mixiユーザー(id:124952)

2024年12月07日08:08

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「正体」感想

 これは、染井為人による同題小説を「ヴィレッジ」の藤井道人監督、横浜流星主演で映画化したもの。
 共演は「ハケンアニメ!」の吉岡里帆、「Gメン」の森本慎太郎、「ゴールデンカムイ」の山田杏奈、「闇金ウシジマくん」の山田孝之。

 子供を含む一家3人の殺人事件の犯人として死刑判決を受けた鏑木慶一が脱走。
 鏑木事件の担当刑事・又貫は、逃亡する鏑木を追うが、姿や顔を変え、大阪、東京と各地を転々とする鏑木を捕らえる事が出来ない。
 やがて浮かび上がる新たな容疑者に、又貫は鏑木の冤罪を懸念し始めるが……

 世間的には評価の高い藤井道人監督だが、自分はあまり評価していない(特に「ヴィレッジ」は酷かった)――本作も、冤罪事件と言うタイムリーなテーマと、豪華なキャストに目を奪われ、シリアスな語り口に引き込まれたが、徐々に露呈するリアリティを欠いた描写に、やはり藤井道人映画だ、と失望させられた。
 先日、無罪が確定した袴田巌氏の冤罪事件が示しているように、日本の検察と司法の制度には組織的な問題が時に現れ、冤罪を生むのだが、それは、末端から上層までの真摯な、だが誤った努力の結果なのだ。だからこそ、それを改めるには時間がかかる――本作は、それを警察幹部個人の短絡的な判断の結果とし、死刑囚本人が、その真実に辿り着く事で、冤罪を明かし、無罪を勝ち取ってしまう――それも、1年足らずで……この、日本ではありえないような展開には脱力するし、鏑木に出会う人々が彼を安易に信じると言うのも気持ち悪い。また、無罪判決に法廷が拍手に包まれる、と言う安易な演出には本当に辟易とさせられる。
 リアルにやるなら、組織的な抵抗に出会って再審までに20年、裁判も最高裁までもつれ込んで10年かかる、となる所だろうし、そうなってこそ「被告の人生を取り戻す」と言う言葉に重みが出るはずで、そうした描写こそが日本の冤罪事件の問題を示すものだと思う。

 主演の横浜流星の変化ぶりには感心したし、身体を張ったアクションも頑張っていると思う。その一方で、この映画、俳優を魅力的に撮ろうとしていないのがひっかかった……まぁ、それがリアルだ、としたいのかもしれないが、精彩を欠く吉岡里帆、まるで中年女性のように撮られた山田杏奈はさすがに気の毒に思えた。

 確かに、本作も娯楽映画であり、現実離れした描写も演出だ、と言うのはある程度は理解する……だが、観客にカタルシスを与える為なら何をやってもいい、と言う事はないだろうし、本作はさすがに公開時期も悪かった。
 現在の内容では、現実の冤罪事件に立脚しない、単なる“感動ポルノ”と言われても仕方のないように思える。
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