YouTubeで、どうにも許せない動画の型が二つある。
一つは、ランキング形式を装いながら、3位と2位だけ紹介して、1位は「ダブルタップで」「コメント欄で」と言って終わる動画である。
こちらはPCで見ているのだから、ダブルタップなどできない。
ではコメント欄に答えがあるのかというと、たいてい何も書いていない。
よく見れば、3位や2位の内容自体もかなり怪しい。
要するに、閲覧回数や滞在時間を稼ぐためだけの、ほとんど詐欺のような動画である。
とくに縦長動画に多い印象だが、なぜこういうものをYouTube運営は排除できないのだろう。
もう一つは、もっと質が悪い。
いわば「高齢者ざまぁ」ならぬ、「高齢者の逆襲でスカッとする」型の動画である。
だいたい筋書きは決まっている。
高齢の母親が息子夫婦の家に行くと邪険に扱われる。
あるいは孫の送迎や家事を押しつけられ、感謝もされずに搾取される。
そこで業を煮やした老母、あるいは老父が、息子夫婦への援助を一切打ち切る。
しかもその援助額は、住宅ローンの肩代わり、生活費、学費など、金額つきで細かく示される。
さらに保証人からも抜ける。
すると何日後かに息子夫婦は狼狽し、最後には土下座までしてくる。
しかし親の側は、「私を“外の人”“他人”と言ったのはあなたたちでしょう」と突き放し、めでたく高齢者は尊厳を取り戻しました、という形で締めくくられる。
だが、これを少し引いて見れば、かなり異様な話である。
まず、若夫婦に収入に見合わない生活をさせるほどの援助を、何年も続けてきたのは誰なのか。
その時点で、親の側も十分に思慮が浅い。
というより、場合によっては金銭によって子世帯を支配しているようにすら見える。
それだけの構造を長年つくっておきながら、若夫婦に感謝の色が見えなくなった途端、ある日突然、援助も住宅支援も全部打ち切って放り出す。
過保護から無視への、極端な相転移である。
しかも、こういう動画ではしばしば「大学の学費○○円まで出してやった」といった明細が誇らしげに並ぶ。
だが、それは援助なのか。
それとも、あとで服従を要求するための貸しなのか。
もし後者なら、親子関係というより、ほとんど支配の道具である。
さらに嫌なのは、こうした動画が暗に示している価値観である。
つまり、十分な援助や財産を持ち、それを切ることで相手に打撃を与えられる高齢者だけが、「ざまぁ」と言ったり「尊厳を守った」と言ったりする資格を持つ、という構図になっている。
逆に言えば、そうした資産も援助能力も持たない多くの高齢者は、その種の“勝利”に参加する資格すらないことになる。
この構図は、他人を裁いているようでいて、実は高齢者自身にも跳ね返ってくる。
本来、賢明な父母なら、若い夫婦には自分たちの収入と力に見合った生活を築きなさい、と教えるはずである。
必要があれば助けても、依存の構造までは作らない。
ところが、こうした動画では、その当たり前の節度が見事なまでに反転している。
いったい何に視聴者は「スカッと」させられているのだろう。
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