グランフロント大阪のイベントラボで開催されていた「ティム・バートンの世界」展が盛況のうちにいよいよ終了。
ティム・バートン(57歳)は、映画界におけるもっともイマジネーションあふれる視覚的映画作家のひとりとして広く認められている。実写とアニメーショの両ジャンルにおいて批評的にも興行的にも成功をおさめている。
その彼の初めての回顧展、連日盛況とはいえ、あちこちの美術館に溢れかえっている熟年層は少ない。詰めかけているのはティム・バートンの世界観(怖くてきもくてかわいい)が好きなアラフォー(最長でもアラフィフ)くらいまでの世代だと思う。入場料高いし(1800円)、新聞社主催のタダ券の配布もないから、本当に見たい人しか行かないだろう。
大阪に来る前は六本木の森美術館でやって評判よかったみたいだし、なによりティム・バートンの絵コンテから油彩、紙ナプキンにかいたメモスケッチまで体系的に見れるのがよかった。
時期を同じくしてティム・バートン監督の映画「BIG EYES」(エイミー・アダムス&クリストフ・ヴァルツ主演)を観たのだが。
実際ティム・バートン色が全開の映画といえばやはり以下のような映画だろう。
1993年 ナイトメア・ビフォー・クリスマス
2005年 コープス・ブライド
2010年 アリス・イン・ワンダーランド(アカデミー賞受賞)
ティム・バートンは、カリフォルニア芸術大学のアニメーション学科を出てディズニーにアニメーターとして就職。同社ではヴィンセントプライスのナレーションによるストップモーションアニメ短編映画「ヴィンセント」を初監督し、賞を獲得している。
「僕はディズニーにいた10年、自分のアイデアを出し尽くしたが採用されることはなかった。」と、のちにティムは語っている。
1983年にはカンフーから着想を得た「ヘンゼルとグレーテル」や「フランケンウイニー」などの独創性あふれるアニメ映画を監督している。
赤ずきんちゃん ロミオとジュリエット
彼の長編監督デビュー作で異例のヒットとなった「ピーウィーの大冒険」(1985年)や、破天荒で独創的な「ビートルジュース」(1988年)は、いまや古典となったユニークな作品。
それらにつづいたのが、1989年最高興行収入映画「バットマン」とその続編「リターンズ」だ。
そして彼が監督・脚本・プロデュースを手がけた、最も愛されている映画が「シザー・ハンズ」。
ジョニー・デップとはこの映画の主演がきっかけで映画における素晴らしいパートナーシップが生まれた。
児童文学をもとにした「チャーリーとチョコレート工場」、「スリーピーホロウ」。
モーリス・センダッックなどの絵本作家にも通じる世界だ。
トリック・オア・トリート
ナイトメア・ビフォア・クリスマス 母さん怪獣マザラ
彼は少年のころ日本の映画もたくさん見ていたらしい。ゴジラやガメラ、モスラなど、またウルトラマンの怪獣も大好きだったとか。
また、私達もよく観たフランケンシュタイン、クリストファー・リー主演のドラキュラ伯爵、ノートルダムのせむし男、蛇女ゴーゴン、アマゾンの半魚人などのB級映画。彼の作品にはこれらの影響が色濃くみられる。
怖いけどわくわくする、きもかわ、ぐろかわ。少年を魅了する怪獣モンスター、化け物、妖怪たち。
「マーズアタック」の火星人や「フランケンウィニー」のデビルドッグの人形なども超きもかわいい。
日本なら水木しげる、欧米ならティムがダントツのその道の大御所だろう。
つぎはぎ縫い目ペイントや目の周りを黒く塗るゾンビ化粧。いまやハロウィンの仮装をするのに最も参考とされているのは彼の映画のキャラではないだろうか?妖怪人間ベム、怪物くん、キョンシーも同じテイストだ。
ジブリ映画には、ティムの世界観の影響が見られる。例えば、ティムのスケッチには「まっ黒クロスケ」、「千と千尋・・」に出てくる石炭おやじ「釜爺」など、とかぶるキャラがみられる。
日米アニメのキャラがお互いに影響しあっているのだろう。
ゴッホは彼が最も影響をうけた画家だそうだ。「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」のあまりにも有名なポスターはゴッホの「星月夜」を彷彿とさせる。
奇形の魑魅魍魎たちが闊歩する世界は、ヒエロニムス・ボッシュの作品ともオーバーラップする。
ティム・バートンは、1997年には本「オイスターーボーイの憂鬱な死」という絵本も出版している。
2009年には彼の40年以上に渡る個人的な作品とプロジェクト作品が収められた430ページにも及ぶ作品集「The Art Of Tim Burton」が出版され、同年MOMAで展覧会も開催された。この展覧会はメルボルン、パリやソウルでも開催され、どの都市も記録的な動員数だったそうだ。
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