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p.418
一九七〇年代は「ボランティア」を取り巻く環境の大きな転換点となった。まず、社会保障費の増大と政府によるボランティア政策の本格的な開始の中で、動員論の基準だった民主化要件�´△�相対化されていく。それと共に、一九六〇年代にも見られた疎外論的問題設定が前景化し、ボランティア活動は担い手にとっての「人間性回復」「自己実現」「自己成長」につながるという――本書で「自己効用論」と名づけた――意味論形式が、広く共有されるようになった。この意味論の広がりは、ボランティアの推進が、高齢者と主婦の生きがい対策という観点から行われたことも関係している。この意味論の中では、〈贈与のパラドックス〉は主にミクロな行為論／相互行為論的水準で捉えられ、その平面上で、双方の疎外状態の脱却を通したウィン・ウィンゲーム（＝〈交換〉）の成立によって、解決がめざされる。その意味で、この時期の自己効用論は、未だ社会批判という意味をもち、政治の意味論と踵を接していた。
続く一九八〇年代は、社会保障の抑制期であり、政府が、無償および市場より安く提供される労働を、福祉サービス供給における一つの柱として位置づけようとしていた。「ボランティア」は〈交換〉の意味論平面の中により深く包摂され、自己効用的ボランティア論から「疎外」という政治的な含意が消え去り、その代わりに、衒いなき「〈楽しさ〉のためのボランティア」論が広がっていく。なお現在、「多様な価値観を持ち自分の興味関心といった私的選好による」（高木 2009:67）ボランティアを「エピソディック・ボランティア」として、「新しいタイプのボランティア」とする議論もあるが(1)(Hustinx & Macduff 2005;高木 2009)、その意味論形式は特に新しいものではなく、日本では一九七〇年代から政策的にも進められ、一九八〇年代には一般化していたものである。また、有償ボランティア、住民参加型福祉サービス、時間預託型サービス、進学評価の指標化など、〈交換〉をより実体化させた境界事例が様々に生み出され、ボランティアの同定問題が先鋭化する。
以上の「前史」を経た上で、一九九〇年代に「ボランティア」は政策・言説・制度のレベルで、未曾有の隆盛期を迎えた。しかし本書では、そこに既存の意味論的前提の剥落が見られるのではないかという仮説を立て、これを「ボランティアの〈終焉〉」と呼んだ。それは、次の二つの意味においてである。第一に、「ボランティア」を特徴づけるとされる概念が、〈交換〉の意味を中核にもつ「互酬性」となることで、カテゴリーの運用可能性は飛躍的に高まるが、それと同時に、カテゴリーとしての同一性と実定性が掘り崩され、空虚な記号となっていく。第二に、〈交換〉をめざしつつ〈贈与〉の意味を抹消しきれない「ボランティア」は、より上首尾に〈交換〉の意味を織り込んだ言表に代替されていく。その言表こそが「ＮＰＯ」である。これによって、有償／無償の区別は徹底的に無化され、「ボランティア」の言表は冗長なものになっていく。ＮＰＯは、機能上は国家に対する市民社会の自律化をめざすもので、民主化要件�，虜洞修箸いΠ嫐�をもっていた。一方で、参加領域において、経営的合理性と協働の意味論が主導的な言説となり、敵対性を伴う〈政治〉は――〈贈与〉と共に――外部に放逐されるようになる。ここで重要なのは、それが民主化要件�△遼叉僂涼罎嚢圓錣譴燭海箸任△襦�市民社会の活性化と社会保障の削減とが順接するというネオリベラリズムとの共振が観察されるのは、この瞬間である。
以上の〈終焉〉を経た後でも、「ボランティア」という言葉が消えることはなく、これからも参加の一カテゴリーとして役割を果たしていくと思われる。だが、もはや市民社会領域の中心的なカテゴリーとなることはないだろう。その言説空間では今やＮＰＯだけでなく、〈交換〉と〈贈与〉の間で新たに次々と生み出される用語群――ＣＳＲ、社会的企業、プロボノ、ＢＯＰなど――が競合している。〈贈与のパラドックス〉に憑依されやすい「ボランティア」の言表は、アンペイドな労働力の需給と〈教育〉の意味論とが接触する限定的な領域において、ささやかに生を送っていくものと考えられる。
