題名：明日、機械がヒトになる ルポ最新科学
著者：海猫沢 めろん
出版：講談社現代新書
価格：840円＋税（2016年5月第一刷発行）
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マイミクさんお薦めのルポルタージュです。
副題のとおり、最新の科学では、機械（コンピューター）と人間の関係がどんな風になっているのか、７人の研究者・技術者との対談で明らかにしていきます。
目次を紹介します。
第１章 ＳＲ――虚構を現実にする技術――
第２章 ３Ｄプリンタ――それは四次元ポケット――
第３章 アンドロイド――機械はすべて人型になる――
第４章 ＡＩ（人工知能）――機械は知性を持つか――
第５章 ヒューマンビッグデータ――人間を法則化する――
第６章 ＢＭＩ――機械で人を治療する――
第７章 幸福学――幸せの定理を探る――
本の構成として面白かったのは、対談の部分に著者の独白が割り込んでくること。
対談相手と著者の会話の間に、かなり長い文章で著者の見解や体験が書きこまれています。
対談の妙を期待して読み始めると残念かもしれませんが、ルポルタージュの書き方として新鮮でした。
さて、内容から印象に残った部分を引用します。
１．
「第３章 アンドロイド――機械はすべて人型になる――」から、大阪大学大学院 基礎工学研究科システム創成専攻教授：石黒浩さんの実験の話。
“なんと、石黒先生は難波の�眦膕阿妊▲鵐疋蹈ぅ匹鮗尊櫃貌�かせる実験を行ったそうです。（略）
結果、２週間でこのアンドロイドは服を40着売ったそうです。普通、人間のスタッフが一日20人しか接客できないところを、アンドロイドは45人接客。（略）
（なぜこんなことが起こるのか）理由は２つあると石黒先生は言います。
(1) お客さんは、「アンドロイドは嘘をつかない」と思っている。
(2) お客さんは、「ロボットだからいつでも断れる」と思って簡単に接客に応じてしまう”（96p）
本書の写真で見るアンドロイドは、まだ明らかに人間ではないと分かる（ロボットの外側が、かなり人間に近くできている）レベルです。
そのアンドロイドに対して、お客さんは「アンドロイドは嘘をつかない」という信用と、「ロボットだからいつでも断れる」という上から目線(?)の両方を抱いている点が面白いですね。
２．
「第５章 ヒューマンビッグデータ――人間を法則化する――」から、日立製作所 技師長の矢野和男さんの研究の話。
“矢野：幸せを感じる能力というのは半分くらい遺伝子の影響で決まってます。（略）
もう半分が変えられる部分ですが、人間関係や健康やお金などの環境的な要因は、なんとわずか10％しか関係しません。
――じゃあ残り40％とは？
矢野：残り40％は「積極的に行動したかどうか」なんです。結果ではなく、「行動を起こすこと」、それ自体が人の幸せに強く寄与するという結論です”（170p）
これには共感しました。
自分が主体的に動けるということは、幸福感に大きく関係していると思います。
３．
「第６章 ＢＭＩ――機械で人を治療する――」から、京都大学医学研究科准教授：西村幸男さんの話。
“脳への刺激でうつ病が治る？
西村：脳にはお金を渡したり褒めると反応する「報酬系」という脳領域があるんです。
ここを刺激すると40年以上に及ぶ鬱の患者さんでも「あ、なんか嬉しい」とか言い出したり、鬱でずーっと家にいた人が「ボーリングに行きたい」とか言うようになるんですよ”（222p）
鬱病が治るのなら良い話ですが、その逆（意図的に鬱にしてしまう）ができたら怖いな、とネガティブなことも考えました。
最後に、「第３章 アンドロイド――機械はすべて人型になる――」にあった文章を紹介します。
“アメリカ、デューク大学の研究者、キャシー・デビッドソンは、2011年にニューヨーク・タイムズで「子供達が大人になる頃、その65％はまだ存在していない職業に就く」という主張をしていました。確かに、20年前の人に「プロゲーマー」や「ブロガー」の話をしても絶対に信じないでしょう”（100p）
“65％の人が子供の頃に存在していない職業に就く”と読んで、そんなに多いかな？ と思いましたが、よく考えると私の今の仕事もそうでした。
時代の変化のスピードは、自分の想像以上なのかもしれません。
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海猫沢 めろん（うみねこざわ・めろん）
1975年大阪府生まれ。小説家。
様々な職業を経て文筆業につく。
主な著書に、『零式』（ハヤカワ文庫JA）、『ニコニコ時給800円』（集英社文庫）、『左巻キ式ラストリゾート』（星海社文庫）、『死にたくないんですけど iPS細胞は死を克服できるのか』（共著、ソフトバンク新書）などがある。
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