mixiユーザー(id:3102427)
2018年05月15日21:32
667 view
読了2冊／知念実希人
「優しい死神の飼い方」
装画：げみ
プロローグ
人間が死ぬとその魂は｢案内人｣(｢死神｣などと呼ばれる事も…)
により行くべき所に導かれる。
ところが､この世に“未練”を残す魂は案内を拒否しそこに居残り､
その地の｢地縛霊｣となってしまう｡ それは案内人の成績に響く。
最近､日本という国にはそんな地縛霊が増え､
ここ担当案内人の｢私｣の成績は降下の一途。
私は、死ぬ前の人間と接触し未練を取り除き地縛霊化を未然に防ぐという命を、
｢我が主様｣より受け､｢ごおるでんれとりばあ｣なる美しい犬の体に封じ込められ…
真冬、雪の中で気付いた。
そして凍え死ぬ前に｢朝比奈 菜穂｣に救われ｢レオ｣と名付けられた。
第1章 死神､初仕事にとりかかる
菜穂はホスピスを目的とする病院の看護師｡
私はすぐこの病院に馴染んだ。
ところで､死を目前に未練のある魂は腐臭を発するが､
このホスピスには4人分の腐臭がある｡
その1人｢南竜夫｣ 戦時中､この病院の建物に住んでいた
財閥の令嬢｢檜山葉子｣と恋に落ち徴兵を前に駆落ちを計るが､
葉子は｢ちょっと待ってて｣と自宅に戻った。 竜夫は追ったが
邸から戻る途上､追い阻む彼女の許嫁助とともに空襲に合い
最後に竜夫に黒い炭の塊を渡して死んだ｡
自分は裏切られたのか？ 彼女を守れなかった！
それが今も竜夫の未練だった。
私は､炭の塊は葉子が2人で生きていくために持ち出したダイヤで、
葉子はそれを取りに戻ったと解き明かし、
竜夫は葉子の愛を信じ未練は消滅した。
第2章 死神､殺人事件を解明する
2人目の地縛霊予備軍は｢孫 潔｣｡ 実は､かつてこの屋敷に強盗に入り
予想外の出来事で逃げた｢金村安司｣が海外で一儲けし、癌を発病、
死ぬなら日本でと戻ってきていた。
不本意ながら両親の死の原因を作り、ここに住んでいた子供のその後が
金村の未練だった。
私はこの邸にある不思議な壁の穴から、
両親を殺したのは金村から情報を得､金村より先に押し入った仲間の仕業だと解明。
金村の未練は消滅した。
第3章死神､芸術を語る
3人目の腐臭は｢内海直樹｣｡ 色が描けなくなった画家。
かつてこの邸の子ども｢亮介｣(8歳)が内海の画をとても気に入り、
父親が何枚も買ってくれたのだが､邸に強盗が入り家族が殺されたと聞き、
邸に走ったが自分の作品は1枚も無く､後日見つけた1枚も酷い状態。
それ以来､他人の言葉が信じられず色が創れず。
私は亮介が陽を浴びれない｢色素性乾皮症｣だったと推理｡
大時計の後ろから地下室に入れることを見つけた。
地下室に、母親が隠すも失血死し骨になった亮介の遺体を発見。
部屋の壁は内海の美しい作品でいっぱいだった。
少年は自分の絵を大切にしていた。 内海の未練は消滅した。
第4章死神､愛を語る
4人目の腐臭は､なんと！菜穂だった｡ 難病｢アミロイドーシス｣
死に行く身ながら密かな片想い､それが未練だったが､私の説得で告白し、
彼｢名城｣(病院の医者)の想いも知って… 菜穂の未練は消滅した。
第5章 死神､街におりる
案内人仲間がこの病院に｢二週間後､何か起きる｣と洩らした。
多数の魂を案内すると言うなら､皆を殺そうという者が居る。
それはこの邸を執拗に欲しがる男？
それは､かつて金村が強盗に押し入った時､先に来ていて逃げた男か？
目的は､元々財閥｢檜山家｣の物で､亮介が見つけたダイヤだ！
第6章 死神､絶体絶命
私と私の真実を知る4人でダイヤを捜す。
地下室で隠し金庫を捜すがすでに空。
その夜、あの男が仲間を連れ襲撃してきた！
第7章 死神のメリークリスマス
4人で協力し襲撃をかわし､
最後には自分の仕掛けた罠に自分で落ちた主犯。
彼の魂はあまりに穢れ､醜く案内不可。 “処理”された。
そしてクリスマス。 プレゼントをくれた菜穂に何かしたい私。
ハッ！と気づいた｡
地下室のツリーに飾られたキラキラ光るガラス玉は？！
経営不振で閉鎖寸前の病院も存続できることになった。
万事うまくいき… ん？これ全て｢我が主様｣の計画か？
エピローグ
みな逝った後、レオはまだここに。
病院ロビーには内海が最期まで画いていた絵が。
満開の桜の樹の下､3人の患者､レオ､白衣姿の菜穂、という絵…
「黒猫の小夜歌」
装画：げみ
プロローグ
案内人仲間が｢犬｣の体を使って地縛霊化を未然に防いだことで
僕も｢猫｣になって地上に降りることに。
出逢った､消滅仕掛けた地縛霊が“自分”の未練が何かわかるまで、
と言い張るので､長い間昏睡中の｢白木麻矢｣の体に入れてやり、
