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2017年07月16日21:53

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【一筆多論】 もうひとつの介護離職 佐藤好美

 気管切開や在宅酸素療法、頻繁なたんの吸引など、医療的ケアの必要な子供への訪問診療に同行したことがある。

 子供の訪問診療にやっと巡り合えた家庭では、少女の母親が「先生が家に来てくれるなんて夢のよう」と言った。高齢者への訪問診療は今や珍しくないが、子供への訪問診療は少ない。環境の差に胸をつかれた。

 医療の進歩で、難病を抱えて生まれたり、小さく生まれたりした子供たちの命を救えるようになった。だが、子供がNICU(新生児集中治療室)などを出た後のサービスは薄い。

 東京都世田谷区の国立成育医療研究センターに「もみじの家」がある。他では断られてしまう重度障害の子供を数日預かり、遊びや学びを提供する。楽器の演奏やペインティング、絵本の朗読など。子供は、日々のケアに追われる家族には提供できないような刺激的な時間を過ごし、豊かな表情を見せる。遊びや学びが子供を育てるのは、障害があっても変わらない。

 重い病気の子供と家族を、社会で支えていこうとの理念に共鳴し、NHKのアナウンサーだった内多勝康さんは、同所のハウスマネジャーに転身した。その内多さんが、「母親たちには“職場復帰問題”がある」という。もみじの家のような、宿泊を伴う預かりの場所だけでなく、子供を日々預かる場所も増えていかないと、母親の生活は介護に縛られてしまう。

 ちょうどこの日、一人の母親が、1歳の男児をもみじの家に預けた。男児はいったん受け入れの決まった保育園で入園を断られた。「障害が重すぎる」というのが理由だ。デザインの仕事に携わる母親は、職場復帰のめどが立たない。「週に2、3日預かってもらえれば、在宅ワークができるのに…」ともらす。

 重度の子供を受け入れる場所が少ないから、利用希望が集中する。利用に制限がかかり、週1日の預かりでは仕事に戻れないから、母親は復帰をあきらめる。

 高齢者介護では「介護離職ゼロ」がうたわれる。子供の介護には「介護離職ゼロ」はうたわれないのだろうか? 母親の優先順位は、いつだって子供が第一だ。だが、生活が介護一色で、親子が“ずっと一緒”がいいとは思えない。

 福井市にある「オレンジキッズケアラボ」は、在宅医療のサービスをバックボーンに、重度障害などの子供を日中預かる。

 目標は子供の成長。運営する医師の紅谷浩之さんは「何か一つでも、子供に新しい体験をさせて帰したい」と言う。子供は驚いたり笑ったり、新たな表情を見せる。母親はわが子の変化に驚き、感動し、親としての悔しさもにじませる。

 子供のケアに慣れた看護師が一緒に保育園に通い、保育園が受け入れできるよう支援もする。

 介護が必要でも、人生に助けが必要でも、子供は人と触れあうなかで刺激を受けて成長していく。子供が心配で離れがたい母親も成長に気付くと、少し頑張って子供と距離を取ろうとする。そして自分の夢も思いだす。オレンジキッズケアラボでは、職場復帰する母親が70%以上だという。(論説委員)


■人口減・超高齢社会乗り越えるモデル「世界に発信」 黒岩祐治神奈川県知事
(THE PAGE - 07月14日 10:32)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=177&from=diary&id=4667771

 昨年公表の国勢調査で日本の総人口が減少に転じ、自治体をどのように舵取りしていくか実施した首長インタビューで神奈川県の黒岩祐治知事は、高齢化の進行が全国1、2の速さで進行していることに関し、健康寿命延伸と新たな産業創出を目的に実施している独自政策と今後の可能性などについて語った。

 国の医療政策が「為政者側の論理」であるのに対し、神奈川県の取り組みは「自分主体の論理に変えていこうという大きな変革」と強調し、課題先進県として世界に発信できる超高齢社会に対応したモデルをつくることに意欲を示した。

大都市部以外では人口減少が進行、国家戦略特区を生かし「地域限定保育士」実現
 全国では多くの自治体が人口減少局面に突入しているが、神奈川県全体では人口増が続いている。この状況について黒岩知事は、大都市部の横浜市、川崎市以外、特に三浦半島などの地域では減少が著しいとし、「幾ときかすれば頭打ちになり、人口減少に転じていく」、「神奈川全体だけじゃなく、地域地域で磁石のように引きつけるマグネット力を持つことが大事」と述べた。

 神奈川県ならではの課題としては、結婚・出産・子育て期の女性が一時的に仕事を離れるためにできる、女性の就労状況を示したM字カーブの落ち込み部分が、全国で最も深いことに触れ、子育てしながら働きやすい環境づくり、「待機児童ゼロ」を目指していると説明。黒岩知事が提案した国家戦略特区による「地域限定保育士」実現が、国の保育士試験回数増加につながったとして、「岩盤規制を突破するドリルの役目、国家戦略特区の使命を果たしたと思っている」とその意義を語った。

超高齢社会への取り組み通じ、「為政者の論理から自分主体の論理」に変革
 また、高度経済成長期に労働生産人口が、東京圏である神奈川県に大量流入したことにより、高齢化が「全国トップクラス」のスピードで進行していることについて「大変な危機感をもって対応を始めている」と話した。その上で「一番大事なことは病気にならなくすること」と強調。健康と病気の間のグラデーション状態にあたる「未病」を改善する考えに基づいた独自の取り組みと、最先端医療やロボットなど最新技術を結びつけた「ヘルスケア・ニューフロンティア事業」展開による可能性を説いた。

 特に、未病改善については「社会システムそのものの変革につながってくる」と指摘。2050年には全国で100歳以上の高齢者が70万人に達するという推計を踏まえ、「100歳まで生きるということを前提とした社会の仕組みづくり」が必要で、人生100歳時代に向けた支援策に具体的に取り組んでいるとした。

 こうした未病をはじめとする独自の健康医療戦略に「大きな意味を感じている」と明かし、従来の医療制度は「為政者の論理」だったが、神奈川県の実践は「自分主体の論理に変えていこうという大きな変革」と言及。「圧倒的な超高齢社会を乗り越えるためには依存していたらだめ」、「意識改革に当たることが今進みつつある」と語った。

 さらに世界で最も早く高齢化が進行した日本の中でも特に課題先進県だからこそ、神奈川県の取り組みは国際的に注目されていると述べ、「世界に発信する」ことができるような超高齢社会の課題を乗り越える独自「モデル」構築に力を入れる考えを示した。

(2017年6月取材)

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【黒岩祐治(くろいわゆうじ)】
1954年9月26日兵庫県神戸市出身。1980年早稲田大学政経学部卒業、(株)フジテレビジョン入社。報道キャスターなどを経て、2009年国際医療福祉大学大学院教授に着任。2011年4月神奈川県知事に就任。2013年内閣官房健康・医療戦略参与、2014年内閣官房ロボット革命実現会議委員に就任。2015年から神奈川県知事2期目。

主な著書として「百歳時代 ― “未病”のすすめ ― 」(IDP新書、2016年)、「地産地消のエネルギー革命」(PHP新書2011年)、「救急医療にメス― 走れ!家族のための救急車」(情報センター出版局、1990年)など。

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