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2015年05月24日19:41

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届きそうで届かない…

 採りたい虫がいる。こいつだけは自分の手でつまんでみせたいと思いつつ、すでに長い年月が過ぎてしまった。

昨年にも採集されたという情報をもとに、今年こそ長年の宿題を片付けるつもりで天気と仕事のやりくりをしてチャンスをうかがってきました。そしてこの日しかない(しか行けない)と、金曜日に仕事をすっぽかして出撃してきました。狙いは深緑青色のナガクチキ、数少ないながら知り得た情報と自分なりの棲息環境を思い描き、半分は採集できたような気分での出撃でした。

 目的地の琵琶湖北部の山塊は自宅から直線距離では大したことが無いのだが、近くまで高速が無いことなど思いのほか時間的に遠い場所でした。ほとんど御岳(岐阜県側)と同じどころかそれより遠かったという印象だ。

 ともあれナビを頼りに細い地道を延々と走る。途中は良い環境の連続で雑木林の中にクマノミズキの花が各所にみられる。訪花性の甲虫を狙うなら絶好のポイントが連続するが、本日の目的は花とは無縁と割り切り、ひたすら走り続ける。やっと現場付近まで到着するが林道入口には無情にもゲートが閉まっており、とても歩いていける距離ではない。おまけに昨日は雨上がりの強風で乾燥気味、湿度を好むナガクチキ採集は午前中が勝負時。峠まで昼前に到着できるはずもなく、やむなく付近のブナ林で採集することにした。幸い車止め付近は狭い範囲ながらブナの自然林が残されていることから、本日はここで勝負することにした。しかし狙いのナガクチキのいる生息環境イメージからはずいぶんと離れており、よほどのラッキーに恵まれない限り採集はできないだろうと覚悟した。


 早速戦闘準備を整えブナ林に突入するが、とんでもない急斜面。当然ながら急斜面過ぎて伐採や植林に不向きなため伐り残された場所だからそれもやむを得ない。沢伝いに登るとすぐにガレ場となり2歩登って3歩分ずり落ちるというハードな斜面できつい。森の中はニホンジカの食害で下草が少なく、腐葉土層も浅いのが余計に滑りやすい地形を作ってしまったようだ。しゃにむに稜線まで登ると歩きやすくはなったが密生した2次林となってしまい、とても採集できる環境にない。仕方なくまた急斜面に立ち戻るがトラバースすること自体かなり危険な場所。ちょっと気を抜くとあっという間に滑り始める。数メートル程度は仕方ないにしても、ひどいところでは一気に20メートルも滑落し、途中の枝にしがみつこうにもスピードが乗ってとてもつかまりきれなかった。あと少しで崖となるところでかろうじて止まってくれて事なきを得た次第。午前中だけで数え切れないほど滑り、すでに両腕は擦り傷だらけという悲惨な状態となってしまった。

 悲惨な急斜面との格闘であったが、問題は採れた虫である。苦労が報われるというほどの成果も無くお昼の時刻を過ぎてしまった。そうこうしている間に森のなかまで乾燥した風が吹くようになりいよいよ諦めて道沿いのクマノミズキのスイープでお茶を濁す採集に切り替えようと下山を始めた。
 小さな沢の源頭部に大きなブナの倒木が転がっているのを見つけ、そちらに迂回しながら下る。近付くと残念ながら倒れてから相当時間が経過し、樹皮も大半がはがれ落ちた倒木で経験的にも大した虫はいないと思われるハズレ材だった。一応横目でにらみながらスルーしようとして、大木の横に別の細い倒木に何かが這っているのに目に入る。細長く黒色をした甲虫は(タダ)クチキムシあたりと思われた。しかしクチキムシにしては動きが以上に素早く、不審に思いさらに近付き眼鏡を取り出して良く見るとナガクチキじゃないか。しかも最近めっきり採集する機会が少なくなったミゾバネナガクチキだ。あせって手を出すが大きな倒木の向こう側で届かない。倒木に反身を乗り上げて手を出すが機敏な彼らは素早く移動して材の裏側へ回り込む。するとすぐ近くの別の枝先からもう1頭が走り出す。あわててそちらに手を出すが、あらんことにやつは飛んで逃げてしまう。やむなく倒木を乗り越えて廻り込み体制を整えたが、いくつか同時に現れたり、思いのほか俊敏で細い枝を高速で走り回り容易に捉えられない。そうこうしているうちに姿が見えなくなってしまった。
 どうやらこれが本日のメインディッシュと判断し、じっくりと座り込んで探索することにした。地面に身体を寝かせて細枝の裏側を丹念に見ていくと落ち枝の裏側に静止する個体を発見、何とか確保することができた。少なくとも4‐5頭いたはずが他には1頭も見られない。少し待てばまた動き出すだろうと座り込んで周囲を観察する。急斜面のわずかなくぼ地は風裏になり、倒木の周辺だけにシャクナゲやアオキが群落を形成し湿度を保っているような場所だ。
 ふと目の前を飛ぶ虫に反応すると案の定ミゾバネだ。わずかな距離を飛翔しシャクナゲの葉に止まる、すぐに走り回りまた飛ぶ、次は地表のブナの細い落ち枝に止まるとせわしく走り回り、また飛んでしまう。
 ミゾバネほか多くのナガクチキこれほど活発に動かなく、地元のブナ林で採集した時もどちらかいえば立ち枯れの樹幹に静止しているものが多かった。しかし目の前の現実は素手ではとらえられないほど高速移動を繰り返している。そして時々電池が切れたように物陰に隠れて休息する。じっくり見ていくとそんなナガクチキがいくつか見つかる。ミゾバネ以外にも草叢の下の細い落ち枝にアカモンやイツモン、モモキホソ、セアカといったナガクチキがいくつか見つかり、ほとんどが活発に走り回っている。ビーティングネットも持ちこめないような叢の中でやむなく50口径のネットを取り出し落ち枝の下に入れて叩いて採集する。しかし動いている個体はあっという間に別の場所に移動しており、採集できたのは見つけた個体の半分にも満たなかった。

 今まで持っていたナガクチキのイメージをいくらか修正しなければならない事態に、しばらくそこに座り込んで観察を続けた。もっとも乾燥した日は落ち枝を叩いて採るということは多くのコウチュウ屋さんならご存知のことである。乾燥気味の時はこういった湿気が保たれている場所で活動し、何かの拍子で走り回り、ちょっとしたことで休止して隠れるため野外で見つけることが難しいのだと感じた。

 結局目的のナガクチキには出会うことがかなわなかったが、それでもわざわざ大変な思いをしてきただけ楽しむことができた。次の機会にはきっと仕留めてくれようと、リベンジの機会をどうやって作ろうかと知恵を絞る日が続きそうである。



なぜかカメラから写真を取り出せなくて今回は画像が無い。
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