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2014年11月24日17:31

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The Power Of Images

先週「関西文化の日」に行ったみんぱく(国立民族博物館)の「イメージの力」展(THE POWER OF IMAGES)が面白かったので別枠で書く。

みんぱくはもう何度も行っているので常設展示はだいたいよく知っているのだが、これは特別展で、学術的な視点からでなくよりイメージ=芸術的な視点から展示物が選ばれているのがよかった。

たとえば、見えない物のイメージ。
神や精霊、時間・・といった「見えないもの」に人はいかに形を与えてきたか。そしてそのイメージとかかわることで、見えないものの力をどのようにコントロールしようとしてきたか。

【みえないもののイメージ】

神々をかたどる・・
世界のどの民族もどの宗教もそれぞれに見えない神々を偶像化し、動物や自分たちの姿カタチに似せてかたちづくったり、記号化したりつまりイメージとして表現してきた。

時間をかたどる・・
目に見えない力の持ち主たちつまり過去の英雄および祖先たちの物語は人々の語りの中で伝えられてイメージの中にも組み込まれていった。それは時間をかたどる行為ともいえる。
仏伝図やキリスト教のイコン、オーストラリアのアボリジニの樹皮画など、世界各地の時間をかたどる営みを見る。

【イメージの力学】
光、色、高さ、、、
光り輝くもの、色鮮やかなものはそれを身にまとい所有するものの富や権力を際立させる。鏡や金属、金糸銀糸の刺繍飾りはそれを身にまとう者の体を護るとされる、そこには光と色に対する文化を超えた共通の反応がうかがえる。
また、この地球上には高く見上げるような造形を通じて、高みつまり「他界」「異界」とこの地上をつなごうとする造形が文化の違いを超えて広く分布している。
高さを強調したイメージは、見る者の視線を上方に導き死者の霊や精霊を高み=他界に送り出すものと考えらたりあるいは神々が地上に降りたつ回路とされた。

【イメージとたわむれる】
人間は特定の目的や機能のためにイメージを生み出すだけでなくかたちや文様を創造しそれを享受することに喜びを見出してきた。生活用具や衣類など、ただ使えたらいいのではなく見た目の楽しさ美しさ。工芸、デザイン、ファッションはそういう発想から発展してきたのだろう。

【イメージの翻訳】
ハイブリッド
人、モノ、情報の移動と接触によって、それまでになかった慣習が生まれ新たなイメージが生み出されることはあらゆる地域や時代に確認できる。

文化交流の結果として生み出されたハイブリット(異種混淆的)な造形。

【消費されるイメージ】
グローバル化した今の社会においては大量のイメージが複製され商品化され消費の対象となって流通している。セネガルやベトナムで売られているブリキやアルミニウム(ビール缶の複製)玩具や、メキシコ南部南部で制作される木彫りの動物像アレプリヘなど、ツーリストアートと呼ばれる新たな造形には、20世紀後半以降の世界全体の社会の在り方が投影されている。


消費されるイメージというとアンディ・ウォーホルを思い出すが、彼はPOPARTで大量消費社会のイメージを芸術化したし、横尾忠則だって広告デザインから日本を代表するアーティストになった。イメージが力をもつ世界では、美術と広告デザインを区別する要素はなにもない。


人類の歴史はイメージの歴史だった。イメージは文字に先行しさらには言葉の源になった。世界の在り方にかたちや色を与えて視覚化することは人間に与えられた根源的な資質のひとつといえる。
このイメージの作り方に人類共通の普遍性はあるのか・・

「イメージの力」展(The Power Of Images)はみんぱくが所蔵するコレクションの中から約600点の造形を精選し観覧者とともにこの問いに対する答えを体感的にさぐってみようとするものだった。ゆえに通常のように地域や時代別に分類するのではなく、イメージの持つ造形性や効果、機能に着目して展示している。

この展覧会は今年2月〜6月にかけて東京の国立新美術館で開催され、話題となったもの。
それは美術(art)と器物(artifact)、美術館と博物館、美術史と文化人類学、西洋と非西洋といった日ごろ私たちが当たり前と思っている区別を改めて問い直す試みでもある。

そういえば河合隼雄の著書「こころの読書教室」で、鈴木大拙「十牛図」(禅の悟りの境地を少年と牛との関係で描いた絵)と、ユングが自己実現の過程を表現した「錬金術の絵」が似ていることを絵入りで解説していた。

また、ユングが心理療法の中で、統合失調症の人たちが症状が少しずつよくなってきたときに描く絵がチベット宗教の曼荼羅と同じだったということも書いてあった。宗教と心理学の深いところでの共通点はおもしろい。

民族や宗教、文化を超えたところでの世界のイメージの普遍性を体感できた展覧会だった。







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