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2015年01月09日11:09

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老人=私が嫌われるわけ (付)「生命」のソネット

 老人といってもいろいろあるのだろうが、とりあえず私も含みこんだ一般論として述べよう。
 老人が嫌われる理由はいろいろあるが、そのひとつに話題のステレオタイプ化があげられる。要するに話題が狭くある定形へと偏っているのだ。

 それらのベスト・スリーを例示すると、1)孫の話 2)病気(あるいは健康法)の話 3)昔話・・・といってもお伽話ではない。「昔はなぁ、こんなもんじゃぁなかったぞ」と言いつつ、その間に自己顕示の自慢話を潜り込ませる・・・といったことになろうか。

 これはたぶん、かなり普遍性をもっているはずだ。
 というのは、しばらく前まで、この私自身が、「なんで老人はそんな話ばかりをするのだろう」と思っていたからだ。

 そこでこれらを自分に即して検証してみようと思うのだが、1)についてはとりあえずスルーする。なぜなら、私はほとんど孫の話を日記やブログでしたことはないし、これからもおそらくしないだろうと思うからだ。
 とはいえ、孫がいないわけでもないし、それを全く気遣っていないわけではない。

 3)についても改めて述べない。なぜなら、私の日記やブログ、またはネット上でのコメントのやりとりはほとんどこうした昔話であり、それを取り上げられたら私は書くべきほとんどのことを失ってしまうからだ。

フォト

       もう治ったが私の肺炎のありか(昨年末)

 問題は2)であるが、振り返ってみると一昨年の秋ぐらいからなんでもないような不定愁訴も加え、そうした話題がぐんと上昇している。とりわけ昨年末から今年にかけてはそれがメインであるかのような観を呈している。

 これにはきっかけがあって、一昨年の秋、41.5度の高熱で倒れて、救急車で病院へ運ばれ、そのまま10日ぐらいの入院を強いられたことによる(急性気管支炎)。
 病を得ての入院はこれが最初ではなく、60才前後に脳梗塞の発作で一週間ほどの入院を経験している。しかしその折は、症状が左手の麻痺というだけの比較的軽いものであったことや、まだまだ働き盛りで、これは一過性のものにすぎないと自認していただけに、衰えの自覚はまだなかった。

 しかし、一昨年の入院はやはり衰えの自覚を誘うものだった。年齢が74歳であったこともあるが、「何だこんなもの」という立ち向かってゆく気力があまりなく、受動的にそれを受け入れざるを得なかったという点に敗北感があった。
 以後、それの延長上にある。

 ところで、どうして病という本来プライベイトとな問題について語ってしまうのだろうか。
 そこには、同情を誘い、「私」への関心を持ち続けてほしいという甘えた自己顕示の姿がある。と同時に、私の言説や行為においての衰退を、病というハンディによるものとして許容してほしいという要請でもある。

 この後者は複雑で、甘え一般をも含むが、同時に、まだまだ現実にコミットメントしてゆきたいという能動的な願望をも含んでいる。しかし、衰えへの自覚は厳然としてあるため、そのコミットメントにこっそりハンディを忍び込ませそれを許容してもらおうという魂胆である。

フォト

          これで気管支が広がるらしい

 こうしていくぶん斜に構えながらも、基本的には軟弱な老人としての「私」の像がある。
 ここまでは反省的に遡行できるのだが、しかし、そうしたからといってこのポジションは変わらないだろうと思う。
 なぜなら、それが有限な「私」の実存であり、それをやみくもに否定したところで、事態は一向に変わらないと思うからだ。
 
 むしろこの有限なあり方のなかで、そして、それとちゃんと向かい合ってゆくことのなかで、私の自由は開ける。抗うのではなく、かといって従うのではなく、その都度の事象そのものに折々の自分を対峙させてゆくことのなかで。

   
   ソネット 時と生命

   若い日々 私の生命は
   誰かがカスタネットに手を触れようとしただけで
   もう裾をたくしてステップを踏み始めていた

   ミューズの吐息をそよとでも感じようものなら
   全身の血は沸き立ち 天蓋までも舞い上がり
   その所作のすべては音楽と詩であった

   しかしいま 私の生命は
   まるでメデューサに見つめられたかのように
   かたまり ちぢこまって のろまになってしまった

   しかし 泣くまい 嘆くまい 怒るまい
   たとえ時が アポロンの輝きを奪ったところで
   まだ バッカスの戯れるこころが残っている
   そして私の生命はそれに唱和する
   空虚な無限より有限のなかの自由を生きるのだと
 
 

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