クロと名付けてもらい､麻矢の家に落ち着いた。
第1章 桜の季節の遺言状
他に街に居る地縛霊を知ってるという麻矢(仮)に会わされたのは､
｢南郷純太郎｣トラックに轢かれ死んだ男。
妙な遺書めいた走り書きのため妻を恨んでの自殺、とされ
妻｢菊子｣はそれにずっと苦しまされていた。
それは事実ではない。妻を苦しめていることが南郷の未練。
持っていたバックを遺体から遠く離れた場所に見つけ。
結婚40年のプレゼントと感謝のカードが。
走り書きは感謝の言葉を書く練習をしたものだった。
これで南郷の未練は消滅。
第2章 ドッペルゲンガーの研究室
次に会ったのが地縛霊｢千崎隆太｣｡ 元刑事。
癌で死ぬ直前関わった事件が未練となり､この世に居付く。
刺殺された被害者は｢小泉沙耶香｣。 容疑者は夫｢小泉昭良｣
昭良を泳がせ尾行するも､誰も居ない密室で
沙耶香を刺した短剣で彼は自殺した ように見えた。
しかし千崎はそう仕組まれた、と信じる。
南部は製薬会社の会長でありながら秘密の研究をし続け、
その研究所に小泉昭良･沙耶香夫婦も居た。
南郷も昭良･沙耶香夫婦もその研究のため殺されたのか？！！
第3章 呪いのタトゥー
同じ研究室に居た｢阿久津一也｣という男が浮上する｡
一也はアフリカにボランティアに行き帰国後、
突然､自分に別れを告げ､行方不明になったと､恋人｢桜井知美｣は言う。
大学の教授でこの5人と関わる｢峰岸誠｣も行先を知らない。
沙耶香の死後研究を手伝っていた､妹の｢柏村摩智子｣も姿を消している。
僕は一也がアフリカで入れたタトゥーを｢呪いの｣と言った事と
知美への態度の豹変から、タトゥーによりHIVに罹患し、
南郷の秘密の研究室でHIVの特効薬を開発していたのでは？と推理した。
その日、南郷の研究室が火に包まれた。
第4章 魂のペルソナ
麻矢が体を借りている昏睡中の｢白木麻矢｣は、
阿久津に(意図的に？)撥ねられたらしい事が分かった。
その車が阿久津の遺体と共に池の底から引き揚げられた。
そして、｢柏村摩智子｣は｢白木麻矢｣で、沙耶香の妹であると判明する。
今、彼女の体に入っている魂は阿久津？！
なんとか麻矢の魂を救おうと､レオの協力も得て居なくなった麻矢を追う。
…と、追い詰めたら実は沙耶香の魂。
彼女は罠を仕掛け真犯人に肉薄し、
クロとレオの活躍で危機を脱した。
真犯人は命を落とすも、穢れた魂は案内されることなく“処理”された。
エピローグ
真犯人がわかり､未練を断ち切った魂たちはみな｢我が主様｣の許に旅立った。
功績を認められた僕は｢案内人｣に戻して頂けそうだったがお断りした。
目覚めた白木麻矢の傍らに居ると、
旅立った沙耶香と約束したからだ。
2作とも、天使とも死神とも呼ばれる高位の霊的存在の目で
人間の世界を見つめ、人々の未練を消滅させようと、
過去や今起こる事件を解決に導く。
さすが案内人である。
霊体が犬や猫の体に宿るのだから､様々な支障が生じる。
それでも、
レオは｢しゅうくりいむ｣と｢菜穂｣にゾッコン惚れ込み、
クロは｢おさしみ｣というものに夢中！
愛おしい霊たちである。
1作目、レオに2週間後の脅威をこっそり教えてくれたのがクロだったり、
2作目、クロはレオと会って、レオの居るホスピスで情報を求めたり、
様々に協力を要請したり､(気のいいレオは良く応える！)
両方読んでいる方が楽しい。
我々が｢死｣に臨んだ時､そこに関わる何かが居るという設定は面白く、
色々、物語にされているが、
すぐ傍らに居る犬や猫たちがそういう者であるなら、
そして優しく案内してくれるなら、
安心して付いて逝けそうである。
クロは思う。
｢人間以外の生物の魂は､肉体が命を失うと僕たち『道案内』が導かなくても､
勝手に｢我が主様｣のもとへと向かう。
うろうろと地上を彷徨ったり｢未練｣に縛られ地縛霊になったりするのは
人間の魂ぐらいのものだ｡
きっと人間以外の動物は､一日一日生命を維持し､
そして子孫を残すことだけを考えて必死に生きているから､
魂が迷うことがないのだろう｡ それに対し人間は､
進化して安全な環境を作り出してしまったせいか､そうやって真摯に
毎日を生きることを忘れてしまいがちになってる｡
この地球上で唯一､自分たちにいつかは『死』が訪れることを知っている生物が､
それを知らない生物たちよりも怠惰に生き､
そして死後に未練に縛られる｡なんとも皮肉なことだね｣と。
正に！ いつも私も思っている事！！
人も､地球上の一生物という原点に立ち返って､真摯に生きたいと思う。
1
0
ログインしてコメントを確認・投稿する