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2015年12月06日23:05

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HEADS UP!

先週、兵庫県芸術文化センター中ホールに「HEADS UP」というお芝居を観に行った。
http://www.m-headsup.com/

「HEADS UP!」はラサール石井が原案と作詞・演出を手がけたミュージカル。脚本は倉持裕。

ふだん表舞台に出ることのないバックステージで働くスタッフが希望や夢、ときには日頃のうっぷんを音楽にのせて綴る。
一応二人の舞台監督(哀川翔と相葉裕樹)を中心に展開されるが、誰が主役誰が脇役という設定がないのでスタッフそれぞれの掛け合いで展開されるのも新鮮だ。

「HEADS UP」の意味は、言葉通り「頭上注意!」ということだが、舞台照明がおりてくるときに声掛けする業界用語らしい。

舞台「ドルガンチェの馬」の1001回目の公演が、「黎明会館」というとある地方都市のホールで行われることになった。1000回公演を機に舞台監督をおりた哀川翔に代わり、助手をつとめていた相葉裕樹が新しい舞台監督となって仕切ることになるが・・
本番当日姿を表さない女優、かなり認知症が進んで心配な大物俳優。無茶を通す演出家、到底足りない制作予算。とどめは開幕数時間前というのに舞台セットが到着していない?
問題山積の監督デビュー。果たして幕は明けられるのか・・?

仕込みからバラシまで・・
舞台上では大道具のセット組みから始まり、照明、音響、衣装、制作、小道具そして演出部・・と各セクションのスタッフが本番に向かっていく姿、ふだん客席からは見られない見せてはいけない舞台制作の裏側を堪能できる。

最近、NHKなどは大河ドラマが始まる前によく制作の現場や裏方スタッフの仕事を紹介して予告番組を作ったり、朝ドラのスタジオセット見学を催したりしているが、それと似たような感覚で、観客も制作の現場に立ち合っているような気持ちになる。

橋本じゅん扮する如月組という裏方の親分がしぶい。如月組は元チーマーやヤンキーの集まりなのだが、仕事への情熱は熱く、急遽ありあわせのもので足りない大道具を作ったり素晴らしいプロ意識を発揮する。

田舎の劇場「黎明会館」の支配人役は、いつもは主役をはるイケメンミュージカルスター・中川晃教。彼のコミカルな演技も光っている。
哀川翔ははっきり言ってこのキャストの中で一番下手だが、舞台監督の新旧交代をそれなりに寂しい背中で演じていた。最後に一世風靡セピアの「そいや」をやった時が一番イキイキしていた(笑)。
青木さやか(こういう女、よくいる)もよかった。

「どんな華やかな舞台もスターのパフォーマンスも陰のスタッフの力がなければ成り立たない。それは演劇の世界だけではなくすべての仕事において言えること。なのに我々はその苦労に感謝を忘れがち。光あるところには必ず陰の力がある。見えるものは必ず見えないものに支えられている。その気持を込めてこのミュージカルを作りました。」
とラサール石井は言っている。

構想10年以上というだけあってとても練られている。照明を寒色系にして紙吹雪を降らせばステージは真冬になるし、逆に暖色系にしてエジプト風音楽を流せばそこは灼熱の世界に。
アナ雪のパロディ(ありのままに寒い)、やライオンキング、雨に歌えば、キャバレー、シカゴ、など有名なミュージカルの1シーンのパロディで次々と出てくる。
ギリシャ悲劇、シェークスピア劇、フレッド・アステアのタップ、マイケル・ジャクソンのダンス・・芝居をよく見ている人なら「お!」と思う場面がたくさんあり、とても楽しめる。
その根底にあるのは舞台愛。仕事に対する情熱。一度幕を明けたら絶対にやり遂げるという強い意思。どんな無理難題にも今できること&アイデアで乗り切り決してノーと言わない。これぞプロ中のプロ!

すべての仕事に就く人たちに勇気と誇りを与えるお芝居だと思った。


PS)
ちなみに、ラサール石井は、2013年にミュージカル「ゲゲゲの鬼太郎」の演出を担当した。
水木しげるさんの訃報に際しては、「(水木さんの)娘さんに『父にも見せたい』と言っていただきましたが、ご来場は叶いませんでした。全集の『墓場鬼太郎』の解説文も書かせていただいたばかり。子供の頃から愛読した作品に関われ、幸せでした。天国のジャングルでゆっくりお休みください」とコメントを寄せている。



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