昨日の宵の月を忘れないでおこう。住んでいる街の建物の間のはるか先、澄んだナイトブルーの空に浮かび、白く細い光を投げ掛けて来た三日月。どんなに遠くても、そこに確実に在るもの。
ちょっぴり疲れて帰って、ふと鏡をのぞき込むと、そこには母がいたような気がして、はっとする。一番記憶に残っている母は、今の私よりも少しだけ若く、そして何倍も我慢強かった。故郷で健在の母とは、ここ数年会っていない。
きちんと話そうとして、冷たい印象を与えてしまい、大切な人を傷つけてしまったことがある。壁というか、距離を置かれたと感じてしまったようだった。私は、自分の浅はかさを隠そうとしていたのだと思う。それはまったく意味の無かったことで、素の私の馬鹿な
ジャン=ジャック・カントロフのヴァイオリン、ジャック・ルヴィエのピアノによる、フランクのヴァイオリン・ソナタを久しぶりに聴く。繊細な軽やかさの中に、艶やかな官能を滲ませている。しなやかな音の流れにはいきいきとした推進力があり、のどが渇いたと