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2017年07月22日20:36

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属国民主主義論[読書日記635]

題名:属国民主主義論
著者:白井聡、内田樹(しらい・さとし、うちだ・たつる)
出版:東洋経済新報社
価格:1600円+税(2016年7月発行)
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内田樹さんと白井聡さんによる対談です。

目次を紹介します。
 はじめに(白井聡)
 第1章 さらに属国化する日本の民主主義
 第2章 帝国化する国民国家と霊性
 第3章 コスパ化する民主主義と消費社会
 第4章 進行する日本社会の幼稚化
 第5章 劣化する日本への処方箋
 おわりに(内田樹)

私は、かなりのタツラーで、この本で内田さんの本(共著含む)は50冊目になります。
そんな内田ファンですから、対談本では相手が誰でも内田さんの発言に眼が行きますが、この本では違いました。
注目した文章(発言)のほとんどが白井さんという、私には予想外の結果になりました。

白井さんの鋭い発言の数々を【第1章 さらに属国化する日本の民主主義】から引用しましょう。

1.自民党にとって米軍は最強の番犬という指摘:
“白井 逆に傀儡政権たる自民党側から見れば、米軍とは、自分たちにとって最強の番犬に他ならない。(略)
    自民党が「保守」「ナショナリスト」を自称しながら、外国の軍隊が駐留し続けている状態――本来のナショナリストにとって屈辱的な状態――を少しも解消しようとしないことの背景は、こうした構造です”(18p)

2.日本の集団的自衛権行使によって、アメリカは最も危険な兵站の仕事を日本の自衛官にさせたいのだという指摘:
“白井 今のところ集団的自衛権の行使可能な範囲は「限定的」ということになっていますが、お得意の詭弁を使って範囲を徐々に広げていけばいいわけです。特に、危険な後方支援、兵站ですね。これをやらせたい。
    陸上自衛隊のレンジャー部隊に在籍していた元自衛官の井筒高雄さんに言わせると、今の戦争で最も危険なのは補給部隊である、と。この部分をアメリカは日本にアウトソーシングしたい。
    アメリカ国家にとって、米兵が死ぬとコストが高いが日本の自衛官が死んでもコストゼロだからということであってそれが新安保法制によって実現されることではないのか、と指摘しています”(74p)

3.安倍晋三の政治手法にはファシズム的な特徴があるという指摘:
“白井 僕は安倍晋三、あるいは橋下徹といった政治家の政治手法には、ある種ファシズム的な特徴があると感じています。
    それは現状に対する否定的な感情を刺激して、自分を後押しさせようとするやり方で、それは僕の基準からすると、「人々の悪感情に依拠する政治」という意味で、ヒトラーの政治手法などとの共通性を持っており、ファシズム的であるという判断になってくるんです”(102p)

さすがに、白井さんを褒めてばかりでは、内田さんに申し訳ないので【第5章 劣化する日本への処方箋】から内田さんの発言を引用します。
成長戦略論の間違い(331p)
“内田 成長戦略と言ってみても、もうオリンピックだのカジノだの武器輸出だの原発再稼働だの、そんな手垢のついたアイディアしか出てこない。あとは官製相場で株価操作するぐらいしか思いつかない。(略)
    「日本はもう成長しません。成長なくても生き延びるために、何か次の手立てを考えましょう」。それが言える人が真のリーダーになれると思います”(336p)

胸のすく快刀乱麻の論旨に酔いつつ、「自分の国は、こんなにも情けない状況だったのか」と暗然とさせられた内容でした。

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内田 樹(うちだ・たつる)
1950年東京生まれ。思想家、武道家、神戸女学院大学名誉教授。
東京大学文学部仏文科卒業、東京都立大学大学院博士課程中退。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。
凱風館館長、多田塾甲南合気道会師範。
著書に『ためらいの倫理学』(角川文庫)、『街場のアメリカ論』(文春文庫)、『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書、第6回小林秀雄賞受賞)、『日本辺境論』(新潮新書、新書大賞2010受賞)、『日本の反知性主義』(編著、晶文社)、『街場の戦争論』(ミシマ社)、『日本戦後史論』(白井聡氏との共著、徳間書店)などがある。第3回伊丹十三賞受賞。

白井 聡(しらい・さとし)
1977年東京生まれ。政治学者、思想史家、京都精華大学人文学部専任講師。
早稲田大学政治経済学部政治経済学科卒業、一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位習得退学。博士(社会学)。
著書に『未完のレーニン』(講談社選書メチエ)、『「物質」の蜂起をめざして――レーニン〈力〉の思想 増補新版』(作品社)、『永続敗戦論』(太田出版、第35回石橋湛山賞、第12回角川財団学芸賞受賞)、『日本劣化論』(共著、ちくま新書)、『「戦後」の墓碑銘』(金曜日)、『戦後政治を終わらせる』(NHK出版新書)などがある。

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