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2017年08月26日09:47

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「夜遊び」の経済学 [読書日記641]

題名:「夜遊び」の経済学 世界が注目する「ナイトタイムエコノミー」
著者:木曽 崇(きそ・たかし)
出版:光文社新書
価格:740円+税(2017年6月 初版1刷)
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マイミクさんが紹介されていた本です。

本書執筆の動機を表紙裏の惹句から引用します。

“ナイトタイムエコノミーは、昼間に行われる一般的な経済活動に対し、陽が落ちた以降、すなわち夜から翌朝までの間に行われる経済活動の総称である。
 これまで「夜の経済活動」というのは必ずしも社会から正当な評価を受けて来なかった。しかし近年、諸産業におけるナイトタイムエコノミー振興の必要性が世界的に重要視され始めており、日本においてもその手法に注目が集まっている。
 盛り場での消費や、夜の街歩き・ショッピング、定着したハロウィン、統合型リゾートの導入……。ナイトタイムエコノミーは具体的にどう日本の経済に影響を与えるのか? 豊富な実例を交えながら「夜」の新たな経済成長戦略を探る”

目次を紹介します。
 はじめに
 第一章 強力に「消費」を促す夜の経済
 第二章 「世界」で成長する夜の産業
 第三章 夜の「観光」を振興する
 第四章 街を活性化する「深夜交通」
 第五章 キッカケをつくる「生産性向上」と「法改正」
 第六章 来るべき「リスク」に向けて
 終 章 「統合型リゾート」と「カジノ」
 あとがき

「夜遊び」と書くと怪しげですが、著者は観光振興や地域活性化のために「夜遊び=ナイトタイムエコノミー」は必須であると説いています。
特に【第一章 強力に「消費」を促す夜の経済】では、ナイトタイムエコノミーが、いかに地域にお金を落とすか実例を交えて紹介しています。

【第三章 夜の「観光」を振興する】では、ナイトタイムエコノミーが今ひとつ成功していない観光地の例として神奈川県、兵庫県の例が挙げられています。

【第三章】の“昼の「歩き食べ」だけでは儲からない”から引用します。
“その顕著な例が関東圏における神奈川県、関西圏における兵庫県の存在である。
 この両都市は文明開化の色彩を強く残した港町を県庁所在地として持ち、観光地としても全国的に有名な地域でありながら、一方で近隣にそれぞれ東京・大阪という強力なナイトタイムエコノミーを持つ都市を抱えるという共通課題を持つ東西を代表する2地域である”(72p)
両都市とも、“ナイトタイムエコノミーの競争力が弱いため、観光客が夜にその地域に留まらない”(73p)と分析しています。

また、ナイトタイムエコノミーが充実している東京の問題点も挙げています。
“我が国では多言語対応、もしくは言語不要で楽しむことのできる夜の観光資源の選択肢が極端に少ない。
 それ故、外国人でも楽しめる夜の観光資源を提供している特定施設に、訪日外国人客が殺到するという逆転した現象が起こっている。
 第五章でご紹介するドン・キホーテの深夜営業などがまさにその好例となるが、その他にも新宿歌舞伎町にある「ロボットレストラン」などはその典型例といえるだろう”(70p)
歌舞伎町の「ロボットレストラン」とは、従業員がロボットの着ぐるみで接客サービスするレストランのことですが、“言語不要”で楽しめることから人気を博しているそうです。

そして意外だったのは、2013年の税制改正が(一部分は)ナイトタイムエコノミーの充実のためだったという説明。
【第五章 キッカケをつくる「生産性向上」と「法改正」】から引用します。
“(2013年の税制改正で実施された)企業交際費の損金算入額の拡大というとなにやら難しい話に聞こえるが、要は「国がより多くの交際費を経費として認め、節税させてあげるから、その分、夜の街でお客様と一緒にお酒でも呑んで地域経済を支えなさい」という制度である”(113p)

【終 章 「統合型リゾート」と「カジノ」】は著者の得意分野ですが、敢えて短くまとめられている点も好印象でした。

著者の説明にすべて納得したわけではないのですが、今の日本においてナイトタイムの開拓がまだ充分ではないということがわかりました。

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木曽 崇(きそ・たかし)
国際カジノ研究所所長。
1976年、広島県生まれ。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)、日本で数少ないカジノの専門研究者。
米国大手カジノ事業者にて内部監査業務を務めた後に帰国し、2004年にエンターテインメントビジネス総合研究所に入社。主任研究員としてカジノ専門調査チームを立ち上げ、国内外の各種カジノ関連プロジェクトに携わる。
2005年より早稲田大学アミューズメント総合研究所カジノ産業研究会研究員として一部出向。国内カジノ市場の予測プログラム「W−Kシミュレータ」を共同開発。
2011年より国際カジノ研究所を開設、所長に就任。2016年12月「今年活躍したブロガー」を選出するBLOGOSアワード受賞。

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