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2024年01月26日15:59

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韓国映画「人生は、美しい」

 22年に韓国で公開され、日本では昨年11月頃に公開されたと思うが、気がついたら上映期間が終わっていて、見逃した。もう、見られないかとあきらめていたところ、塚口サンサン劇場での再上映があったので、見てきました。以下、内容に触れています。

 公務員のジンボン(リュ・スンニョン)は、病院の待合室でイライラしていた。妻のセヨン(ヨム・ジョンア)の検査結果を聞きに来たのに、肝腎の本人はバスを間違えて、まだチョンノ3街にいる。彼女はソウル劇場の前に立って、ジンボンとの初デートの日を思い出していた。ここから、ミュージカルになり、二人は20代の恋人同士。映画館の前の広場で、座席で、青春の恋を歌い、踊る。この後もずっと随所に歌と踊りが挟まれる楽しい構成だ。

 セヨンの検査結果は「小細胞肺ガンで余命2ヶ月」というショッキングなものだった。ジンボンは、まだ10代の息子と娘には病気のことは告げるなと言い、自分も妻への態度を変えない・・・つまり、縦のものを横にもしない典型的なダメ夫だ。セヨンは自分の楽しみも欲望も後回しにして夫と子どもたちのために尽くしてきたというのに、何も報われない。衝動的に高級なコートやバッグを買いこんでみても心は晴れず、死ぬまでにやっておきたいことをひとつひとつ書き出すうちに、高校時代の初恋の人にどうしても再会したい!という思いが募る。
「もう、私は家を出る。離婚して。財産を折半して、私の分を使い尽くして死ぬから」「離婚したくないなら、私の望みを叶えて。一緒にこの人を探してほしい」。
 こうして二人は、セヨンの初恋の人ジョンウを探すため、セヨンの故郷、木浦に向かうことになる。手がかりは二人並んで写っている古い写真と名前のみ。

 ソウルから南へと向かう途中、東灘(トンタン)にさしかかる。娘のイェジンが生まれた頃、住んでいた地域だ。隣近所との助け合いも残る古い住宅街。ソヨンがつわりに苦しんでいたとき、近所のアジュンマが察して彼女の好物の刺身を食べさせてくれた。「あのおばさん、今も元気かしら?」。今や開発されて高層ビルの建ち並ぶ町並みを見たジンボンの思いは「ああ、あの時、土地を買っておくんだった」。
 木浦に到着し、高校時代の思い出に浸るセヨン。ーセヨンは仲良しのヒョンジョンから、聖歌隊で知り合った男子高生のジョンウを紹介される。セヨンも放課後の塾の帰りが一緒になり、すっかり夢中に。ソウルのラジオの実況番組への参加チケットが当たり、一緒にソウルの街を歩いたこともーしかし、訪ねて行った高校の当直教員(キム・ジョンス)に、卒業生の連絡先は、個人情報の保護のために教えられないとすげなく断られる。地元の写真館の店主は親切に「たしか、釜山の一番大きい造船所に行った」とヒントをくれる。
 実は、釜山は二人の新婚旅行先だった。本当は海外に行きたかったが、当時はIMF通貨危機の真っ最中。海外どころではなく、国内旅行になったのだった。
 釜山の造船所では、ジョンウは清州(チョンジュ)の放送局に転職したと聞かされる。さらに、清州に行って見れば、すでに退職しており、その後の足取りは途切れていた。しかし、彼の名義のSNSを見つけ、海辺の写真が多数載せられていることから、どこかの島に住んでいるのでは?と推理するセヨン。「よせよ、南海には何千もの島があるんだぞ。どうやって探すんだ」。セヨンには心当たりがあった。ジョンウが「いつか、甫吉島(ポギルド)に小さな庵を建てて住みたい」と言っていたことを思いだしたのだ。
 
 こうやって二人が紆余曲折を経て、ジョンウを見つけ出す旅の途中で、二人のたどってきた歴史がミュージカルシーンとなって差し挟まれる。憧れのジョンウは転校し、仲良しのヒョンジョンとも仲違いしてしまった高校時代、その後、セヨンはソウルに出てきていた。民主化デモの盛んだった時代、本屋の店先に立っていたセヨンは、デモの群集に巻き込まれて転び、足に怪我をしてしまう。大学生のジンポンは、警官隊に追われ、狭い露地に入り込んだところで、怪我をしたセヨンに出会う。傷の手当てをしてやっているところに、警察もその露地に入ってきた。そこで、セヨンは機転を利かせ、いきなりジンボンを平手打ち。二人は恋人同士で、痴話喧嘩の最中という芝居を打ったおかげで、デモ学生ではなさそうだと、警官たちは去って行く。ほっとした二人。彼はさっそく彼女にデートを申し込む。
 その後、二人の交際は続くが、ジンボンの度重なる公務員試験の不合格、そして兵役による別離と、さまざまな試練を乗り越えてきた。
 
