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2018年01月07日11:22

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新海作品2本

「君の名は。」の地上波初放送に伴い、新海誠作品4編が2日連続で深夜に放送された。
初日の「秒速5センチメートル」と「星を追う子ども」を録画して見る。
「秒速5センチメートル」はもう何度も見ているが、「星を追う子ども」は初見である。

まず「秒速5センチメートル」だが、「桜花抄」「コスモナウト」「秒速5センチメートル」の3部で構成されている。
全体の上映時間は63分だが、「桜花抄」「コスモナウト」の2部で全体の8割以上が構成され、「秒速5センチメートル」のほとんどは山崎まさよしの「One more time, One more chance」が占めており、おそらく10分前後しかないと思われる。
ストーリーは、貴樹、明里、花苗の3人のモノローグで展開するナラタージュである。
そしてこのそれぞれのモノローグが非常に情緒があり、言葉の一つ一つが心に染み入ってくる。
この作品は新海作品では3番目となる作品であるが、すでに夜空の描写の美しさは完成されていて、かつ電車群を含む街中の描写も、繊細なセリフにマッチする美しさである。
人物の表情についてはアニメっぽくてあまりリアリティがないのだが、逆にそこが生々しさを消してファンタジックな雰囲気を強くしている。
青春時代のほろ苦い恋愛感情をうまく表現しており、年を重ねれば重ねるほど、この映画の本当の味わいが感じられるようになる。

続いて「星を追う子ども」。

山奥で看護婦の母と二人で暮らす中学生の少女明日菜は、亡き父から譲り受けた鉱石を使ったラジオで電波を拾う事を密かな楽しみにしていた。
ある日いつものように山の隠れ家でラジオを使おうとしたとき、鉄橋でクマのような化け物と遭遇する。
襲われそうになった明日菜を助けたのは、シュンと言う少年であった。
明日菜は、シュンが化け物との争いで負った怪我を手当てをするのだが、その時からシュンに対して小さな恋心を抱き始める。
しかしシュンは数日後、川で遺体となって発見される。

明日菜は大きなショックを受けるが、ちょうどその時授業で「アガルタ」と言う言葉を耳にする。
シュンはアガルタから来たと言っていた。
授業をしていたのは、産休の担任の代わりに赴任してきた森崎だった。
明日菜は森崎の部屋を訪ね、アガルタの話を聞いた。
森崎の話によると、人間は死後地下へと向かい、地下には死者の国があると言う伝承が世界各地にあると言う。
森崎はそういう伝承を研究していた。

森崎の部屋からの帰り道、明日菜は再びシュンと出会う。
しかしそれはシュンではなく、シュンの弟のシンだった。
シンはシュンが持ち出したアガルタへのカギとなる石クラヴィスを回収しに来たのだ。
だがそのクラヴィスを狙って、銃を持った兵士と火器を装備したヘリコプターが現れた。
しかもそれらを指揮しているのは森崎だった。
シンと明日菜は洞窟に逃げ込み入り口を石で封鎖するが、石は火器であっという間に破壊されてしまう。
洞窟の奥へと逃げ込み、やがて二人はアガルタの入り口にたどり着いた。
森崎は明日菜を人質に取りシンにアガルタへの入り口を開けさせる。
そして3人はアガルタへと侵入した。
森崎の目的は、死んでしまった妻を復活することだった。
クラヴィスを回収したシンはそのままアガルタの奥へと進み、森崎は明日菜に地上に戻るように言う。
しかしシュンの事が忘れられない明日菜は、森崎と共にアガルタの奥へと進んだ。

ここまでがストーリーの導入部分である。
この後森崎と明日菜は死者を蘇らせる場所を目指すが、その間にさまざまな困難に襲われる。
そしてたどり着いた場所で、死者を蘇らせる秘密と遭遇するのだ。

ストーリーだけ追うと、なかなか上質なファンタジーである。
明日菜が最初に夷族にさらわれたとき、なんでその場で食べられなかったのかなど、整合性が取れない部分もそこそこある。
それでも、日本神話のイザナギ、イザナミの黄泉の国のエピソードを連想させるストーリー展開で、世界観もかなりよくまとまっていると思う。
ただ、細かい演出が完全に宮崎駿である。
新海誠本人も「ジブリっぽく作った」と言っているようだが、ナウシカ色も強いのでジブリと言うよりは宮崎駿と言った方がいいだろう。

アガルタの風景は「もののけ姫」と「ラピュタ」で、アガルタの建物や衣装は「ナウシカ」、アガルタの門番のケツァルトルのデザインに至っては「ナウシカ」「ラピュタ」「もののけ姫」の組み合わせだ。
特に最後に出会うケツァルトルの動きは完全に「ラピュタ」に登場するラムダで、シャクナ・ヴィマーナも「もののけ姫」のシシ神以外の何物でもない。
色使いは新海監督特有の奥行きと透明感があるのだが、なにしろデザインの既視感が激しい。
そもそも宮崎駿監督が、中央アジアから東欧をイメージさせるデザインを作品に取り入れるのが非常に巧い。
だから世界の伝承をモチーフにすると、どうしてもイメージが近しくなってしまうと言う面はあるだろう。
ただ物語のキーとなる人物、アイテムが酷似してしまうと、どうしても既視感が強くなってしまう。
面白い作品だと思いつつも、見ているうちに「うーん…」となってしまった。
おそらく宮崎駿作品を全く見ずしてこの作品を見たら、心から感動したんじゃないかとも思った。


3.秒速5センチメートル(再)
4.星を追う子ども
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