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2026年01月02日11:07

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映画「第八の容疑者」

12月27日(土)
大阪アジアン映画祭関連企画大阪シネマスコープ。10月、11月、12月の3回に分けて、アジア映画を上映する企画の最終回に行ってきた。

「第八の容疑者」 
Dust to Dust [第八個嫌疑人]|中国|2023年|112分
監督:ジョナサン・リー[李子俊]、主演ダーポン(大鵬)、ラム・カートン(林家棟)チャン・ソンウェン [張頌文]、チー・シー [齊溪]、スン・ヤン [孫陽]

1990年代に起きた銀行強盗と殺人事件の主犯が逃亡。20年以上経って、中国辺境の町に偽名を使って生きていることがわかり、捜索が進められる。20年前の犯罪の背景、そして逃亡後に住みついた町での生活、退役後に再び犯人を追う刑事の視点で犯罪者を追跡する。

李子俊(ジョナサン・リー)監督は香港生まれ。同監督のマレーシア映画「私立探偵」は、2025年の大阪アジアン映画祭で上映され、チケットは即日完売となる人気だった。主演のルイス・クーは、大ヒットした「トワイライト・ウォリアーズ」のメインキャストの一人でしたしね。
マレーシア映画の「私立探偵」で、ルイス・クーを使ったように、今回の中国映画でも、香港のスター俳優ラム・カートンを使っている。香港映画のスターのファンは世界中にいるから、うまい戦略だといえよう。

20年前の犯罪、それを追う退職間際、あるいは退職刑事・・・韓国映画にもよくあるなあ、こうした設定。この映画は、実話がベースにあることもあり、クライムものとして大変よくできていて、面白かった。
広東省で現金強奪と殺人を犯した犯罪者が潜伏先としてミャンマーの鉱山に行くというのも、90年代ならではだろう。今なら、ミャンマーやカンボジアの金融詐欺拠点に流れて行っていそう。
劇中、ミャンマー国境の町の名は瑞龍となっているが、これは雲南省の西端、瑞麗が舞台であることは間違いない。
犯人の信文役の中国俳優、大鵬(ダーポン)は、ぽっちゃりした20代と、瑞龍で他人に成りすましていた50代を一人で演じ分けていたと知って驚かされた。てっきり別人が演じているものと思うほどの老けぶり、別人ぶり。彼は、本作で第25回上海国際映画祭最優秀主演男優賞を受賞している。
ラム・カートンはジョニー・トーなどの撮る香港ノワールや、イップマンでもおなじみ。そんなに香港映画を見ない私でも知っている好きな俳優なので、彼の演技が見られたのもうれしかった。これが2025年の映画の見納めでした。

以下、詳しい内容に触れています。お暇のある方はどうぞ。

冒頭、どこかの石切り場のような荒涼とした風景の中、1人の男が近くにいるもう一人の男の頭の上から石で殴りつけ、殺害し、死骸を崖から落とす。
そこからタイトルロール。90年代に起きた実際の事件に基づくという文字が出る。

2017年、中国南部のある町で、刑事の王守月(ラム・カートン)は、彼の退職を祝う同僚に囲まれていた。「あの同僚が殉職してから21年ということか・・・」と呟く。彼は偶然目にしたニュース映像に、ある男の顔を見つけ、現地に飛ぶ。雲南省西部、ミャンマーとの国境に接する町瑞龍だ。聞き込みを始め、現地で莫志强と名乗っていることを突きとめる。彼の経営するタイル店を訪れ、妻には志强の幼なじみなので、ここで待たせてもらうと告げる。莫志强こと陳信文とは、21年前に強盗事件を起こし、今も逃亡中の指名手配犯だった。

