mixiユーザー(id:1795980)

2016年08月06日09:32

234 view

地球はもう温暖化していない[読書日記587]

題名:地球はもう温暖化していない 科学と政治の大転換へ
著者:深井 有(ふかい・ゆう)
出版:平凡社新書
価格:860円+税(2015年10月初版第1刷発行)
----------
新聞の書評にあった本です。
著者の本職は物理学者。「物理学者が、なぜ地球温暖化の本を書くのか?」と不思議に思いましたが、その答えは「あとがき」にありました。
引用します。
“「齢(よわい)70代の半ばを過ぎて、近頃しきりに戦時中のことを思い出す。なぜかと考えてみると、どうやら雰囲気がそっくりなのだ。
 先の見えない閉塞感の中で、『地球温暖化防止』という大義の下で人々が孜々(しし)としてCO2削減に励んでいるさまはアジアから鬼畜米英を追放して大東亜共栄圏を構築するという大義の下、国を挙げて戦っていた姿にぴったり重なる。
 その頃、巷には『八紘一宇』や『聖戦』などという標語が飛び交っていたものだ。その雰囲気は理屈抜きで小学生だった私の体に染み付いている。
 このような雰囲気、集団パラノイアがまだぞろこの国を覆い始めていることに、限りない不安と胡散臭さを覚えずにはいられない」”(232p)

目次を紹介します。
 まえがき
 第1章 CO2温暖化論が破綻するまで
 第2章 太陽が主役、新しい気候変動の科学
 第3章 あまりに政治化された地球温暖化
 第4章 今後とるべき政策を考える
 あとがき

「第1章 CO2温暖化論が破綻するまで」では、国連機関IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の間違い(意図的な歪曲)を指摘し、“実際に気温の上昇は頭打ちになっている”と述べています。
ヨーロッパ各国が温暖化対策に疑問を持つきっかけになった「クライメート事件」についての記述を引用します。
“ICPP報告書作りに重要な役割を果たしていた英国イーストアングリア大学気候研究所から大量の電子メール記録が流出して、CO2による温暖化を印象づけるためのデータ操作や批判封じなど科学者としてあるまじき行為の数々が明るみに出た事件”(18p)

「第2章 太陽が主役、新しい気候変動の科学」では、気候変動の主役は太陽であり、“数百年単位の視点で見れば、これからは小氷河期に向かい寒冷化してゆく”と予測しています。
西暦0年から2000年までの折れ線グラフでは、1600〜1700年当たりが小氷河期に当たり、日本では寛永飢饉や元禄飢饉が起きています。

第2章から「体験的温暖化は都市化によるもの」の一節を引用します。
“中年以上の人には、自分は地球温暖化を体験したと思っている人が多いだろう。自分自身の経験でも、大戦中、東京郊外・吉祥寺では防火用水にたびたび厚さ2センチもの氷が張ったものだが、今では氷が張ることさえ珍しくなった。(略)
ところが、これが日本の平均気温変化かというと、そうは言えないのだ。気温上昇には大きな地域差があって、過去80年間に東京では2.5℃も上がったのに対して中都市では1.5℃程度、都市を離れたところでは1.0℃以下でしかない”(87p)

「第3章 あまりに政治化された地球温暖化」では、京都議定書でまとめられた排出権取引などにより、国家間の利害が衝突することになった事態が記述されています。
ちなみに、日本は“毎年1兆円を超える排出権を買わなくてはならなくなった”(131p)とあります。
ここでも、著者は日本の事情について、次のように解説しています。
“(日本では)人口の都市集中が進んでいるので、大多数の人たちは自分の体験したヒートアイランド効果を「地球温暖化」と受け取っていることだろう”(162p)

「第4章 今後とるべき政策を考える」で興味深かったのは、CO2温暖化論によって悪者にされてしまったCO2についての話でした。
引用します。
“そもそも生物が大きく進化・発展を遂げられたのは、大気中のCO2濃度が数十倍も高い時代だった。巨大な恐竜たちが(略)1億年以上も繁栄できたのは、高いCO2濃度に支えられた植物の生産能力にあったからである”(180p)と述べています。

内容は物理学者らしく、地球がもはや温暖化していない証拠を数々のデータ(第2章に出ている“銀河宇宙線”の話[108p]など、私には理解できない部分もありましたが)や論文から引用し、説得力があります。

「欧米では現在は、温暖化対策はもはや問題視されていない」という指摘を踏まえ、今、日本で進められている温暖化対策は本当に必要なのかを考えさせられる本でした。

---------- ----------
深井 有(ふかい・ゆう)
1934年千葉県生まれ。東京大学理学部物理学科(地球物理学専攻)卒。
同大学院数物系研究科博士課程修了。理学博士。専攻は金属物理学、とくに金属−水素系の物性と材料科学。
現在、中央大学名誉教授、物質構造科学研究所・東京大学生産技術研究所客員研究員。
著書に『拡散現象の物理』(朝倉書店)、The Metal-Hydrogen System(Springer)、『気候変動とエネルギー問題』(中公新書)、『水素と金属』(共著、内田老鶴圃)、『物理学大百科』(共監訳、朝倉書店)などがある。

0 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2016年08月>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031