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2016年02月28日15:35

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R18の展覧会 THE SHUNGA

東京の永青文庫で昨年開催され、85日間で20万人超が来場したという日本初の「春画展」が京都に巡回してきた。

 2月8日〜4月10日 細見美術館で開催されている。

デンマークのコレクターをはじめ、日本の美術館・研究所や浦上満氏ら個人が秘蔵する鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿、葛飾北斎といった浮世絵の大家による「春画の名品」が京都・細見美術館に勢揃い。
さらに、京都の西川祐信や大坂の月岡雪鼎の作品も追加され上方ならではの春画の魅力や、狩野派・土佐派・住吉派と春画との関係をもさぐる展覧会。大名から庶民にまで広く愛された肉筆と浮世絵が一堂に揃うまたとない機会である。

春画は江戸時代には「笑い絵」とも呼ばれ、性的な事柄と笑いが同居した芸術性の高い肉筆画や浮世絵版画の総称である。
特に欧米では、19世紀末ジャポニスム時代以降、高い評価を得てきた。
近年では、2013年から2014年にかけて大英博物館で開催された「春画 日本美術の性とたのしみ」展(sex and pleasure in Japanese art) が大きな話題を呼んだ。

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浮世絵・春画の持つエロチシズムに私は以前から興味があったが、最も衝撃をうけた春画は、葛飾北斎の「喜能会之故真通(きのえのこまつ)」である。

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北斎は90歳という長寿で長く活躍したが春画を描いたのはおもに文化文政期のわずかの期間。そのため数は少ないが印象深い作品を残している。
蛸に犯される海女の図はどこか西洋風で幻想的であり18世紀以降着衣の男女を描くのが春画の主流だった中裸体を好んで描いたのも異色だ。

もちろんほかの絵師のものには牧歌的でコミカルな春画もたくさんある。2010年芸術新潮の「恋する春画」特集を手にしてから、春画はユーモアに富んだ質の高い日本独自の芸術だとつくづく思うようになった。
去年東京で春画展が開催されたと聞き、関西には来ないのかと残念に思っていたので、京都の細見美術館での開催が決まって、始まるのを心待ちにしていた。

本展の入場券とチラシに印刷されているのは、喜多川歌麿の「願ひの糸ぐち」第11図の一部。

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手鏡に写った足の指先に物語があるし、手鏡のフォルムは♀マークに似ており、女性自身を象徴しているようにもみえる。シンプルだが大胆なエロチシズムが漂う。

本展ではこの絵の全体図をじっくり見ることができる。
女の湯上り姿に欲情し上に乗りかかる男。
「ちょっとお待ちよ、今髪結ってんだから」 「いいじゃないかまた結いなおせば」・・
洗い髪の繊細な描写、曲げられた足指を映す鏡の演出が心憎い。

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こちらはもうひとつ有名な歌麿の「歌満くら」 第十図・天明8年(1788年)

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料亭の2階部屋にて、男と女が惹かれ合う。男の片目がみえているだけで、男女の表情は描かれていない。が男女が直角に向き合いブチューっと・・どんな表情かは想像をたくましくすればよい。結構大きな画で構図が素晴らしい。着物の透け感やドレープも見事な筆致で歌麿の技量の確かさにうなってしまう。
他の画のように露骨(性器がむき出しなど)ではなく品があるのだが、飯盛女が掲げている扇子に書かれている句がおもしろくて笑ってしまう。

 蛤に嘴(はし)をしっかとつかまれて
   鴫立ちかぬる秋の夕暮れ (宿屋飯盛 狂歌才蔵集)

これは三夕の歌

心なき身にもあはれは知られけり
鴫たつ沢の秋の夕暮 (西行法師) のパロディだという。

飯盛は江戸の教養人だったらしい。

ハマグリに嘴(くちばし)をしっかと挟まれたシギというのは、ことわざの「漁夫の利」の語源となった「蛤を食べようとした鴫が蛤の貝殻にくちばしを挟まれて飛べないでいるところに漁師が来て蛤も鴫も手に入れて帰った」という話に掛けてあるわけだが。
もちろんここでは蛤は女性の、鴫は男性のナニのことを言っているわけだ。

実物の肉筆画は迫力があり、保存状態もよく彩色も鮮やかだった

喜多川歌麿は、表の浮世絵のみならず春画界の雄である。「願ひの糸ぐち」「歌満くら」シリーズはその代表作のひとつ。海外ではUTAMAROは巨根の意味もあるそうだ。背景を描かず人物重視の作風は春画でも発揮され、大胆な構図がみられる。
度重なる出版禁止令を叡智と反骨精神で切り抜けたが、ついに文化元年(1804)手鎖刑に処されその2年後に没した。
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