすぐな潔さに、私は少し泣きそうになった。彼女が秘めている漆黒の艶がごく自然に流れ出るようになったとき初めて、杏梨さんにしか為し得ない粋なフラメンコが立ち現れるだろう。

エスペランサのカウンターで「ピアノフラメンコで歌ってみたい」という声がして、ああそれは素敵なシーンだなとふと想像した。

「今夜がスタートです」と最後に語った杏梨さんの向かう先に、フラメンコの新しい地平線を予感した。

パセオフラメンコライヴVol.96
杏梨 ピアノソロライヴ
2018年7月26日(木)
高円寺エスペランサ
杏梨(ピアノ)
容昌(パーカッション)
松島かすみ(パルマ)
小松美保(パルマ)

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