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2017年02月12日22:33

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この世界の片隅に

私はアニメ映画には全然興味はないのだが、去年の「君の名は。」に続いて、先週SNSでじわじわ話題になっているアニメ映画「この世界の片隅に」を観に行ってきた。
水曜レディスデーに、上映しているミニシアターに行ったら満席。さすがに立ち見はいやなのでもう一カ所のシアターを予約(上映は3時間後)。ここもほぼ満席だったが、なんとか観ることができた。

「君の名は。」を観たときも何の先入観もなくネタバレ等は見ないで行ったが、おかげで自分なりの感動や感想を持つことができた。とくにRADWIMPSによるサウンドトラックがその世界観と映画のテーマがどハマリで、とてもよかった。そして今回の「この世界の片隅で」も同じくなんの下調べもなく行ったのがよかったと思う。

人はみな偶然出逢うのだが、それを運命ととらえることもできる。出逢ううべくして出逢った。ずっと昔から出逢うことが決まっていた。・・など。期せずして偶然会った人と恋におち、結婚し幸福になることもあれば、出逢ってしまったばかりに不幸になることもある。このような物語は時代や世代を問わず誰にでもあることで、ある種普遍的なテーマといえる。
魂の友人のことをスピリチュアルな世界では「ソウルメイト」というが、人にはみな複数のソウルメイトがいるといわれている。ソウルメイトは過去・現在・未来世でなんども出会いお互いの人生に深くかかわる。関係は親子だったり兄弟だったり血縁がある場合もあれば恋人や親友など他人なのに心が通じあう存在だったりする。
広い宇宙においてこの地球に生まれるものもあれば、他の星に生まれる命もあり、そんな壮大なスケールの営みの中で、何憶何光年もの間、無数の魂の物語や歴史が繰り返されてきたのだ。

「この世界の片隅に」:
こうの史代(漫画)原作。片渕須直監督。

この作品の世界における「戦争」は、日常の一部であり、文字通り絵の背景にほかならないのです。それらはあくまで日常のリアルとして描かれるもので、そこにイデオロギーや価値観は絡んできません。
この映画の特徴は「地続き」であること。自分に無関係な遠い昔の物語ではなく、あの時代は今の時代と確かに「つながっている」のだという感覚は、非常に重要です。この作品がむやみにイデオロギーや価値観を交えず、ただ淡々と当時のリアルを描くことに徹したのもこのためです。
  *映画「この世界の片隅に』感想〜「誰かが誰かの居場所になること」より引用。
           http://www.shino-hobby.com/posts/1607323





主人公すずは「いつもうちはぼーっとしとるけえ」と言っている、おっとりした普通の女の子。運命を自分で切り開くような野心も夢もなく、ただ運命を受け入れるだけ。彼女の生き方を現代にもってきてみればなんてつまらない人生。しかし別の見方をすれば「人生の意味はなにか?」など自分に問いかけなければならない余計なストレスをためることもなく、素直に明るく淡々と生きている。その淡々さが、のん(能年玲奈)の声にぴったりハマッている。

自分の境遇になんの不平不満もいわず、誰も傷つけず、ただ自分の目の前にある道を歩いていく。ひたむきな生き方に多くの人が共感し感動を与えられているのだ。そんな彼女でも自分の運命を呪い、やり場のない憤りではげしく爆発させるシーンがある。が、それでもやはり一夜明ければまた前に向かって歩き出す。
そこにコトリンゴが歌う「悲しくてやりきれない」という挿入歌が流れると、なんともいえず心が震え、あぁ悲しいなぁ。切ないなぁ。でも人間って強いなぁ・・・って思ってしまう。



胸にしみる空の輝き 今日も遠く眺め涙を流す 
悲しくて悲しくて とてもやりきれない 
このやるせないもやもやを 誰かに告げようか

白い雲は流れ流れて 今日も夢はもつれわびしく揺れる 
悲しくて悲しくてとてもやりきれない
この限りない虚しさの救いはないものか

                    (作詞:サトウハチロー 作曲:加藤和彦)




欧米の劇場型ヒロイン演じる波瀾万丈の人生とは違い、来る日も来る日も大した変化もない日常。ほんとに淡々と話は進んでいくのだが、決してすずの生きた人生は平たんな道ではない。普通の少女にはあまりに苛烈な運命が彼女にふりかかる。そしてそれはこの時代(戦時下)なら誰にでも起こることなんだと思い知らされる。だからこそ普通の人々である私たちはすずの人生に自らを重ねてしまう。特別なことではない戦時中の市民のつましい暮らしの中に人間としての深い悲しみと希望を同時にみることができ心が温かくなる映画だ。

「ぼーっとしたまま死にたかった」
「なんも知らんうちに死にたかった」
「あの向こうこそ、うちの居場所だったんじゃろうか」 (すずの言葉)

「過ぎた事、選ばんかった道、みな、覚めた夢とかわりやせんな。
すずさん、あんたを選んだんは、わしにとって多分最良の選択じゃ。」
「たとえいろいろなものが変わっていくとしても、自分は必ずすずさんを見つけられる」
  (すずの夫、周作のことば)

「この世界の片隅に、うちを見つけてくれてありがとう。」(すずの言葉)


「人が死んだら記憶も消えて無うなる。秘密は無かったことになる。それはそれでゼイタクなことかも知れんよ。」 (遊郭の少女、白木りんの言葉)

「知らんでええことかどうかは、知ってしまうまで判らんのかね。」(すずの言葉)






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