これは名作児童文学作品「オズの魔法使い」の外伝として作られ、20年以上も愛され続けている名作ミュージカル「ウィキッド」を、「イン・ザ・ハイツ」のジョン・M・チュウが監督して映画化したもの。
映画は161分もあるが、これが前編で、後編「ウィキッド フォー・グッド」は後日公開となる。
出演は、「ハリエット」のシンシア・エリヴォ、シンガーソングライターのアリアナ・グランデで、本作は事実上、彼女ら2人のW主演だ。
これは、後日、“悪い魔女”、“善い魔女”と語られるふたりの切ない物語――魔法と幻想の国オズにある「シズ大学」。
その生まれと、呪われた緑色の肌から、聡明でありながら家族や周囲から疎まれ孤独なエルファバと、誰よりも愛され特別であることを望む皆の人気者グリンダは、大学の寮で偶然ルームメイトとなる。
学内の人気を集めながらも、自身がまるで敵わない天性の魔法の才能を持つエルファバに嫉妬するグリンダ……ふたりは反発し合っていたが、やがて、互いの本当の姿を知り、友情を築いて行くが……
これは、哀しい物語と思った――映画は、「オズの魔法使い」の終わりに始まる。(ドロシーと仲間たちの姿も遠望出来る)悪い「西の魔女」が死んだ、と町中で人々がお祭り騒ぎをしている……そこから、物語は時間を遡り、シズ大学入学が決まって希望に胸を膨らませるエルファバが登場、そして彼女は幻視する……何時とも判らない将来、町の人々が自分の名前を口にし、喜び溢れているシーンを……エルファバは、「自分は人々を笑顔にする魔法使いになる」と思う……だが、実は人々は彼女の死を喜んでいるのだ、と言う事実と、それに気づかないエルファバに涙してしまったのだ。
その後の展開も、エルファバを待つ暗雲を示すようなものだ――グリンダが人気者となる一方で、孤立するエルファバ……彼女の理解者でもあったヤギの教授は、「ヤギだから」と言う理由で拘束されてしまう……魔法の力により、人と動物が共に暮らしていたオズは、他者との共存を止め、“敵”を作って人の結束を高める社会に変貌を遂げようとしており、エルファバは、その“敵”となるべく選ばれたのだ……
こうした描写を含め、これはかなり社会性の高い映画と思う。動物たちの排除は、移民排斥にも繋がり、図書室での書籍のぞんざいな扱い――ここに嫌悪感を抱く人も少なくないのだが――は、近年蔓延る「反知性主義」のメタファーだろうか?
勿論、そんな難しい事を考えずとも、本作は十分に楽しめると思う。基本は、学園モノの青春ドラマ――その割に演者が年嵩なのが気になるが――だし、映画は、とても豪華なミュージカルだ。如何にもジョン・M・チョウらしい、豪華かつ大規模な舞台に、映画ならではのCGやカメラワークの自在さを加えて見せる、ミュージカルシーンはとんでもなく贅沢であり、圧倒される。
そんなパフォーマンスと物語が重なり合って盛り上げるクライマックス、「重力から解き放たれて」は正に圧巻……エルファバが遂に力を解き放ち、自由を得る開放感があると共に、哀しいもの――これで、エルファバは遂に「西の魔女」となるのだから……
前編となる本作が物語るのはここまでだが、来年公開と言われる後編で描かれるオズと2人の魔女の物語には期待しかない。
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