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2016年04月26日02:48

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『リザとキツネと恋する死者たち』と『オマールの壁』

 それぞれ、全く性格の違う二つの映画である。どちらがどうかではない。それぞれに違っていて面白い。

■『リザとキツネと恋する死者たち』

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 日本びいきのハンガリーの監督が作った超絶ぶっ飛び映画。シャイな30娘・リザの周辺で起きる連続殺人事件、リザが引き継いだ日本大使未亡人の屋敷に住み着く陽気な唄う亡霊トミー・谷(トニー・谷ではない)、その家に間借りする不死身の刑事ゾルタン。
 奇妙奇天烈な世界のなかで、結論を言ってしまえば、臆面もなく、「愛は世界を救」ってしまうのだ。

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 息をつく暇もなく、兎にも角にも面白い。監督のウッイ・メーサーロシュ・カーロイはハンガリーでも人気のCMディレクターで、長編映画はこれが初挑戦だという。
 これは日本人監督によっても、ハリウッドでも、決して真似できない手作り感満載の日本へのオマージュにあふれた作品だ。
 この面白さを言葉で表現することはとてもできない。私たちの想像力を超えているからだ。映画の中で流れる、昭和臭プンプンのポップ・ミュージックがとても楽しい。
 世の自称日本人たちよ、君たち(私も含むのだが)の住む日本は、こんなにも愛される資格があるのか。

■『オマールの壁』

 こちらが突きつけるものは重い。パレスティナに住むレジスタンスの青年オマールは、イスラエル軍に捕らえられ、拷問投獄の末、巧妙な罠にはまってスパイに仕立てあげられる。
 栄誉ある壮絶な死という選択肢すらない。九〇年の投獄かスパイとして「自由」の身か。

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 主人公は、愛する女性やその兄のため、スパイを装いながらそうでないように振る舞う。しかし、そうした立場は彼だけではない。彼が漏らさなくとも秘密は漏れる。疑心暗鬼のうちに、彼は愛する女性からも見放される。
 彼は自己犠牲的に身を退くが、それでもなお、イスラエル軍からの情報要請や謀略への参加要請は一生続く様相を見せる。
 彼の決意は、彼をそんな窮地に追い込んだ大元を断つことだ。それはいささか唐突で衝撃のラストシーンとしてやってくる。

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 なお、オマールの「壁」とは、イスラエルがパレスティナ地区分断のために設置したもので、その高さは8メートルとされる。映画の冒頭から、主人公がそれを越えるシーンが描かれ、それが幾度かにわたる。もちろんそれ自身が決死の行為だ。
 この壁は、パレスティナ人の尊厳に打ち込まれた壁であり、だからこそ、この映画のタイトルは「オマール」の「壁」なのであった。




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