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2016年03月26日08:51

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日本は世界4位の海洋大国[読書日記568]

題 名:日本は世界4位の海洋大国
著 者:山田 吉彦(やまだ・よしひこ)
発 行:講談社+α新書
価 格:838円+税(2010年11月第3刷)
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2010年の著作ですが、初耳の知識、情報満載の充実した内容でした。

まず、タイトルの「世界4位の海洋大国」ですが、「面積で世界六位じゃなかったっけ?(クイズ番組で知った知識)」と疑問に思いました。
著者も、その点は心得ていて、「はじめに」で次のように書いています。
“領海とさまざまな経済的な権益をもつ排他的経済水域を足した面積において、「日本の海」は世界六位の広さを誇る。
 しかも、日本海溝など深い海もあるため、海水量、すなわち海水の体積で見ると世界四位の海洋大国であることを、皆さんはご存じだろうか”(9p)

目次を紹介します。
 はじめに――日本がもつ世界四位の海水量(3p)
 第一章 偉大な力をもつ「日本の海」(16p)
 第二章 「日本の海」に眠るエネルギーと鉱物資源(56p)
 第三章 水産資源と先進技術が生む高度成長(104p)
 第四章 「日本の海」の大チャンス(146p)
 あとがき――海を守り続ければ未来は必ず明るい(181p)

私の知らなかった知識(一部)を引用します。

『第二章 「日本の海」に眠るエネルギーと鉱物資源』から、銅も全て輸入しているという事について。
“海底熱水鉱床、銅、鉛、亜鉛、金、銀などの鉱物資源が含まれている”(82p)
“銅は電気配線や回路などに用いられるほか、化合物にすれば防腐剤や顔料として幅広く活用することができる。しかし日本は、100%輸入に頼っている”(83p)

同じく第二章から、潮位差発電に触れた箇所。
“潮位差発電プラントで有名なのは、フランスのブルターニュ地方のランス川河口に建設されたランス潮汐発電所だ。
 この発電所の発電能力は、24万キロワットだ。
 この地域には、洋上の修道院として知られる「モン・サン・ミッシェル」がある。”(101p)

次に『第三章 水産資源と先進技術が生む高度成長』から、日本沿岸が「世界三大漁場」であるという紹介。
“日本の沿岸部は「世界三大漁場」と呼ばれている。
ちなみに世界三大漁場とは、日本沿岸部のほか、北大西洋にあるアメリカ東岸から、カナダ・ニューファンドランド島の東沖に広がる「グランドバンク」と呼ばれる海域の周辺。そして、イギリスからノルウェーにかけての「北海周辺海域」である”(107p)

また、漁師の高齢化について言及された箇所。
“現在では漁業就業者の高齢化が問題となっている。漁師の高齢化率(65歳以上の割合)は37.4%(2007年)と極めて高く、実に漁師の三人に一人以上は年金を受け取ることのできる高齢者なのだ。
 また、40歳未満は、15%にも満たないという異常事態と呼んでもおかしくない状況に陥っている”(110p)

同じく第三章から、「未利用魚」を廃棄していることについて。
“未利用魚とは、漁船操業時に漁獲対象魚とともに捕獲されてしまう「漁獲対象魚外の魚種」や、漁獲対象魚であっても「サイズが合わない魚」など、いわばマイナーな魚のことを指す。
 通常であれば、これらの魚の多くは捕獲後すぐに、船上から海洋投棄されてしまう運命にある”(115p)
“未利用魚の漁獲比率は、底引き網漁では40%から50%、定置網漁、まき網漁では20%未満程度と推定されている”(115p)

『第四章 「日本の海」の大チャンス』から、“日本の法律には領土の定めがない”という指摘。
“日本の法律には領土の定めがない。領土の基線から十二海里が領海で、二〇〇海里が排他的経済水域であるが、海上保安庁では基線を定めているものの、基点となる領土が法的に定まっていない以上、領域の概念も定かではない”(147p)

最後に、第二章から“海水からウランが採れる”という文章を引用します。
“日本近海に流れてくる黒潮は、一年間で約520万トンのウランを運んでくる。その0.1%を捕集すれば、日本の原子力発電に必要なウラン一年分を賄うことができるのである”(58p)
本書発行から五か月後に福島原発の事故が起きます。
もし、事故後の発行だったら、この希望に満ちた書き方も変わったかもしれないと思いました。

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山田 吉彦(やまだ・よしひこ)
1962年、千葉県に生まれる。東海大学海洋学部教授経済学博士。海洋政策研究財団客員研究員。
学習院大学経済学部を卒業したあと、多摩大学大学院修士課程を経て、埼玉大学大学院経済科学研究科博士課程修了。
海洋政策、海洋安全保障、現代海賊問題、国境問題および離島問題の研究を行う。
著書には『日本の国境』『海賊の掟』(以上、新潮新書)、『天気で読む日本地図――各地に伝わる風・雲・雨の言い伝え』
『海のテロリズム――工作船・海賊・密航船レポート』(以上、PHP新書)、『海の政治経済学』(成山堂書店)などがある。

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