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2016年07月20日03:22
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『マクベス』ｂｙ世田谷ﾊﾟﾌﾞﾘｯｸｼｱﾀｰ/公益財団法人びわ湖ﾎｰﾙ
7/9(土)＠公益財団法人びわ湖ホール
まず､この｢びわ湖ホール｣という会場にとても興味があった｡
びわ湖畔の美しいホールだという｡
舞台の後方が扉になっていて､そこを全開し､
現実の風景が芝居の背景に借景、という演出を観たことがあって、
その借景にびわ湖がバァ〜ン！と出現したらどんなに美しいことだろう､
と期待したのだが…
予想通り､湖畔の美しいホールではあったが､
この建物では､ちと借景という演出はナイだろうな〜
ザンネン！
開場16：30／開演17：00〜18：40
出演者５人のマクベス！
2010年以来４度目の公演になる｡
マクベス夫人は初演以来の秋山菜津子さんから鈴木砂羽さんに！
開演前の舞台上に中央の奥に､方形の真ん中に丸い穴の開いた板｡
廃棄物の詰まったごみ袋状の物を､
こんなの →
２個重ねた物を左右６〜７個ずつ並べ…
…と そのごみ袋の閉じた口をこじ開けて､
人が １人､１人… また１人現れる。
開幕！
彼ら(小林桂太､高田恵篤､福士惠二)は３人の魔女(でも完全に男性)
そして､あの名台詞が呟かれる…
｢きれいはきたない きたないはきれい…｣
方形の板はいつしか周囲を布で覆われた立方体(一畳台=能に使う)に｡
これが､舞台上の大道具の全て｡
ある時は裏切りの寝室に、
ある時は玉座に､
ある時は地獄を覗く寝所に…
衣装は､上の通り､布を簡単に体に巻き付けているだけなのに､
時に応じて､豪華な打掛に､部屋着に､裃に、鎧に 観得る｡
それで､彼らはスコットランドの武将と美姫なのだ｡
魔女の託宣を信じ､
国王を目指すマクベスとそれを叱咤激励する妻｡
結局、自らの悪業の重さに押しつぶされていくのだが…
その盛衰は､背景と降る物によって､
春夏秋冬という四季の移ろいで表される｡
人生にもまた四季が在る｡
森が動いてきて､女から生まれたのではない者が行く手に立ちはだかり…
倒れたマクベスの屍に雪が降り積もる。 そして花が… 春が来た…
再生の望みがあるところが､萬斎のマクベスなのだ｡
シェークスピアと能・狂言
非常に似たものを感じると以前言っていた萬斎さんの､
日本の芸能の様式美を思う存分活かした英国古典の舞台は､
今公演もとても美しかった｡
砂羽さんのマクベス夫人､
ちょっと影が薄い｡
そういう設定？ 砂羽さんに持つ私のイメージのせい？
とても好きな女優さん｡ 悪女じゃあないのよネ〜
ちょっと物足りなかったな… 残念！
＜ポストトーク＞
19：00〜19：20
マクベスはシェークスピア作品の中で特に日本人が好み､
黒澤、蜷川はじめ多数の表現者たちが映像化、舞台化している｡
僕の英国留学中の英国人の教師は､
黒澤マクベス｢蜘蛛の巣城｣が一番お好きだったそうだ｡
自分が演じ､創っていくに際しどう楽しい物にできるか？を考えた｡
狂言は引いて見る=｢俯瞰｣=マクロの芸能｡
それに対し､能は人の心の奥を極めて行くミクロの芸能｡
シェークスピア､特にマクベスにはそれが共存している｡
共存と言う事は｢二律合反｣することだ｡
それが正に｢Fair is foul, and foul is fair｣=｢きれいはきたない、きたないはきれい｣
なのである｡
マクベスが書かれたのは､中世から近代へと移行する時代､
人は神の元に等しく無力だったのが､様々な力を身に付け思い上がってきた｡
そんな時､改めて抗えない自然の力＝運命＝３人の魔女を､
シェークスピアは描いたのでは？
そして今､原子力などというものまで手に入れ…
その力は恩恵を人に与えるが(きれい)とてつもない危険も孕む(きたない)
この袋は､僕は廃棄物をイメージした｡
自然に帰れないゴミを創り出すのは人間だけ！
そんなゴミが反乱を起こした！それが袋から魔女が現れるというイメージ｡
今､原子力の廃棄物に人は追い詰められている｡
本当は､人間も自然､森羅万象の一部でなければならないはず｡
だからこそ盛者必滅の理には逆らえない｡
シェークスピアはマクベスを､
その時の為政者がバンクォーの子孫だったため､
ある意味、ごますりで書いた芝居だった｡
だから､マクベスが倒れ､マルカムの勝利宣言で終わるのだが､
ここからが萬斎オリジナル！
ラスト､マクベスに
｢俺は人間だ！ 俺はあきらめない！｣
と叫ばせる｡
そして再生への兆しを残し…
明日をよりよくしたい！というのは人独自の意識｡
これは欲望であり､向上心でもある｡
そして､これこそ！“今”の日本へのエールでもある｡
(以上､私の聴き取って理解した範囲でのトークの要約｡
誤解釈、編集の不備､etcはご容赦を！)
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