（３）反復される自己肯定
以上が、「ボランティア的なもの」の言表と意味論の変動に関する大まかな構図である。それは、〈贈与のパラドックス〉との緊張関係の中で、自己を肯定する言説が形を変えながら多産される歴史でもあった。その基本形は、否定すべき諸特性を全て「昔の活動」に振り分けることで、「今の活動」を肯定するというものであり、現在流通している「これまでの自己犠牲的な『奉仕』、『献身』、『慈善』から、気楽に自然体で行う『自己発見』、『自己実現』、さらには『生きがい』そのものへと、まさにそのイメージも認識も変わりつつある」（岩波書店編集部編 2001:vi）という言明も、その一つである。意味論形式の変化において興味深いのは、否定的な特徴とされるものはほとんど変わらないものの、肯定的な特徴とされるものは、時代や立場によって可変だということである。例えば、上の例の「自己実現」「生きがい」は、一九五〇年代には、決して「よい贈与」の特性とはなりえなかっただろう。むしろそれらは、活動を担い手の心の問題へと矮小化するもので、自己満足のために社会矛盾を糊塗することを通じて結果的に相手を搾取する「悪い贈与」の一種とされていたはずである。一方で、同時期の「よい贈与」とは、例えば「『社会的弱者の社会権の拡充による政治的かつ根本的な解決』に寄与すること」であった。
変わらない否定的な特徴の一つが、例えば相手にとって真にプラスなことは何かを考えずに一方的に贈与するというものである。つまり、対象者との関係が「非対称的」ということである。だが、何が「非対称的」かという解釈は複数化し、その解釈と相関的に「よい贈与」の諸特性はx1、x2、x3……と様々な値をとることになる。
〈よい贈与／悪い贈与〉＝〈x1／非対称的……〉
ボランティア言説における自己肯定の形式では、〈贈与のパラドックス〉を発生させる「絶対悪」的な「定数」と比較して、自らを、それを克服したものとして提示する。しかし、その「絶対悪」を超える方法は、他にいかようにもある。よって、「あるボランティアの意味論(x1)」を本当の意味で肯定するためには、「定数」とではなく、「変数」の他の値x2、x3……と、その射程と問題点を比較考量する必要があると考える。
では、本書の分析を踏まえたうえで、望ましいxとは何だと言えるのだろうか。この規範的な問いに直接答えることは本書の射程を超えている。だが、本書の含意を明確にするためにも、本書のはじめに提示した二つの問題設定と連動させる形で、二点ほど考察を行いたい。以下で考える問いは、第一に、動員（特にネオリベラリズム的動員）という問題系においてボランティアはいかなるあり方が望ましいのか、第二に、ボランティアや〈贈与〉をメタ的に観察／批判するという営み自体はいかなる意味をもち、その位相における〈贈与〉の機能とは何か、というものである。
■子どもを保育園に預けることに後ろめたさを感じていませんか？
(JIJICO - 08月25日 15:01)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=180&from=diary&id=4160059
子どもを保育園に預けることに後ろめたさを感じていませんか？
2016年08月25日 15:01 JIJICO
育児休暇開け、職場へ復職する時に感じること
現在フジテレビ系連続ドラマ「営業部長 吉良奈津子」が毎週木曜日に放映されていますが、ご覧になっていますでしょうか。
松嶋菜々子さんが演じるいわゆる「バリキャリ」と言われてきた主人公の女性が、3年間の育児休暇明けに職場に復職すると、様々な壁に直面します。
ドラマのなかですので、極端に描かれているところもありますが、働く母にとって職場での境遇や家庭内での夫とのやりとりなど、少なからず共感する部分もあるでしょう。
私はキャリアコンサルティングをするなかで、育児休暇開けに職場に復職することに対し不安を抱えていらっしゃる方からのご相談を受けることがよくあります。
