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2018年06月09日20:39

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言ってはいけない中国の真実[読書日記677]

題名:言ってはいけない中国の真実
著者:橘 玲(たちばな・あきら)
出版:新潮文庫
価格:710円+税(平成30年4月15日 二版)
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マイミクさんお薦めの中国論です。

目次を紹介します。
 PART1 中国人という体験
  1 人が多すぎる社会
  2 幇とグワンシ
  3 中国共産党という秘密結社
 PART2 現代の錬金術
  4 経済成長を生んだゴールドラッシュ
  5 鬼城と裏マネー
  6 腐敗する「腐敗に厳しい社会」
 PART3 反日と戦争責任
  7 中国のナショナリズム
  8 謝罪と許し
  9  日本と中国の「歴史問題」
 PART4 民主化したいけど出来ない中国
  10 理想と愚民主義
  11 北京コンセンサス
  12 中国はどこに向かうのか
  13 「超未来社会」へと向かう中国

印象に残ったところを3つ引用します。

1.《1 人が多すぎる社会》から、中国独特の「グワンシ」について。
“広い国土と多すぎる人口を背景に、中国では郷党と宗族の人的ネットワークに頼って寄る辺ない社会を生き抜いていくライフスタイルが確立した。
 この人的ネットワークが、中国社会を理解するキーワード「関係(グワンシ)」だ”(53p)

2.《6 腐敗する「腐敗に厳しい社会」》から、2014年に中国漁船が小笠原諸島周辺で密猟した件について。
“2014年11月、小笠原諸島周辺にサンゴを密猟する中国漁船が200隻以上集まり大きな問題になったが、中国政府は北京で開催されるAPEC(アジア太平洋経済協力)で日中首脳会談を予定しながらも、この明白な主権侵害行為を止めさせることができなかった。
 こんな状態では、いくら「歴史問題」で日本の道義的責任を批判しても相手にされないことは、中国政府もじゅうぶん認識していた。
 しかしそれでも、中央や省政府がどれほど強く命令しても、末端の組織に行くにしたがって指示は歪められ、責任は雲散霧消してなんの効果もなくなっていく”(177p)

3.《11 北京コンセンサス》から、中国の権力が分裂しているのではないかという話。
“分裂する権力:
 インドと中国には、カシミール州東部(新疆ウイグル自治区西部)をめぐり1962年の中印紛争後も決着のつかない領土問題がある。
 2014年9月17日、習近平はインドを訪問し第18代インド首相に就任したナレンドラ・モディとの会談に臨んだが、その数日前、中印国境に配備されていた中国軍がおきなりカシミール州ラダック地方に越境したため、「友好と協力」を呼びかけた習近平の面子は丸つぶれになった。(略)
 軍事評論家の中にはこれを「一方で手を差し出しながらもう一方で殴りつける、孫氏の兵法以来の中国の高度な外交戦略」と評価する声もあるようだが、中国共産党が辺境の人民解放軍を統制できていないと考えた方が実態に近いのではないか。(304p)

もう1つ勉強になったのは、日中間の不幸な歴史についての簡明な解説とコメントでした。
こちらも3つ引用しましょう。

1.《7 中国のナショナリズム》から、日本の近現代史の暗黒について。
“近現代史において、日本はアジアに先駆けて近代化に成功し、欧米列強と覇を競ったという大きな栄光と、"グローバルスタンダード" を先に手にした優位性を利用して不平等条約を押しつけ、近代化に失敗した朝鮮を植民地にし中国大陸を侵略したという暗黒を抱えている。
 この事実を否定したまま、隣国との正常な関係を結ぶことなどできるはずがない”(217p)

2.《9 日本と中国の「歴史問題」》から、中国が喧伝する「反日」には理由があるという話。
“中国の現代史において抗日だけが突出するのは、中国共産党による歴史の正当化や、「反日」イデオロギーのせいだけとはいえない。歴史的事実として、第一次世界大戦以降のヨーロッパ列強は自分たちの戦争で手いっぱいで、中国を侵略していたは日本だけだったのだから”(263p)

3.《9 日本と中国の「歴史問題」》から、「中国人」を団結させたのは日本だったという説明。
“「中国人」を生み出したのは日本だった――これが私の独断でないことを示すには、毛沢東の次の言葉を引用すればじゅうぶんだろう。
 「日本の軍閥はかつて、中国の半分以上を占領していました。このために中国人民が教育されたのです。
  そうでなければ、中国人民は自覚もしないし、団結もできなかったでしょう。」”(264p)

最後に、著者がもっとも懸念している問題について、《12 中国はどこに向かうのか》から引用します。
“中国の問題は、制度的に管理可能な限界を大きく超えて人口が多すぎることにある。近代世界に、近世的なルールで統治するほかはないきわめて不安定な国家がある。
 私たちは、この巨大な隣人を待ち受ける運命に巻き込まれることから逃れることはできない。
 これが日本にとっての「中国という大問題」なのだ”(316p)

中国論と書きましたが、単なる観念論ではなく実際に中国各地に足を運んで、現地の中国人と話した著者の筆致には説得力がありました。

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橘 玲(たちばな・あきら)
1959(昭和34)年生れ。作家。
小説『マネーロンダリング』『タックスヘイブン』のほか、ノンフィクションも著し、『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』は30万部のベストセラー、
『言ってはいけない』が48万部を超え、新書大賞2017に。さらに、『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』『「読まなくていい本」の読書案内』など多数。

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