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2022年07月17日16:53

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二度目の「ベイビー・ブローカー」と是枝監督ティーチイン

「ベイビー・ブローカー」、1回目に見た時はレイトで、睡魔に襲われつつの観賞だった。
他の方のレビューやあらすじを読むと、ずいぶんと見落としていたようで、もう一度見なくてはと思っていたところ、京都シネマに是枝監督が来場されるというので、さっそく予約購入。最前列で見ました。
見落としていたシーンは二つあり、ひとつは、ウソンが熱を出してしまい、病院に行くところ。病院でお医者さんが出てきたところはおぼろげに覚えていたが、その前後のいろいろは記憶になかった。
もうひとつは、ソヨンが殺してしまった男の妻が、ウソンを引き取って自分が育てたいといい、4000万ウォンを出すというところ。この部分が飛んでいたので、ソウルにテホがやってきてサンヒョンと交渉するところの意味がよくわからなかった。また、その後にプサンのヤクザの死体と4000万ウォンが見つかったというニュースが流れるシーンの4000万ウォンがどこから出てきたのかも。ラストシーンの公園で映るバンには、やはり「洗濯」の文字があったし、バックミラーにぶら下げられている写真はソヨンがロッカーにぶら下げている写真と同じ写真だったから、サンヒョンだったんだろうな。

さて、是枝監督はGAGAの広報の辻さんの挨拶の後、登場。今日はメモ帳持参だったので、Q&Aはだいたいメモしました。

是枝監督
「京都シネマでの舞台挨拶は久しぶりです。何年ぶりかな?」 (京都シネマの人、あるいは観客から『歩いても、歩いても』の時ではないかという声あり)

