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2018年06月17日23:36

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障がい者の能力を戦力にする[読書日記678]

題名:障がい者の能力を戦力にする 新しいカタチの「特例子会社」
著者:川島 薫(かわしま・かおる)
出版:中央公論新社
価格:1200円+税(2018年6月 初版発行)
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特例子会社「楽天ソシオビジネス」の副社長である川島薫さんの著書を読みました。
私もお会いしたことがありますが、彼女自身、身体障害者でありながら、前向きなバイタリティーの持ち主です。

「特例子会社」は耳慣れない言葉だと思いますが、次のような定義の会社です。
“法律で定められた障害者の法定雇用率を達成する目的のために設立された会社。
 親会社から切り離して子会社として作るため「特例子会社」と言われている”
(正確には厚生労働省のサイト等で調べてください……笑)

目次を紹介します。
 第1章 楽天ソシオビジネスの誕生と10年の歩み
 第2章 人材育成・業績アップのポイント
 第3章 成長を続けるために

第1章では、特例子会社の課題として、「採用の壁」「人材育成の壁」「仕事を作る壁」を挙げ、それぞれをどのように乗り越えたかを紹介しています。
中には、組織がうまく機能していなかった頃の社内事情も率直に語られており、「楽天(本社)は、よくこの内容を本で公開することを認めたな」と感心しました。

特に感動したのは、「第2章 人材育成・業績アップのポイント」でした。
著者の名言を3つピックアップします。

1.
“何事もやってみなければわからないのです。ところが障がい者の多くが、「障がい者を守らなければ」という健常者の善意のもとに挑戦するチャンスを奪われています。
 その陰でたくさんの可能性が失われているかもしれない、と想像されることさえないのです”(78p)

2.
“特例子会社設立を考えている企業の方々の中には、「障がい者にどういう仕事を用意したらいいかわからない」と戸惑っておられるケースが多いようです。
 でも、そうした方に「健常者に何ができるのですか?」と尋ねたら、「健常者にもいろいろな人がいるからね」とお答えになるのではないでしょうか。
 障がい者も同じ。「障がい者に何ができるのか?」ではなく、「この人なら何ができるのか?」と考えるのが正しいのです”(81p)

3.
“いかにたくさんの業種を揃えても、社員にやる気がなければ効率が悪く、業績に結びつきません。
 そこで、楽天ソシオビジネスでは、評価制度を設け、社員のやる気を刺激しています。
 パフォーマンス(仕事の実績)+ビヘイビア(仕事に対する姿勢)=評価です”(102p)

2008年に設立された同社は、2012年から昨年度まで通期黒字を出し続けているそうです。多くの特例子会社では人件費は親会社負担ですが、同社は創業4年目の2011年から人件費を自社でまかなっており、そういった状況での黒字化は驚異的です。
本書は創業10年を迎えた同社の創業時からの苦労と工夫が余すところなく綴られ、とても勉強になりました。

<ご参考>
『障がい者の能力を戦力にする』紹介ページ[中央公論新社]
http://www.chuko.co.jp/tanko/2018/06/005085.html

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川島 薫(かわしま・かおる)
楽天ソシオビジネス株式会社代表取締役副社長。1962年東京都生まれ。
0歳の時に姉の乳幼児健診に一緒に連れて行かれ、「先天性両股関節脱臼」との診断を受け手術することに。
完治はしなかったが障害者手帳をとらないまま、高校卒業後の80年に教育事業出版社に就職し、経理業務に従事。
85年の結婚を機に、主婦業に専念する。87年に長女出産後、右股関節が悪化し再手術。89年障害者手帳を取得。離婚後の99年より空調メーカーのコールセンターSVとして8年ほど勤務した後、CADの訓練校に入学。訓練校の先生の勧めで東京都障害者合同面接会に参加し、2008年楽天ソシオビジネスに入社。
13年、今度は左股関節の人工股関節置換術を受け、現在も経過観察中。13年に取締役に就任し、18年より現職。

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