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2017年05月14日04:07
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『おもてなし』by 玉造小劇店配給芝居Vol.21
5/12(金) ＠全労済ホール スペース・ゼロ
19：00〜21：00
作･演出の､わかぎゑふさんは､
＜お シリーズ＞と銘打った、
｢お正月｣｢お代わり｣｢お祝い｣｢お見合い｣
そして本作｢おもてなし｣の5作で､
大阪を舞台に、
人の心の機微をじっくり描いて、
じわ〜っと観る者の心に浸透させる作品を魅せてくれる。
大好きな脚本家さんの１人である。
本作は2014年秋初演での再演。
大阪､日本橋黒門町の小粋な一軒家の六畳の表座敷。
ここに定点を置いて､“時”のみが変化していく。
ゑふさん得意の芝居である。
主人公は､この家の主
芳崎 兼(みや なおこ)という40代半ばの女性。
大正13年､東京の大学を卒業したばかりの一人息子｢清｣(江戸川萬時)が
帰ってきたところから物語は始まる。
兼は船場の豪商｢岩井商店｣の岩井庄之助の妻が早逝し､
残された病弱な一人息子のため女衆から乳母となり､
その後庄之助の妾となって清を生んだ。
今､その岩井も死んで通ってくることもない。
が､男勝りのそろばん力と、商いのアイデアに富んでいて、
｢おもてなし｣に金払いを厭えない､しきたりに縛られた船場の旦那衆は
知恵を絞った｢始末｣の極意を求め、
兼に相談にやってきて､彼女の始末の身綺麗さに感心し､
それから彼女の贔屓になっていく。
（狂言師の茂山逸平くんが､兼に色々世話になっている
家元をしくじって東京に行こうかと言う狂言師として
登場したのにはビックリ！＆おかしかった！)
一方､眼病に罹り失明の危機を迎える､
岩井商店の若旦那｢きーぼん｣(うえだひろし)も､
乳母だった兼と異母弟の清を心底頼りにしている。
大阪が日本一の人口を誇り、
東洋のマンチェスターと言われた黄金時代、
その中心にあった船場の商人達の､
独自のしきたりの中に繰り広げられる日々。
オール大阪弁(それも古い船場言葉)で供される舞台は､
全てがピタッとはまって､妙に心地よかった。
様々な相談の合間によく兼は言う。
｢ケチと始末は違いまっせ｡｣
｢ほんまの事は､言うたらあきまへん｡｣
この辺はしごく納得！
だが、
｢おもてなしって相手に気が付かれたらあかんねん！｣
｢誰も気ぃつかんと、誰も何の損せんと、
せやけど仕合わせになれるってのがおもてなし｡｣
｢相手がありがとうって気持ちになったら、
おもてなしじゃないねん！｣
これはすごい！
2020年に開かれることになった東京オリンピック。
そのプレゼンに飛び出した｢おもてなし｣という言葉。
それが今､一人歩きをしている。
｢すごくサービスがちゃんとした国なので、どうぞ来てください！」
そう､胸を張って言う。
でもそれは違うと､ゑふさんは兼に言わせた。
かつてＧＨＱが戦勝国として日本を占領しようとした時に、
自分たちは恨まれているだろうと思って来たにも関わらず、
当たり前のようにおしぼりが出てきたりお水が出てきたりして、
しかも、「ありがとう」 を求めない。
「どういたしまして」 と言わさない。
なんていう国だ！すごい国だ！といって日本に惚れ込んだ人が
たくさんいた国やのに。
もう今は、外国人が
「日本人はサービスがいいねぇ、サンクス！」みたいなことになってて。
そんなんおもてなしちゃう！！
これが､ゑふさんがもっとも言いたい事らしい。
ちょっと､心に突き刺さった｡
当時の女たちの、身分で違う着物の数々を細かく再現した舞台。
その着物を､本当に自然に着こなす役者さん達。
(男性の着物も素敵！
どケチの｢しぶ万｣がつんつるてんの着物を着ているのもイイ！)
ラストシーン、
虫干しという設定で､舞台に広げられた着物たち！
これはこの芝居の｢幕｣？ ｢緞帳｣？
自身の作品について､
もう一度、人を＜持て成す＞という意味を思う時間にして頂きたいと、
語ったゑふさん、
そして､ふとつぶやいた､
｢そういう意味では、芝居って､基本は＜おもてなし＞やん？」
という言葉に､脚本家としての彼女の姿勢を魅せられた｡
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