最初の質問者
「是枝監督はこれまでの映画で、阿部寛さん、福山雅治さんなどのカッコいい人をカッコ悪く撮るという特徴があるが、今回もカン・ドンウォンさんをどうカッコ悪く撮ろうとしたか?またカッコいい人をカッコ悪く撮る理由は?」
是枝監督
「カッコいい人に対するなんて言うんだろう、屈折があるんですかね。カン・ドンウォンはとにかくスタイルがいい。スタイルがいい人はカッコいい。彼に初めて会ったのは、2014年か15年ころだと思うけど、ホテルで会ったんだよね。その時にいきなり韓国海苔をくれて、これがものすごく旨かった。彼はグルメでおいしいものをよく知ってるから、その海苔もとびきり美味しかったの。そのことをソン・ガンホに言ったら、だったらこれから俺も海苔を持って歩くようにするよって言ってましたけどね、もちろん冗談で。
カン・ドンウォンのようなカッコいい人というのは、演技しているとふっと現実感がなくなるときがある。そうではないところを撮りたいと思いましたね。だから、できるだけ赤ちゃんを抱かせるとか、嫌味を言わせてみるとか。」
質問者
「この映画の中のいちばん、カン・ドンウォンのカッコ悪いシーンはどこだと思うか。自分は、GPSを見つけて、車の中でソン・ガンホとグータッチするところがそうだと思ったが」
是枝監督
「ああ、そうかもしれませんね」
質問者
「観覧車のシーンは、ソヨンとドンスの心が一番通っていると感じられた。狭い観覧車の中で、おそらく2人の俳優とカメラマンしか同乗できず、監督はモニターで見ていたと思うが、どのように演出したのか。また、撮影が順撮りだと、登場人物たちの心情の変化が現れると思うが、順撮りしたのか」
是枝監督
「今回の配役は、順撮りしなくても、自在に変化を付けられる役者さんばかりだったんだけど、ただ、ロードムービーなので、全部順撮りしました。同じ大きさの車でリハーサルをして、あとは順に移動しながら撮影した。
観覧車のシーンはなかなか大変だった。一番高いところに来たときに揺れるというシーンなので、片側の人物を撮るのに1回、もう片側の人物を撮るのに1回、光の角度が変わってしまうので、同じ時間帯にしか撮れない。日を分けて3テイクしました。で、採ったのはワンテイク目です。撮影中モニターで見ると言うことはできなくて、編集するまでどうなのかわからなかった。あの観覧車はすごく古いタイプで、ギイギイ音がする。で、ワンテイク目が一番いいとわかったんだけど、その時の音が一番うるさかった。それをなんとか、アフレコにせずに、ワンテイクの画を使うようにしました。
 ソン・ガンホさんは、必ず、「何テイク目がよかった」と言いに来る。他の役者さんは言わない。ただ、このシーンの時は、イ・ジウンさんも「テイク・ワンがいいと思う」と言いました。
質問者
「赤ちゃんの撮り方がうまいと思ったが、赤ちゃん役をどうやって選んだか」
是枝監督
「赤ちゃんには苦労しませんでした。ほんとに、何もしなくてもいい動きをしてくれた。二組目の夫婦に会うシーンで、あのペ・ドゥナが仕込んだ夫婦だけど、妻の方が抱っこさせて下さいといって抱っこしたときにお母さんの顔に触ったでしょ。あれ、自然の動作だったんです。それでお母さんが「あー、顔に触ってくれた」とアドリブで入れてるんだけど。それからソヨンが窓から外を見ているときの髪の毛に触るとか。
オーディションは、コロナもあってリモートで、生後1ヶ月の赤ちゃんを何人か見せられて、選ぶと言うことになって。音に反応のいい子を選んだんだよね。何かあると、さっとそっちの方を見るとか。そうしたら、本当にね、いい動きをしてくれるわけ。
2ヶ月半の撮影中、両親がずっとそばにいて、看護師の人も一人ついて、小型の救急車も同行していて、何かあったらすぐに病院に連れて行ける体制になっていた。それで安心して撮影できたというのもあると思う。
質問者
「高速列車の中でのシーンでは、会話の最中にトンネルにはいって言葉が聞こえなくなったり、暗くなって顔の表情が見えなくなるというのが絶妙のタイミングで起こっているが、どうやって撮影したのか」
是枝監督
「これはカンヌンからソウルへの高速列車で、はじめはスタジオで撮るという話もあったんだけど、ぜひ列車に乗って撮りたいと思って車内で撮りました。この路線は調べてみるとものすごくトンネルが多いんですよ。もう、ほとんどトンネルと言っていいくらい。それと、走っているときはどちら行きかというのをあまり気にしなくていい。それで、一回で撮れなかったら反対向きのにもう一度、乗って撮り直せばいいと思ってたんだけど、1回で撮れた。もちろん、ここからここまでにいくつトンネルがあるかとか、通過に何秒かかるかというのは、あらかじめ全部調べておいて、撮影しました。
質問者
「どういうきっかけでこの映画を構想されたのか。洗車のシーンはどうして入れたか」
是枝監督
「最初に思いついたのは、神父の服を着たソン・ガンホが笑顔で赤ちゃんを抱き上げ、次の日、売り飛ばす、というシーン。それから、だんだん、肉付けしていった。車に乗って移動する話にしようと思った。それから、ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、イ・ジウンの3人の他にもう一人いると、車の中での座る位置が変わる。座り方が変わると会話が変わる。それで、もう一人いた方が良いなと思って、あの施設にいた子どもが後から加わることにした。
