伊藤若冲の天井画「花卉図」（信行寺）

今日は並んでばかりの日だった。

秋期京都非公開文化財の特別公開が始まり、伊藤若冲が描いたという信行寺の天井画がついに公開されるので、観に行ってきた。
若冲の天井画が現存するのは、滋賀県の義仲寺と京都の信行寺の2か所だけらしいのだが。
信行寺の天井画は今回が初公開で、しかも今後公開するかどうかはわからないという。つまり肉眼でその絵を見れるチャンスは最初で最後かもしれない。

http://www.asahi.com/and_M/interest/SDI2015100538801.html

　

ホテルグランヴィア京都で昼食をすませ、東山の現地へ着くと、案の定長蛇の列ができていた。1時間以上並びやっと境内へ。
もちろん撮影は禁止なのだが、天井画だけでなく境内は一切撮影禁止ということだった。なので、行って観てきた記録は、結局見学後お寺をあとにしてだいぶ離れてから外観を納めたのみ。
だが、素晴らしい天井画の数々はしっかり目に焼き付けた。見学は総入れ替え制でいつまでもとどまっているわけにはいかないのが残念だったが。ずーっと上を見上げていたので首が痛い(笑）。

信行寺は、平安神宮から徒歩10分ほどのアクセスのよい場所にあるのに、小さなお寺でしかもすぐ前を幹線道路が走っているため、わざわざ観光で京都に来て参拝に訪れる人はいないと思われる。しかしそんな無名のお寺がここ10年ばかりの若冲ブームで注目を集めることとなったのだ。

伊藤若冲の描いたとされる「花卉図」があるのは本堂の天井。その天井を格子状に区切った167面（38cm角）に、すべて異なる絵の植物を描いてある。若冲の落款もふくめ168個の画面が、南北4.8ｍ　東西11.5ｍの天井にぴたりとはまっている。

これらは元は若冲が晩年過ごしたの石峰寺（京都市伏見区）の観音堂にあったもの。
80代まで生きた長寿の絵師がゆかりの寺の天井を飾るおめでたい作品だったようだ。故あって信行寺に移ったが、描かれたのは檀家の人が祈る場所である外陣。その頭上に花が降り注ぐような空間を生み出したのだ。

描かれた植物はボタン、菊、梅、朝顔、蓮、もも、あじさい、水仙、ケイトウ、ユリ、シュウカイドウ、コデマリ、南天・・・珍しいところではトリカブトなどがある。
サボテンやひまわりといった江戸時代に欧州から伝わったといわれるものも。ひまわりは花の黄色がほぼ茶色に変色して枯れたように見えるが、赤いハイビスカスははっきり見えた。最も多いのは牡丹で30面あるという。

構図には若冲らしいこだわりが伺える。まっすぐに伸びるはずのアヤメは、くるりと曲線を描いて花が下を向き、青い朝顔が群れるのは画面の端っこで真ん中には大きな余白。
赤いボタンの花は恥ずかしがりなのか茎から後ろを向いて咲く。

80才をこえた若冲がこれほどの絵を一人で描き上げたのかはわからない。落款があるので彼が描いたのは間違いないが、彼はいくつもの下絵を持っていて専門工房の絵師に描かせたかも知れない。

信行寺はこれまで劣化を防ぐために公開せずに来た。が、美術を学ぶ人達から「拝観のチャンスを」と言われ続けてきた。
「悩みましたが一度は見ていただくべきかと。」本多孝昭住職（58）は話す。
すぐ横を幹線道路が走り排ガスや振動の影響が懸念される。天井から下を向いた絵はただでさえ絵の具が落ちやすい。次の公開があるかどうかはわからないという。

実際今回の公開にあたって多くのマスコミの取材や撮影が入った結果、目に見えて絵の板に亀裂が各所に起こりえらいことになっているらしい。「ほらここ。ここはつい昨日割れたんです。あそこもそうです」と本多住職はその場所を指さして言っていた。
風による乾燥やライトをあてることによる劣化が一気に進んだのだろう。
今まで一度も公開せずできるだけ光や風に当てず閉め切ってきたおかげでいい保存状態で保たれていたのだという。
若冲ファンとしてはこれほど素晴らしい天井画、なんとか劣化を防いでもしくはレプリカを作って今後も公開してほしいものだが・・・。


信行寺見学後、お茶しようと平安神宮の西にある「ラ・ヴァチュール」へ。

マンションの一角にある一見ふつうの店だが、NHK「グレーテルのかまど」でも紹介された、本場フランスにも負けないタルトタタンの専門店。

　

まさかここでも並ぶとは夢にも思わなかったが・・目的地に着くと店の前になんと10人ほどが並んでいる。知る人ぞ知る有名な店なんだろう。普段なら並んでまで食べたいとは思わないのだけど、若冲の天井画を見るのに1時間並んだ勢いで並んでしまった(笑）。http://www.trip.kyoto.jp/spot/db/La-Voiture/