 甫吉島の家を探し当てた二人を迎えたのはジョンウの妹(キム・ソニョン)だった。なんと、数年前にジョンウは海難事故で亡くなっていた。生前、ジョンウからいろいろと話を聞いていたという妹の話から、過去のいくつもの誤解が解けたのだった。
 彼らが自宅を離れている間、子どもたちにも事件が起きていた。娘のイェジンは、友だちと好きなアーティストのライブに出かけていた。そのライブの後半、出てきたバンドのボーカルは、なんと自分の兄。兄のソジンは、両親に隠れてバンド活動をしていたのだ。しかし、彼は舞台の上で突然倒れ、病院に搬送されてしまう。原因は、母に処方された抗ガン薬を誤って飲んでしまったためだった。二人は母がガン闘病中だということを知ってしまう。
 旅から戻り、しばらくしたある日、ジンボンとセヨンはあるパーティー会場にいた。純白のドレスをまとい、美容師にメイクを施されるセヨン。会場には、親戚、友人、ジンボンの職場の同僚など大勢の人たちが集まっている。これはジンボンが企画したセヨンのためのパーティーだった。来客の中には、東灘でセヨンがお世話になったおばちゃんや、移住先のアメリカから駆けつけた元親友のヒョンジョン(ヨム・ヘラン)もいた。多くの人々から祝福の言葉を掛けられ、死ぬまでにやりたいことの最後のひとつ「愛される」を実現したと言うセヨン。パーティーの参加者全員が会場の外に出て星空のもと、ダンスを踊る。

 そこから時は流れて、シングルファーザーとなったジンボンの日常。かつてセヨンがやっていたのと同じような家事に追われる日々。セヨンは、天国から見ていてくれるかな?そこで冒頭のソウル劇場の外観が映し出される。上映中の映画のポスターは「ゴースト ニューヨークの幻」二人が初めてのデートで見た映画だ。

 ミュージカルシーンでは、その場面にマッチしたたくさんの楽曲が流れる。これがすべて韓国で実際に1970年から2000年にヒットした歌謡曲だったらしい。韓国のポピュラー音楽に詳しい古家正亨さんがパンフレットに各曲を4ページにわたって詳しく解説。最近はネットの公式サイト以上の情報がほとんどない手抜きパンフも多い中、これはパンフを買って正解だった。過去のヒット曲を聴けば、その曲の流行った時代も思い出す。ミュージカル仕立てにしたのは、その効果を狙ったのだろうなあと思う。出てくる曲をひとつも知らない私にも面白かったけど、韓国の観客にはその何倍も面白かっただろうなあ。

 主役の二人、ヨム・ジョンアとリュ・スンニョンはさすがベテラン俳優、20代から4-50代となった現代までを見事に演じ分ける。50代のリュ・スンニョンが20代の大学生や30代の新婚時代を演じるのはほとんどコメディの世界だが、ミュージカルシーンに乗ってしまえばそれもありになる。ヨム・ジョンアはちょっとおっちょこちょいのところもある可愛い妻。このままもっと年齢を重ねても可愛いおばあちゃん役などで活躍しそうだ。
このヨム・ジョンアの高校生時代を演じたのがパク・セワン。すらりとした容姿はヨム・ジョンアにそっくり。そして、「宝くじの不時着」でも北朝鮮兵士として好演していた。
 高校時代のセヨンの親友ヒョンジョンを演じたシム・ダルギ。「なまず」「八番目の男」などにも出ていた彼女の主演作「ローリング・ガール」がもうすぐ公開になるようだ。このヒョンジョンが大人になった時を演じたのがヨム・ヘラン。彼女が出てきたときには思わず泣いてしまった。高校時代に仲違いしてしまい、以来、音信不通だったヒョンジョンがパーティーにやってきたというだけでも泣けるのに、そのヒョンジョンに高校時代の面影があったのだ。シム・ダルギは顎にホクロがあるので、ヨム・ヘランはメークでほくろをつけていたらしい。
 木浦の高校の先生キム・ジョンス、初恋の人ジョンウの妹のキム・スニョン、ジンボンの上司のコ・チャンソクといったよく見る名脇役たちが特別出演しているのも楽しかった。

 監督は、「国家が破産する日」のチェ・グッキ。硬派の韓国現代史モノとは打って変わった作品だが、時代を語るキーワードとしてデモやIMF危機をさり気なく入れているところはさすがです。この映画の撮影のときはまだ営業していたソウル劇場は、コロナによる営業不振を受けて、昨年閉館。もう建物も取り壊されてしまったそうです。チョンノの映画街も寂しくなりました。
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