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2018年05月28日21:16

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「人づくり」の大学サッカー

「ネパールナイト」3人目の登壇者は、実はネパールとは関係がない。
二年に一度開催される大学生のスポーツの祭典「ユニバーシアード」で、サッカー男子日本代表監督だった宮崎純一氏。
普段は青山学院大学のサッカー部を率いている。
 
日本はユニバーシアードのサッカー強豪国だ。
他国では、二十歳前後の有望な競技者はたいていクラブチームに所属してプロ選手として活動しているが、わが国では高校のサッカー部から直接プロ入りせずに、大学に進学して4年間プレーし、教員免許を取るなりスポーツ科学を学ぶなりして、うまく行けば卒業後にJリーグ入りする、というもう一つの王道がある。
高卒18歳でJクラブに入っても、結局出場機会が得られず練習ばかりして2-3年、名ばかりのJリーガーとして芽が出ないまま契約を打ち切られるという現実が待っているやもしれず、それよりも大学リーグで毎週のように試合に出た方が実力もつくし、大学サッカーの指導者もレベルが高い。
そして何より、Jリーガーになれなくても、大卒で教員やサラリーマンや公務員になるという、将来の選択肢も多い。
 
こうした日本社会の仕組みを反映してか、男子はユニバーシアードで過去10大会で5回の優勝、ほかもたいてい5位以内に入っている。
女子は優勝こそないが、準優勝が5回と、こちらも強豪といえるだろう。
かつて私がこの日記で偏愛を語った掘之内聖や山岸範宏も中心メンバーに名を連ねていたし、その後五輪やW杯に出場した知名度の高い選手には、長友佑都、山村和也、坪井慶介、羽生直剛、永井謙佑、林彰洋、東口順昭、岩政大樹といった面々がいる。
ユニバーシアードは昨年、台湾で開催され、日本男子は3大会ぶりに優勝した。(女子は準優勝。)
 
 
イベントの主宰者、ちょんまげ隊長ツンさんと宮崎監督がどういういきさつで知り合ったか早くも失念してしまったけれど、代表チームが福島で合宿をした際には、2014年に通行止めが解除された国道六号線をツンさんがハンドルを握って走り、合宿所では、ツンさんが制作した南相馬の小中学生のマーチングバンドの震災後の奮闘を描く短編ドキュメンタリー映画『March』を上映した。
ツンさんは、合宿中の選手の負担にならぬよう、両イベントとも希望者だけ、あるいはスタッフだけへのデモンストレーションを打診したそうなのだが、なんと全選手が参加した。
六号線を走るにあたっては、マイクロバスの予定を急遽大型バスに手配しなおし、選手らは車窓から、帰宅困難区域のようすをじっと見つめていたという。
 
宮崎監督は言う。
(ユニバーシアード代表といえども)選手たちの多くは20代で競技者を引退しているという現実がある。
僕らは彼らの将来を考えないわけにはゆかない。
大学サッカーは人づくりの場でもあるので、なるべく多くのことを見せ、多くの経験を積ませ、多くを考える機会を作ってやらなければいけないと思う、と。
 
それを聞いたツンさんが大きく頷いた。
僕もそれは感じてます。
学校サッカーの現場では、監督やコーチたちが、みんな口をそろえて「人づくり」って言うんですよ。
だから矢野綾さんみたいに、同じ大学生でも、たった独りでもああいう組織を作ってお金を集め、苦しんでいる人たちのための活動ができるんだということも、知ってもらいたいんです。
僕は選手たちが福島に関心を持ってくれたのが嬉しくて、台湾へユニバーシアードの応援に行った。
そしたら、決勝戦の日、これから試合があるっていう日の朝ですよ、選手たちが、これまでサポートしてくれた市民の方々に感謝の気持ちを伝えたいって、ホテルの前の公園を掃除したっていうじゃないですか!
それをたまたまボランティアの人が見つけて、Twitterですごく広まったって。
・・・けど監督、これって事実はちょっと違うんですって?
 
宮崎監督がニヤニヤしながら云う。
まぁ、選手が言い出したってことに、公式にはなってるんですけどネ。
前の晩、観光客が大勢公園で飲み食いしたみたいで、ゴミがたくさん散らばってましたからね。
僕らは大会中、そこで毎朝10分間、全員で寝っころがってのメンタルトレーニングをしてたんですよ。
だからその日も、ね。
 
監督は、一日おきに続く決勝までの6試合を、ベストメンバーを決めず、選手にほとんど均等に出場機会を与えて闘い終え、優勝した。
どの選手が出てもベストなチームができますから、と語るその表情には、勝利者が得た自信のほかに、教育者としてのプライドと、大学サッカーの地位をもっと高めたいという意思が感じられたように思う。
 
イベント後、帰宅した私がこの「人づくり」の話を相棒にしたら、審判員としてサッカー界の末端で活動している彼も、それは大きく実感していると言った。
審判員はレフェリー活動のかたわら地元で少年サッカーの指導をしている人が多いが、彼らは実によく、子供たちの成長や振る舞いを見ているそうだ。
子供たちが小学校、中学校、高校、そして大学生から社会人やJリーガーに育っていくのを、一人一人きめ細かく見ていて、それぞれの時代の指導者や審判員は、会うたびに、○×は近頃急に伸びたね、とか、彼は昔から言われなくても黙々と走っていたけど相変わらずよく走るね、とか、△※君は以前はよく怪我をしていたけれどここ数年はずっと怪我なしできてるじゃない、なんていう話をしじゅうしているらしいのだ。
こういう熱心で丁寧なオッサンたちの薫陶を受けて、子供たちもそのうち、自発的にゴミ拾いも始めかねないぞ。
 
 
こうして、「ネパールナイト」は参加人数のわりには盛況のうちにおわった。
ツンさんと矢野綾さんの活動にいくばくかのカンパをしながら、サッカーみたいな愉快で阿呆な遊びにも、大きなモノや小さなコトにアクセスするきっかけは無数にあるんだなと感じた。
 
さぁ、W杯はもう目の前に迫っている。
ここまで導いてくれたハリホジッチ氏と、これからを担う西野朗氏が、ロシアの地で選手にどんな力を出させるのか。
サポーターにできることはほんのわずかだけれど、何もしないより、何かしらやる方を、私はとうに選んでしまっているのだ。
 

ネパールナイト1 Act for Nepal 
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ネパールナイト2 ネパールサッカー事情
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1966704226&owner_id=24016198
 

 
ちょんまげ隊長ツンさんの活動「トモにロシアへ」
http://smile4nippon.com/footballpower/tomoroshi





堀之内聖
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山岸範宏
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