題名：プラネタリウム男
著者：大平 貴之（おおひら・たかゆき）
出版：講談社現代新書
価格：800円＋税（2016年6月第一刷発行）
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いきなり、個人的な話ですが、小学生の頃はプラネタリウムが好きで、渋谷の五島プラネタリウムに足繁く通っていました。そんな訳で、本書を店頭で見つけた時、すぐに買いました。
著者の大平さんは、プラネタリウム好きな人には有名な人で、小学生の頃からプラネタリウムを自作し、大人になってからも投影星数560万個のプラネタリウム（メガスター）を制作し、ギネス記録に認定された方です。
目次を紹介します。
プロローグ
第１章 メガスター誕生まで
第２章 ソニーでメガスターを商品化？
第３章 独立――そしてブーム
第４章 新機軸を求めて――デジタルへの挑戦
第５章 業界への挑戦
第６章 世界へ
第７章 ゆかりの地に最新最高の投影機を
第８章 未来への挑戦
エピローグ
印象に残った文章を２つ引用します。
１．
著者が勤めていたソニーを退社して、独立した直後、家庭用プラネタリウム「ホームスター」を販売した時の話。
“第３章 独立――そしてブーム
製品発表前、（セガトイズの）加藤氏と、（ホームスターが）どのくらい売れるか予想してみたことがある。僕は、1000台ぐらい売れればいいのかな、と話した。（略）
しかし、加藤氏は、少なくとも１万台は売りたいと言っていた。
１万台売れれば、玩具の世界ではそこそこヒットと言えます。きれいな星空を求める人はきっとたくさんいます。そこを目指しましょう。きっと売れますよ、と加藤氏は笑顔で言った”（99p）
“あれから10年、現在でもホームスターはモデルチェンジを繰り返しながら販売され続けている。
栄枯盛衰が激しく１カテゴリーの商品の寿命は数年といわれる玩具業界で異例のことだ。2015年12月末時点で、ホームスターの累計出荷台数は全世界で100万台を突破した。当初予想の1000倍だ。これは何を意味するのだろうか？”（101p）
“きれいな星空を求める人”が、世界で100万人もいるのは素晴らしいことだと思います。
２．
日本のプラネタリウム施設について述べた文章。
“第５章 業界への挑戦
日本のプラネタリウム施設は全国で350とも400とも言われているが、そのほとんどは公営施設に教育目的で設置されたものだ。特に1980〜90年代前半のバブル期に増えた税収とともに急増したと言われている。
しかしその後の景気低迷で運用予算も低迷。そしてそれらバブル期に導入された多くの投影機器が老朽化しているが、使われている電子部品は軒並み生産終了品で入手できず、故障すれば修理もままならない。
もし大改修をしようとすれば数千万円もの費用がかかる。かといって新機種を導入しようとすると億単位で、予算縮小の中、まるで手が出ない”（156p）
この話は2003年頃の状況ですが、“バブル期に導入された施設が老朽化”というエピソードは、プラネタリウム施設に限らず、日本のあちこちで起きているようです。
エピローグで著者は次のように述べています。
“思えば、世界中のどこから見ても星空だけは共通だ。だから星空には人と人を繋げるための無二の力があるのかもしれない”（264p）
プラネタリウム施設として、最新のメガスター（メガスター�掘櫂侫紂璽献腑鵝砲論邵蟷圓痢屬�わさき宙と緑の科学館」にあります。
先日、観に行って、星空の美しさ、リアルさに感動しました。
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大平 貴之（おおひら・たかゆき）
プラネタリウム・クリエーター。
小学生の頃からプラネタリウムの自作に取り組み、大学時代に、アマチュアでは例がないレンズ投影式のプラネタリウム「アストロライナー」の開発に成功する。
ソニー就職後も制作を続け、独立後の2004年には日本科学未来館と共同開発した、投影星数560万個の「メガスター�供櫂灰好皀后廚�ギネスワールドレコーズに認定されるなど、世界を代表するプラネタリウム開発者として活躍中。
イベントプロデュースやアートとの融合など、ジャンルを超えた新たな挑戦を続けている。信条は「人間に可能は証明できるが不可能は証明できない」。
著書に『プラネタリウムを作りました』（エクスナレッジ）がある。
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