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2016年12月20日08:34

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『 柘榴坂の仇討ち 』


場で見逃していた『 柘榴坂の仇討ち 』(原作:浅田次郎)をオンデマンド配信で観た。真面目に作ったであろう素朴な映画ではあったが、大老・井伊直弼襲撃シーンは映画『 桜田門外ノ変 』には遠く及ばず、仇討ちにかける主人公の描写はドラマ『 遺恨あり 最後の仇討ち 』の足元にも及ばず、かなり物足りなさを感じた。浅田次郎原作は未読だが、どうも、これは『 桜田門外ノ変 』と『 遺恨あり 最後の仇討ち 』が共に吉村昭の小説を原作としていることに負うところが大きかったのではないかと愚考する。原作に描かれた事件や人物描写のディティールの精緻さが自ずと映像化の際に脚本に反映され、それが映画のクオリティを決定したと思われてならない。

 『 柘榴坂の仇討ち 』の主人公・志村金吾(中井貴一)は彦根藩きっての剣の達人で、軽輩ながら、その腕を見込まれて井伊直弼(中村吉右衛門)の近習に抜擢された。常に直弼の側に控え、行列を組んで外出する際は、直弼が乗る籠の側で警護し、命に代えても主人を護るのが務めである。しかし、雪の日に桜田門外で水戸脱藩の浪士18名に襲撃された時、金吾は神君・家康公から拝領した槍を強奪した不逞浪士を追ってしまい、槍を奪還して戻ると、すでに主人は賊に討たれたあとであった。国元では息子・金吾の罪を負って両親が自決したこともあり、金吾は切腹を許されず、家老より「 逃亡した襲撃犯5人のうち、ひとりでも構わぬから首をとって帰れ。それを殿の墓前に供えるのだ 」と厳命される。こうして金吾は襲撃犯の行方を追うことになるのだったが・・・。

 この映画が残念なのは、主人を護り切れなかった手練れの近習・志村金吾が「 強そうに見えない 」こと、13年に及ぶ襲撃犯追跡のドラマがほとんど描かれないことに尽きる。原作は知らないが、少なくとも、映像では「 苦節13年の重み 」を描いてはいない。ここを描かないから、クライマックスで最後の襲撃犯である佐橋十兵衛(阿部寛)との出会いが盛り上がらないのだ。仇を追う主人公の強烈な執念を見事に描き切った、前述のドラマ『 遺恨あり 最後の仇討ち 』とはまるで違う。

 追われる運命にあった十兵衛のその後を時折挿入する構成も、さほど成功しているとは思えない。井伊直弼を討ったあとの十兵衛が逃亡中に人力車の車夫に身を落とし、改名する経緯などが全て台詞で語られるのも映像的ではない。浅田次郎原作らしい「良い話 」だけに残念だ。

◆過去の日記

遺恨あり
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最後の仇討ち
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桜田門外ノ変
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