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2026年05月18日00:46

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記憶にまつわる三題話

古い順に挙げていく。

まずは『謎の円盤UFO』というテレビドラマ。
これは、『サンダーバード』『キャプテン・スカーレット』などの人形特撮(スーパーマリオネーション)で有名なセンチュリー21プロダクションが、人間の役者を使って制作した特撮ドラマである。

アメリカ空軍大佐エド・ストレイカーが総司令で、なぜかロンドン郊外の映画会社を隠れ蓑に、地下にはSHADO(Supreme Headquarters of Alien Defence Organisation=対エイリアン地球防衛秘密組織)の司令部が置かれている。
月には迎撃機とその基地であるムーンベース、衛星軌道には早期警戒AIステーションのシド、海には大気圏内迎撃用のスカイワンとその母艦である潜水艦スカイダイバーなどを運用し、UFOを撃退するための地球側の奮闘を描いたSFドラマだ。

この組織が「秘密組織」である理由は、人類が初めて認知した異星人が、人類の健康な臓器を奪い取るという邪悪な現実に、人類が耐えられるかという問題があるからだ。
ただし、秘密を守るといっても、UFOの被害に遭った人々に対しては、それは簡単なことではない。
そこで登場するのが、Dr.ジャクソンという、ミスター・スポック以上に異形に見える専属の医学顧問である。彼は「記憶喪失薬」を注射して、一連の秘密に関わる記憶を拭い去る。
これが可能だからこそ、秘密を知った一般人を消去する、つまり殺害したり精神施設に隔離したりするという、正義の組織らしからぬ「外道」な行為を避けられているのだ、と当時小学生から中学生くらいだった私は思っていた。

次は、北条司『キャッツ・アイ』の最終回。
刑事の内海俊夫は、いつもすんでのところで怪盗キャッツ・アイを取り逃がす。
だが、キャッツ・アイの正体は三人姉妹で、その一人、来生瞳は俊夫の恋人でもあった。

怪盗とはいえ、彼女たちが狙うのは、いわくつきの美術品ばかりで、一般人に身体的にも経済的にも害を与える存在ではない。
それでも、恋人である俊夫を出し抜き、欺き続けることの負荷は大きかったのだろうか。
最終回で瞳は記憶を失う。
彼女を見つけた俊夫は、一から彼女との関係を深めていく。そんな場面で物語は閉じられる。

最後は、リアルに自分の身に起こったこと。
十数年前、末期癌でホスピスに入った私の母の関連でのことだ。
私の職場はその病院まで歩いて行ける場所にあったので、当時は毎日、母の様子を見に行っていた。

ある朝、目覚めたら昨日の記憶がなかった。
どうやら電車ではなくタクシーで帰宅したらしいが、通勤カバンもない。
妻によると、私はよく知っているはずの母の病室番号を何度も電話で尋ねてきたり、タクシーで帰宅した後も様子が変だったりしたらしい。
妻に連れられて深夜受付の病院へ行き、MRIまで撮ったようだが、それもまったく記憶にない。
薄暗い廊下を歩いて移動した、ぼんやりとした感覚だけが残っている。

次の朝になっても、昨日の記憶はない。
だが、一昨日までの記憶はある。
職場で、昨日の私の行動に変なところがなかったか尋ねても、「普通だった」と言われた。
その日、生徒の委員会を招集して作業をしてもらったらしいが、その時の対応もちゃんとしていたという。

妻によると、病院ではストレスによる一過性の健忘症という診断が出たそうだ。
でも、「健忘症」より「記憶喪失」のほうが、少しかっこよさそうなので、自分では「一日記憶喪失」と呼んでいる。

SHADOの記憶喪失薬も、一見すると倫理的な処置に見える。
だが、その失われた記憶の中には、その人の人生にとって大事な一コマがあったかもしれない。
命を奪うよりはましだとしても、やはり外道な処置には違いない。

『キャッツ・アイ』のほうは、俊夫と結ばれる瞳という物語から「苦いもの」を消し去るために、作者の北条司が考え抜いたシチュエーションなのだろう。
それでも、苦みそのものは消えずに残っている。

そして、自分自身の「一日記憶喪失」を経験して以来、
記憶とは、いったい人格のどこに属しているものなのだろう、と時々考えるようになった。
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