どんな車にしようかなと思ったときに、僕は昔からクリーニング屋さんが好きなんで、クリーニング屋さんにすることにした。そしたら、配達している服をどこかで着替えるシーンも入れられる。洗車で窓を開けるというのはね、子どもの頃、僕のうちには自動車はなかったんだけど、友だちのうちのお父さんの車に乗せてもらって、車に乗ったまま洗車するというのを体験したことがあった。これが、だいたい小学校の3年か4年の時かな。
で、乗ったまま洗車しているときに、窓を開けたらずぶ濡れになって服を替えるだろう、あの子なら、窓を開けるな、と思ってそういうシーンになりました。
この映画は雨で始まっているし、水があって、濡れたりする話は合う。海辺が多いし」
質問者
「ペ・ドゥナさんとは『空気人形』以来、二度目だが、印象は変わったか」
是枝監督
「まったく変わりません。彼女とはけっこう仲いいんだよね。これ、自慢なんだけど。彼女はうどんが好きで、さぬき映画祭っていう、本広克行監督がやっている映画祭で「空気人形」を上映してくれるという話があったので、「うどんが食べられるけど来るか」って声をかけたら、ちょうどその時は韓国にいて、すぐに来るって言う返事が来た。で、本広さん(香川県出身)が、美味しいうどん屋さんを連れ歩いてくれた。一日5軒くらい行ったんじゃないかな、ペ・ドゥナは全部食べてましたよ。
この映画は2016年にプロットを書いてたんだけど、最初からペ・ドゥナには声をかけていた。このころは、海外に軸足を移していたときで、撮影に入るとしたら、メインの3人が揃うときだねとなっていた。
ペ・ドゥナはとにかく、ここでどう動けばいいのかが、瞬間的に判断できる人。それは初めての時から全然変わらない。どんなシーンでも、カメラに自分がどんな角度でどんな風に映っているのかが完全にわかっている。一度も「どう映っているか?」を確認しにモニターを見に来たことがない。全部、わかっているんだと思う。ほんとうにすごい人です。」
質問者
「韓国語の原題は「ブローカー」なのに、邦題は「ベイビー・ブローカー」になった理由は?」
是枝監督
「なぜなんでしょうね?、僕にもわからない(配給の辻さんの方を意味ありげに見る)。邦題は配給会社が付けたので。
一番初めはね、「ゆりかご」って題にしようと思っていたの。それから、いろいろ考えて、「ベイビー、ボックス、ブローカー」とBで始まる単語が3つ並ぶのはどうか、と。ボックスというのは、小さな箱に入れられた赤ちゃんが、少し大きな箱である車に乗せられ、最後はもっと大きな箱に受け入れられていくという意味で。でも、最終的に韓国でのタイトルは「ブローカー」になった。ただ、ブローカーというと犯罪映画みたいだし、赤ちゃんの出てくる話なので、ベイビー・ブローカーとした方がわかりやすいってことで、こうなったんですかね?(配給の辻さんの方を見る)」
配給の辻さん
「今の監督のお答えで大正解でございます。」
質問者
「韓国では眉の濃い方がかっこいいという価値観があると聞くが、ウソンの眉が薄いという設定は、その韓国での話を知っていて取り入れたのか?」
是枝監督
「実は、子どもの頃、僕は眉が薄くて、それを母親が気にしてね、眉にメンソレタームを塗ると濃くなるっていうのを信じていて、迷信ですよね、そんなの。でもそういうの信じる人だったんで、よく眉にメンソレータム塗られたんですよ。それが子ども心に残っていて、子どもの眉が濃くないと気にする人というのを考えた。そうしたら、韓国でも男の子は眉が濃い方がいいと言われているというのを聞いて、ちょうどよかったなと思いました」
質問者
「最初のシーンで、ソヨンがウソンを教会のところまで連れて行くのに、ボックスに入れずに地面に置いてしまう。赤ちゃんが死んでしまうかもしれないのに、なぜそうしたのか」
是枝監督
「箱の中に入れずに、外に置かれた赤ちゃんがいたっていうニュースがあったんですよ。箱の中に入れたら音楽が流れて、中から人が出てきて、名前と連絡先を聞く。それを望まない人がいたとしたら、どういう人だろうと言うことを考えた。」
質問者
「今の世の中に絶望的になることがある」
是枝監督
「絶望したら終わり。絶望していないから映画を作っているし、これからも作る。今の日本の映画界に対して、いろいろとアクションをしていることも同じ。変えていかなくてはならない」
あとどういう質問の時だったか忘れましたが、コロナの間、配信でドラマをたくさん見たので、それが今回のキャスティングに役立っていることは、よくわかると思いますと言われていました。
たしかに、ソヨンを演じたイ・ジウンは、それまでに映画の出演歴はなく、歌手としての人気と、最近のドラマ『マイ・ディア・ミスター 私のおじさん』で傑出した演技を見せたことがキャスティングの決め手であることは間違いありません(是枝監督も他のインタビューで、「マイ・ディア・ミスタ−」を見て決めたと言っています)。そして、同じドラマに出ていた。ソン・セビョク、パク・ヘジュンにもオファーしたのだと思います。
イ刑事役のイ・ジュヨンは、映画「なまず」と「野球少女」でおなじみでしたが、ドラマ「梨泰院クラス」にも出ていたそうですし、テホ役の人も、私は知らなかったけど「梨泰院」に出て多様なので、最近の人気ドラマ出演者からのキャスティングはけっこうありそうですね。

私は質問しなかったけど、ティーチイン後、サインをもらうときに並びながら何を話そうか考えていて、短いけれどちゃんとお返事がもらえることをひと言だけ言いました。
大阪アジアン映画祭の仲間も2人来ていて、サイン待ちの間、映画話が盛り上がりました。
二度見て、監督の話も聞けて、とても実りある観賞+ティーチインでした。
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