1995年、広東省のある町の土木施工会社は橋梁建築を受注するも、工事が頓挫していた。社長の陳信文の使い込みで、資金繰りが滞っていたためだ。陳は従兄弟の陳欣年、地方出身のゴロつきの工員2名、取引先の銀行幹部とその部下2名を巻き込んで、現金輸送車からの現金強奪を図る。王守月は、その前に起きた小さな強盗事件の犯人逮捕のために派遣された刑事だったが、きっともっと大きな事件を画策していると見て、いくつかの銀行を警戒させていた。しかし、その読みは正しかったものの、予想と異なる支店が襲われたため、初動が遅れ、大金が奪われた上、死傷者も出してしまう。銀行幹部らは逃亡先で逮捕されたが、信文と欣年の行方は杳として知れなかった。刑事の王守月は、信文の年老いた父をたびたび訪れ、彼の消息を探っていたが手がかりはなかった。

実は、信文と欣年の二人は国境を越えてミャンマーに潜入、北部の翡翠鉱山で人夫として働いていた。国籍も身元も問われることはないとはいえ、苛酷な労働に欣年は弱り切っていた。信文は、自分たちと同じく中国出身、しかも身寄りのない莫志强に目をつけ、彼を殺害し、身分証を奪って帰国する。莫志强を名乗ってタイル店の住み込み店員になると、社長の娘に見初められて結婚して娘をもうけ、今は社を取り仕切るまでになっていた。身分証もなく、体を壊して働くこともできない欣年は、莫の従兄弟という名目である施設に収容されていた。

突然目の前に現れた王守月に莫志强こと陳信文は狼狽える。妻子の手前、平静を取り繕うが、王に1995年の強盗事件の新聞記事を見せられた妻は夫が強盗犯であることに戦慄する。従兄弟とされている陳欣年に密かに会いに行き、信文が本物の莫志强を殺害していたことも知ってしまう。
1995年の強盗犯は7人、そのうちの5人は逮捕されていた。王守月は、自称莫志强が陳信文であると信じて疑わないが、彼は莫志强の身分証を所持しており、自分が陳信文であることを証明できるかと反問する。あるいは、莫志强が第八の容疑者だったのかもしれないぞ?と問い、混乱に陥れようとする。
一方、妻の楊芳は、信文に今すぐ逃げようと促す。信文にはその前にすることがあった。もしも王刑事が欣年に会って問い詰めれば、自分が信文であることがバレてしまう。その前に欣年を亡き者にするのだ。彼は、欣年に「3つの選択肢がある。一つ目は一緒に逃げる。二つ目は(内容失念)」、でも3つめを選ぶなら・・・と言って彼の表情から同意を読み取ると、布で口を押さえ、窒息死させようとする。しかし、できずに泣き崩れてしまう。そこに物陰から王刑事が現れ、地元の警察がこちらに向かっていると告げる。結局、二人は逮捕され、信文には死刑判決が下る。

香港映画ファンの友人は、「これは実話ベースだからしょうがないけど、やはり中国映画は絶対に警察は正義で犯罪者は逮捕されて当然ということになっているので、始めから結末が読めてしまった」と言っていた。これが香港映画だと、犯罪者が一枚上手で警察を出し抜くなど、警察や公権力をバカにする視点が含まれているはず、ということらしい。
まあ、でもこの映画の主犯のやっていることはほんとにひどいので、刑事の視点で、なんとか追い詰めて捕まえてやれ、という気持ちにならされるストーリーにはなっています。
また、悪人の信文だが、思いもかけず瑞龍で若く美しい女性と結婚することになり、結婚式の日に故郷に住む父に密かに電話をかけるシーンがある。老父は「信文か?」と問うが、信文は答えることができず、ただ受話器を持ったまま嗚咽する。父は、「生きていることがわかっただけよい」という。こういうところの見せ方もうまいと思った。
また、信文の素性を知らず、結婚した女性楊芳を演じた女優さんは、ちょっとグイルンメイに似た美人。ロウ・イエの映画などにも出ていたらしい。中国映画の俳優は多すぎて、よほどの中国映画ファンでないと名前までは覚えられないな。

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