●夢を見る。自分は何か、誰かから逃げている。時代がかった西洋風のホテルの廊下っぽい通路を通り抜けて外に出ると、一面の青空の空間である。メビウスの輪か八の字のように屈曲した巨大な都市が宙に浮かんでいる。ジャンプするとそのまま一定速度で空を飛んで行き、空中の街の高層ビルに入る。
20世紀初頭のレトロビルのようなそこには知己の兄妹が居る。十歳前後の少年と少女だが、一流の「現象技術者」である。自分は彼らに追っ手をまくための「街の一角を作る」よう願いに来たのである。兄は自分の話を聞いて、何やら手元と机で作業をしながら講釈を垂れる。
たとえば、と前措いて彼は「大人たちは雲の描き方を知らない」と言う。「大人は輪郭を固定して描く。しかしそれでは雲の形たり得ない。雲はまず、最初の雲が模倣子を使って自身とわずかに異なる雲を生む。生まれた雲も同様にする」その連鎖が総体としての雲の形を成すのだと言う。
妹が「蒸気も煙も同じだ」と言い、窓の外を示す。そこには煉瓦と鉄骨とダクトパイプで構成された、頭でっかちでスチームパンク的な巨大構造物がある。妹に「ほらあの煙突だ」と示される、その構造物の各所ダクトからもうもうと煙や蒸気が立ち上り、空に放たれていく。どうやらそれと同じ繰り返しの理屈で、追っ手を幻惑する為の通路・街角を作っているらしい。そこで目が覚める。
●ビックリするようなスジは無いが通俗的な定番サスペンスとして楽しかった。頭の中で感じてれば詳細に設定しなくても「いい感じのスチームパンクデザイン」ってなるので便利だとは思う。冒頭の古臭いホテルの廊下は、バートン・フィンクやパプリカのシーンがベースにあるような気がする。
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