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2026年05月20日06:18

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具体名を伏せて、構造的に批判する

この作品と、この人物に対する怒りと失望は大きい。
だが、ネガティブに批評するための具体名は伏せておこうと思う。
そのほうが、自分の文章の品位を保てる気がするからだ。

かつて、ある異世界転生もの(作品名・作者名は伏す)を読み始めた。
そこには、地の文で「世界最高の」と形容された登場人物が七人出てくる。
世界最高の政治家、世界最高の実業家、世界最高のマジシャン、世界最高の剣豪、世界最高の発明家、世界最高の医者、そして世界最高のジャーナリスト。
彼らが目覚めると、そこは獣人やエルフが暮らし、ドラゴンが空を飛ぶ異世界だった、という設定である。

ところが読み進めると、この異世界の外道の敵に対し、抑止力のためか何か知らないが、世界最高の政治家の要請で、世界最高の発明家が核兵器とミサイルをこの世界で作り、敵国の都市を地図から消滅させる。
そこまで読んで、私は読むのをやめた。

ここで引っかかったのは、単に「核兵器を出した」ことではない。
作者が地の文で彼らを「世界最高の」と評価していることの意味である。

もちろん、「世界最高の」が純粋に技能だけを指す、という読み方もあるだろう。
しかし、政治家、医者、ジャーナリストのような職業にこの形容を冠するなら、そこには職業的技能だけでなく、道徳的・倫理的判断も当然含まれている、と私は思う。そうでなければ「世界最高の政治家」「世界最高の医者」「世界最高のジャーナリスト」という言い方は、かなり空虚になる。

本当に「世界最高の政治家」なら、敵がどれほど外道でも、軍事的均衡のために核ミサイルをぶっ放すことを、そう簡単には選ばないだろう。
本当に「世界最高の発明家」なら、自分の発明品が社会に与える影響を考えず、頼まれたからといって核兵器をミサイルに載せて発射させたりはしないだろう。

要するに作者の「世界最高の」という形容には、技術的能力だけを誇ればよいという、根本的な誤解があるように思える。
私が失望したのはそこだ。

しかも、この暴挙のあとでも、他の「世界最高の……」のメンバーはほとんど何も言わない。
とりわけ「世界最高のジャーナリスト」まで沈黙しているのは、私にはかなりきつかった。

私が普通に考えるなら、せめてこういう反応があってよい。
世界最高の実業家なら、「やがて商売相手になるはずの庶民を殺すとは何事か。商売は信用で成り立つ。その信用の根本破壊ではないか」と言うだろう。
世界最高の医者なら、何も言わず、緊急医療班を編成して現地へ向かうだろう。
世界最高のジャーナリストなら、仲間内の論理に回収されず、批判的に報道する機関を立ち上げるくらいのことはしてほしい。

そして、ここで私が連想したのは、架空の話だけではない。
現実にも、「ジャーナリスト」として高く評価されながら、重大な性加害の問題に対して、あまりにも鈍い言い訳をし、自分がその構造の中で果たした役割への反省をほとんど示さなかった人物がいる。
これも具体名は伏せる。
だが、私が失望した理由は同じだ。
職業的な有能さだけで「一流」や「最高」を名乗れるかのような態度に、私は強い違和感を覚えるのである。

話を戻して、この作品から私が学んだのは、三人称の地の文で過大な形容や価値語を語ることの危うさである。登場人物の台詞としてなら、その人物の偏見や誤認として読める。だが、地の文で「世界最高の」「美しい」「愚か」と断定されると、それはほとんど作者公認の評価として読まれてしまう。しかも、その評価と実際の行動が噛み合っていないとき、作品は人物を描いているのではなく、作者の願望を押しつけているように見えてしまう。そういう意味で、この作品は皮肉にも、良い反面教師だった。

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