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2021年08月09日14:12

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「よい研究者はよい教育者、しかしその逆は真ではない」『研究者という職業』林周二

 東大名誉教授で流通論の大家が書いた研究者の心得のような本である。以下、気になった個所のメモ書きを記す。


●まずは「教科書」を執筆せよ!
若いうちにその分野の「概論」的な本を書いて世に問うと良い。これは駆け出しゆえにきわめて欠点の多い書物として誕生するだろうが恐れる必要はない。筆を進めることで、否応なく自らが進むべき研究分野の「全体像を学ばされる」ことになるからである。若いうちから専門的な「タコつぼ」に嵌るリスクを避ける効果があるのだ。


●もっと他流試合をせよ!
「どうも、現在僕の勤めている大学などで、昨今の研究者の卵の大学院生諸君らを見ていると、自分の所属キャンパス内に閉じこもり、他大学や他分野の研究機関などへ、自ら進んで他流試合合的な勉強活動のために、積極的に行こうとするふうがないようが、内だけに閉じこもらず外部へも大いに進出し、自分の学問の幅を学際的に拡げ、広い実力を身につけ、若いうちに幅と深さとの両面で、研究者としての磨きをかけて欲しいと思う次第である」


●研究者の心得8カ条
�[�行りのテーマに流されるな
研究者たろうとする者は、世間に追随したりせず、自分独自のユニークな研究テーマを持つべきだ。流行りのテーマの知りだけを追っかけてはいけない。
自分の能力や得手・不得手の点をよく自覚し、それに見合った個性的な研究テーマを択ぶべきだ。

�∨楴租�なテーマに取り組め
研究上これこそは重要だと考えられるテーマに取り組むこと。
何が重要で本質的か、何が瑣末で末梢的かを見極めることは、研究者の眼力に関わる最も大切なことである。

��周到な計画を立てよ
研究者たる者は、つねに開拓者精神でその研究活動に当たること。
周到な計画性をもってその仕事に取り組み、いったん作業に入ったからには必ず成功する覚悟をもつこと。

�だい北鯲�つことを研究せよ
研究者は、じっさいに世の役に立つことを、自己の研究の趣旨とすること。
空論のための空論を徒に弄ばない。

�コ萋阿良饌罎蝋�く持て
狭い日本より、広い全世界で、自分の学問や研究仕事が認められるうように努力すること。
研究者は活動の舞台をせまく出なく、大きく広く取るようにすること。

�νイ譴浸佞鮖�て
研究者を志す人は、なるべき優れた立派な師を頼って、その下に就くよう努めること。

��他部門との積極交流に努めよ
これからの学術多様化時代に研究者が生きていくには、狭いタコツボ的な道場(=研究室)に閉じこもったりせず、武者修行的にいろいろな同上の門をたたき、他流試合つまり他部門や隣接部門研究者たちとの積極交流に努めること。

�┿詭邀搬腓砲聾Φ羇超�の転換をはかれ
研究者にとって研究の職場を5年ないし10年ごとに変えることは、研究環境の転換、したがって研究そのものの視野拡大に大きく役立つと考えること。


●優れた業績をあげるには
思うに僕が内外の学者、研究者たちの書いた文献を下敷きにしたのではなく、貧しい思索の結果とはいえ、つねに僕が自分自身で企業マーケティングの現場へ飛び込み、また政府政策の現場と結んで、そこで生きた経験を纏めることに努めようとしたことによる。
⇒アクション・リサーチの必要性


●生涯現役
・若いころ時代からの生涯計画的な心がけのようなものをもて
・研究生活を、自主的に自分の躰で楽しんだ経験を、若い間にもってきたかどうかに掛っている。
⇒実証や統計分析にこだわれ
・若いうちから研究の問題意識を、自分自身の内発的な興味を燃やすことで喚起する習慣を養い、それへ向けて自己訓練を日夜積むよう心掛けてほしいと思う。


●一流たちとの競争は避けよ
僕はビジネス諸分野を中心に、なるべく他の研究者たちの手がけたことのない(かつ、それを研究することの必要性に他の研究者たちがあまり気づかない)諸問題を探し出し、それについて統計調査的な研究を楽しみつつ試みることが、他人(とくに一流の研究者たち)と正面から競争したりすることの苦手な二流研究者たる僕には、自己のそれなりの存在理由になると考え、それを実行してきた。


●基礎は学んでおく
ただ何をするにしても、それに必要な基礎的な勉強だけは、大学や大学院時代にしっかり身につけておくことが大切である。基礎的な実力なしに、ただ風変わりな妄想だけをもつようでは、研究者として全くモノにならない。


●流行に流されるな
・若い修行の時代から研究のテーマを自分自身の手で掘り起こし、研究生活を楽しむ体験をもったタイプの研究者たちは、高齢に達してからも概して何がしかの研究業績を出し続けている。
・大事なことは、彼が研究生活を、自主的に自分の躰で楽しんだ経験を、若いあいだにもってきたかどうかに掛っている。
・経済・経営分野では、歴史・実証的な研究、統計を使った研究をやっておくと、高齢になってからも持続しやすい?
・ともかく若いうちから研究の問題意識を、自分自身の内発的な興味を燃やすことで喚起する習慣を養い、それへ向けて自己訓練を日夜積むよう心掛けてほしいと願う。


●よい研究者はよい教育者、しかしその逆は真ではない
・専門諸学の教師は、学生や院生たちに対し、「学術ないし科学の先端的な部分を、分かりやすく教育伝授する義務がある」と考えられている
・教師を立ち往生させるような鋭い質問とか議論を持ってくる学生たちが必要で、ただ無反応に教師の講義を受け身で聴講するだけの学生群は、教師にとって、研究上の発想の厳正としてはほとんど役に立たない。
・教える側としては、学生たちが質問をぶつけてくるような講義のしかたを工夫する必要がある。



 完全に余談だが、文系分野だと経済学、マーケティング、会計の順番で研究者の質が落ちていく。言い換えれば、経済学が一番競争が激しいので能力に自信がなければ避けた方がよいという言葉は事実だと思う。いやまあ、好きだから自分の専門にしているのだけれどマイナージャンルの宿命だろうか。
 他方で、社会への門戸という意味では順番が逆になる点は面白いところだろうか。書店へ行けば分かるかと思う。学問の世界はかくも独特なのである。
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