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2026年08月12日04:53

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原画展を観に、夜行バスで

二年前、とある漫画家の原画展を観るために、夜行バスで東京へ行った。
大阪発新宿行きの夜行バスで、早朝五時ごろ、新宿駅のバスターミナルに降り立った。
三列シートとはいえ、やはり夜行バスはきつい。眠ったような眠っていないような体で、朝の新宿に放り出された感じだった。

原画展の開場は十三時からだったので、目的地である吉祥寺へ向かい、ギャラリー近くの井の頭公園でのんびり時間をつぶすことにした。
そこでまず、ジブリ美術館を見つけた。
思いつきで入れるものかと思ったが、どうも予約制らしく、それも抽選まであるようで、ふらりと立ち寄るには難しい場所らしかった。

池や水鳥を眺めながら、コンビニで買ったコーヒーを飲み、時間つぶし用の本を読んでいた。いま、その本のタイトルがふっと蘇った、凪良ゆう 『私の美しい庭』。
すると隣のほうから、ギターの音色が聞こえてきた。
曲は「カヴァティーナ」。
SAXで何度も吹いたことのある曲なので、すぐに分かった。
それにしても、その場に何ともやさしい空気を作り出していて、感心した。
こういう場所で聴くと、同じ曲でもまた違って聞こえる。

ここでSAXを吹けたら気持ちいいだろうな、とも思った。
けれど園内放送では、他の来園者の迷惑になる大音量の楽器演奏は遠慮してくださいと言っていた。
なるほど、ギターは「いと、らうたし」だが、SAXやトランペットは「わろし」なのだろう。

そのあと吉祥寺の商店街を少し散策し、昼食をとった。
もっとも、武蔵野といっても、国木田独歩の小説の面影が残っているような場所ではまったくなく、すっかり都会だった。

ようやく時間が来て、小さなギャラリーへ向かった。
原画展の作家は、故・佐藤史生。
萩尾望都らと同じく、いわゆる二十四年組に数えられる漫画家で、この原画展の時点ですでに亡くなっていた。
展示されていたのは、『金星樹』や『夢みる惑星』などの原画である。
あの作品世界が、印刷ではなく生の原画として目の前にある。そのこと自体に、強い感動があった。

そこへたどり着くまでの時間やしんどさとは、まるで釣り合わないほどの満足感を得て、帰りは新幹線で大阪へ戻った。
行きは苦行、帰りは報われた巡礼のような一日だった。


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