そのなかには、先のドラマのシーンにもあったのですが、義理のお母様もしくは実の母親、職場の男性といったごく身近な方から、幼い子どもを保育園に預けることに対しての何気ない言葉で心を痛めている方がいます。
また、そもそも保育園に預けること自体にも後ろめたさを感じたりしてしまう方もまだまだ多くいらっしゃるようです。
子どもを保育園に預ける良い面とは
そのような方にコンサルティングでお話しすることがいくつかあります。
まず、義理のお母様や実の母親が20代〜30代であった高度経済成長期とは、時代背景が全く変わってきていること。
このことをあらためて認識しなければならないと感じます。
共働き家庭がそうでない家庭の2倍にもなっている現代。
首都圏における保育園の待機児童問題は深刻です。
それほどに保育園や保育施設の需要は高まっています。
また、核家族化により、そもそも祖父母との同居は少なくなってきているのは周知の事実で、それだけでも子どもは異年齢層とのふれあいやコミュニケーションの機会が減っています。
そのような実情を踏まえ、保育園に子どもを預けることの良い面に焦点をあてます。
【良い面】
◆幼いときから複数の保育士さんから言葉のシャワーを浴びることができる
◆家ではできないような遊びを沢山体験できる
◆生活習慣や生活リズムを整えることができる
◆色々な感染症をもらってくるが、免疫力がアップし身体の強い子になる
◆一人っ子でも、赤ちゃんと間近で接することができ面倒見の良い子になる
◆早いうちからお友達との対人関係で学び、社交的になる
◆働きながら協力し合う両親を見て、思いやりを持った子に成長する
このように、見方によっては子どもを保育園に預けることによって様々な良い面がもたらされます。
その上、働く女性は普段の生活のなかで日中は家にいませんから、特に都心では近所に知り合いがいないことが多いです。
ましてや初めての育児で、両親が遠方に住んでいるともなれば、保育のプロである保育士さんと毎日話せることは安心感にも繋がります。また、基本的には保育園で知り合う親は働いていますので、同じような境遇に、子育ての相談や協力をしあうこともできるようになります。
子どもとの触れ合いを時間の長さではなく「質」に価値観をおく
良い面ばかりを書いてきましたが、もちろん良くないと感じられる点もいくつかあるかもしれません。
しかし、そのことに対し、後ろめたさを感じる必要はありません。子どもは親の気持ちにすごく敏感です。
親がそのように感じることは、子どもに伝わってしまいますので注意が必要です。
子どもと触れ合う時間を長さではなく「質」に価値観をおき、限られた時間をいかに充実して過ごすことができるかが、親として大切な育児のポイントだと考えることもできます。
少し理想論も入っているかもしれませんが、少なくとも私のまわりで保育園に預けて働く女性は、このような保育園の良い面をみている方が多いです。
このなかの１つでも親が感じながら働くことができたら、また、そのような環境に恵まれたなら、仕事と育児がもっと充実してくると思います。
家計のためだけではなく、自分らしく働きたい。時代の変化、ITの進化によって女性にとっても、多様な働き方ができるようになってきています。
◆ 今の会社で仕事をずっと続け昇格したい
◆ 得意な専門知識を週3日だけ活かしたい
◆ 趣味やボランティアで始めたことで起業したい
など。
これらの軸がしっかり自分のなかにあったら、周囲の方から心ない言葉を言われたり、迷いが生じた時にも、揺るがずにいられることができます。
保育園に預けて働く母の姿を、子どもはきっと見ていて何かを感じています。
働く母が、毎日笑顔でいきいきと働くこと。旦那さんと協力しながら毎日を過ごすことが、子どもの将来の進路や人柄に少なからず影響を与えます。
だからこそ、「いつかは社会に飛び出す子ども達に、明るい未来が描けるように、働くお母さんは今頑張っているのですよ」とお伝えしています。
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