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2016年03月26日14:46

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アイリス・アプフェル

94歳にして今なおファッションアイコンとして影響力を持つアイリス・アプフェル(Iris Aphel)のドキュメンタリー映画「アイリス・アプフェル〜94才のニューヨーカー」を観た。

黒縁の丸い大きなメガネがトレードマークのアイリス・アプフェルは、1950年に夫のカール・アプフェル(Carl Aphel)とテキスタイルの会社「Old World Weavers」を設立し、約40年に渡ってメトロポリタン美術館やホワイトハウスなどの歴史的価値のあるファブリックの修復などを手がけた。
引退後も独自のファッションセンスと存在感でNYファッションシーンの重鎮として知られ、デザイナーやアーティストの間でも支持が高い。アイリスのファッションは、オートクチュールのトップスに教会の祭服や民族調のアクセサリーを合わせたり、デザイナーの服をフリーマッケットで見つけた掘り出し物と合わせるなど大胆でオリジナリティーあふれたスタイリングが特徴だ。

2005年、アイリスのファッション・コレクションの展覧会がメトロポリタン美術館で開催された。これは予定していた展覧会ができなくなった代案として急遽決まった企画で、関係者は全く期待していなかった。キューレイターのインタビューによると、宣伝もしていないのに業界人を中心に口コミで広がり、NYだけの予定が巡回展まで行われることとなり、全米で驚異的な動員数を記録した。この現象を中心に、アイリスのコレクションや日常を収めたのがこのドキュメンタリー映画である。
 映画ではアイリスのファッションやアートへの情熱、90歳を超えても最前線で活躍する活力に迫り、普段の生活やメディア出演時の裏側などに密着している。劇中には、デザイナーのアレキサンダー・ワン(Alexander Wang)やアーティストのカニエ・ウェスト(Kanye West)らとのシーンも収められている。

監督は『ローリング・ストーンズ・イン・ギミー・シェルター』(1969)や、ジャクリーン・ケネディ・オナシスの叔母と娘の関係をつづった『グレイ・ガーデンズ(原題)』(1970)などを手掛けたアメリカ人ドキュメンタリーの巨匠アルバート・メイスルズ(Albert Maysles)。
しかしこの作品を最後に、2015年マンハッタンの自宅で膵臓癌のため亡くなった。皮肉にもアイリス・アプフェルよりも少し若い88歳だった。
あのジャン=リュック・ゴタールに「最高のアメリカ人カメラマン」と言われ、映画史に残るドキュメンタリーを数多く手掛けてきたアルバート・メイズルス監督の遺作というのも感慨深い。
それにしてもこの後期高齢者のコラボが素晴らしいではないか!

彼女の繰り出す言葉がどれも素晴らしい。 整理してメモしておく。

◆不美人自慢
当時流行の洋品店かデパート(メイシーズ?バーニーズ?)のオーナー夫人に、
「あなたは美人じゃないけど独自のセンスがあるわね。きっと成功するわ」と言われた。
「私は美人じゃない。美人じゃなくてよかったと思っている。美人じゃなかったからいろいろ工夫したり努力もした。その結果いまの成功がある。」(美人はただ美人というだけでちやほやさ
れ優遇されるので努力しない)

「美人の知り合いはその美しさで成功していったけど、年取って美しさがなくなったらなにも残らなかった。」

◆アンチエイジングや美容整形、流行について

「私はむしろ反対派なの。不自然に鼻を高くしたりシワを伸ばして何になるの?」
「人と同じものを買って、みんな同じような服を着て何が楽しいのかしら」

◆ご夫婦にはお子さんはいませんよね、と言われて・・・・

「子どもは望まなかった。仕事や旅行がすべてだったから。夢中で仕事したわ。」
「母は子どもを持って仕事を離れたことをとても後悔していた。母は10年ほどのブランクのあと仕事に復帰したけれど、娘の私はとても寂しい思いをしたものだわ。」
「なにもかも手に入れることはできないのよ。何かを極めよう追求しようと思ったら何かをあきらめないとだめよね。」

◆夫婦円満ですね、と言われて、夫のカールが・・・

 「俺は彼女の服のために仕事してるようなもんさ」
「彼女が次になにをするかいまでも予想がつかない。こんな楽しい人生はないよ。」

(妻がファッションに没頭し金をかけるのをいやがる夫は多いが、妻のそのパワーを評価し楽しむことのできる夫はめずらしい。だからこそ二人は素晴らしいパートナーとして一緒に仕事をし、共に長生きしてきたのだと思う。)

◆夫の100才誕生日で・・・
  「女を眺めることをやめない男はきっと長生きするわ」(笑)

◆人のファッションを決して否定しないですね、と言われて・・・・

「そうよ。だってその人が満足してやっているんだからいいじゃない。たとえセンスがなくても(笑)」

◆ファッションへの深い愛情
NYにある3つのアパートは全て彼女の服やアクセサリーでうまっているのだが、着たことのない服は1着もなく、きちんと記憶している。素材やデザインまで熟知していて服への愛情が感じられる。金にまかせて服やアクセサリーを買いまくる人は買い物が目的になっているのでそれぞれのアイテムに対する思い入れや愛情がないが、彼女は違う。

◆ぶれない感性
いくつも重ねたアクセサリーもトレードマーク。
顔の形に合うなら、眼鏡が素敵なアクセサリーになり得ると気づいて以来。風変わりな眼鏡に目がないの。「何故そんなに大きな眼鏡を?」と聞く人には「あなたの本質をよりしっかりと見るためよ」と答えるのだけど、たいてい相手は黙ってしまうわね。

◆おしゃれとは・・?
「3つの言葉で定義するわ。 気概、気概、気概(attitude)!」 
「(着こなしのルールについて尋ねられるけど
「ルールなんてないわ。ルールを決めてもどうせ破るにきまっているから。時間の無駄でしょ。」


◆歳相応なんて関係ない
年相応”って、どういう意味なのかしら? 97歳のような30歳だっているし、器量よしでなくともとびきりクールな友人もいる。数字なんてなんの意味もないわ。ルールは簡単。ただ“然るべく”ってこと。その人の職業、環境、ライフスタイルにちょうどよいものを着ればよいのではないかしら?」
「80才の新人なんてすてきじゃない?」
「好奇心とユーモアのセンスがない人とは仲良くできないわね。本当にそう思うわ。この二つは、私が赤ん坊の頃にもらった最大のギフトだと思うの。」
「私ってなにかを始めると、やめるまで夢中になってほかのことを忘れてしまうのよ。だから帰宅時にはだいたいヘトヘト。でもいいこと? 何事もただでは手に入らないの。」

◆男物も関係ない
40年代、女性は履かなかったデニムをアイリスは苦労してゲットしたらしい。ショップ店主が女モノはないし女には売らないよというのに彼女はそのジーンズショップに何度も足を運び、店主がついに根負けして女モノを別注してくれたそう。彼女初めてジーンズをはいた女性ということになる。実に説得力のある話。
◆潔い人生観
「私たちは、テキスタイルの事業をやろうなんてまったく思わなかった。私が意図してやったことは何もないわ。ただ、物事が起こっただけなの。」

「繁栄の1920年代に生まれ、子供の頃に大恐慌を経験したこの世代は、自分がコントロールできない出来事は泣き言を言わずに受け入れ、自力で進むだけという、桁違いの潔さと諦観を身につけている気がする。」




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