題 名：安倍首相の「歴史観」を問う
著 者：保阪 正康（ほさか・まさやす）
発 行：講談社
価 格：1600円＋税（2015年7月 第一刷）
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今年締めくくりの読書日記です。
2015年の個人的な関心は、一連の「安全保障法案」でした。
特に、一内閣による閣議決定が憲法に優るかのような法案は通すべきではなかったと思います。
そんな思いを代弁してくれる本を紹介します。
著者は、冒頭の "軍服を着た首相 ――まえがきに代えて" で次のように述べています。
"この稿を執筆しているのは、2015年6月の段階なのだが、安保関連法案の安倍首相の答弁は、二つの論理を楯にして進められていることがわかる。
そのひとつは、「国民の生命と財産を守るのが首相である私の役目」、もうひとつが「国家の安全を揺るがす事態か否かは首相の判断」という点である。
ことごとく「私が中心」という発想である"（5p）
強力なリーダーシップは魅力的ですが、こと国家の命運を分ける紛争への参加については、国全体で考えるべきでしょう。
目次を紹介します。
軍服を着た首相 ――まえがきに代えて
第１章 謙虚に史実に向き合うということ ――戦後七十年と安倍政権の歴史観
第２章 戦後民主主義の崩壊の中で ――「戦時体制」にどう抗うべきか
第３章 昭和史のかたち ――歴史の教訓から現在を解読する
第４章 慰安婦問題試論 ――「軍隊と性」をめぐる歴史的検証について
「第３章 昭和史のかたち」が最もページ数が多く、筆に力が入っています。
第２章〜第４章から、ひとつずつ引用します。
"第２章 戦後民主主義の崩壊の中で ――「戦時体制」にどう抗うべきか：
ジャーナリズムの中には、新聞、テレビ、雑誌も政府や国会を監視する役割を放棄し、ひたすら劣化国会の提灯持ちをするようなメディアもある。安倍政権の本質を論じまいとしているかにさえ見受けられる"（64p）
"第３章 昭和史のかたち ――歴史の教訓から現在を解読する：
閣議決定は憲法に優る？――統帥権干犯の復活を憂う（182p）
内閣の解釈だけで、国の成り立ちに大きな影響を及ぼす集団的自衛権の是非を決めていいのかとの批判は起こる。（略）
安倍内閣の閣議決定が憲法より上位に位置し、それを主権者の国民には知らせない「特定秘密」にするという時代の到来を、私は恐れるのである"（184〜185p）
"第４章 慰安婦問題試論 ――「軍隊と性」をめぐる歴史的検証について：
1945年8月14日の閣議で、そして軍事機関の会議で、太平洋戦争に関するあらゆる史料を焼却するとの決定をくだし、それを末端の機構にまで通達を出した。
むろんこれを文書で残すとわかるわけだから、町村の吏員が自転車で隣村に伝えるといった形を採っている。（略）
こうした暴挙、あるいは犯罪的行為は、政治、軍事指導者がポツダム宣言の第十項を恐れたためである。（略）
その第十項では今次の戦争を引き起こした戦争犯罪人を裁くと明記されている。自らの罪を恐れて指導者たちは史料の焼却を命じたのである"（239p）
謙虚に史実に向き合うということの大切さが繰り返し説かれている本でした。
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保阪 正康（ほさか・まさやす）
1939（昭和14）年、札幌市生まれ。同志社大学文学部社会学科卒業。「昭和史を語り継ぐ会」主宰。
昭和史の実証的研究のために、これまでに延べ4000人に聞き書き調査を行い、独自の執筆活動を続けている。
2004（平成16）年、個人誌『昭和史講座』刊行の功績で、第52回菊池寛賞受賞。
主な著書に『東条英機と天皇の時代』（ちくま文庫）、『瀬島龍三―参謀の昭和史』（文春文庫）、『昭和史 七つの謎』（講談社文庫）、『昭和陸軍の研究』（上下、朝日文庫）、『あの戦争は何だったのか』（新潮新書）などがある。
近刊は『昭和天皇実録 その表と裏�◆戞碧萋�新聞社）。
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