これは、'60年代に生まれた伝説的モーターサイクルクラブの軌跡を描くドラマ。監督は「MUD マッド」のジェフ・ニコルズ。
出演は、「エルヴィス」のオースティン・バトラー、「ヴェノム」シリーズのトム・ハーディ、「最後の決闘裁判」のジョディ・カマー。
映画は、写真家のダニーが、モーターサイクルクラブ“ヴァンダルズ”の元メンバーの妻、キャシーを取材する事に始まる――1965年、キャシーは“ヴァンダルズ”の集うバーに行き、そこでベニーと出会って恋に落ち、5週間で結婚する。
ベニーは、“ヴァンダルズ”のリーダーであるジョニーの側近で、ベニーもまたジョニーと“ヴァンダルズ”を愛していたが、群れる事には馴染めないでいた。
やがて、“ヴァンダルズ”は勢力を拡大、各地に支部も出来、大きな力を持つようになって行く……だが、その中で、旧来の幹部と新入りのメンバーとの間に意識の差が生まれ、それはジョニーのカリスマ性を以てしても埋める事が出来ないほどに拡大して行き……
これは、'60〜'70年代にかけて実在したモーターサイクルクラブ“アウトローズ”を取材して刊行されたダニー・ライオンの写真集「ザ・バイクライダーズ」にインスパイアされて作られたもの。
“アウトローズ”は'70年代には犯罪組織化してしまったせいか、クラブ名は“ヴァンダルズ”に変えられているが、映画は可能な限り当時を再現したものとなっており、劇中のキャシーの台詞の多くは、取材時に実際に録音された言葉に基づくものとなっているのだと言う。
映画は、あるモーターサイクルクラブが生まれ、そして巨大になるにつれて変貌していく中で生まれるドラマを描く――それは、街のはみ出し者らが作ったチームが、やがて巨大な組織となるのを描くと言うギャングものによくある感じのパターンではあるが、異色なのは、これがほぼキャシーの語りだと言うこと。
これは、オートバイに夢中な若者に恋した女性が、オートバイと“ヴァンダルズ”から、最終的には恋人を引き剥がして我が物とする、一種の略奪愛的なラブストーリーになっているのだ。
キャシーを演じたジョディ・カマー、そして、そんなキャシーが恋するベニーを、まるでジェームス・ディーンのように演じてみせたオースティン・バトラーも魅力的だが、謂わばキャシーの恋敵となってベニーを惹きつけるジョニーを、トム・ハーディが、いささか古びてはいるが男臭さ全開で演じていて、これが何ともいい――そして、ジョニーが作った“ヴァンダルズ”が、ベトナム戦後の荒廃するアメリカで変容して行く姿に、古き良きアメリカらしさが若者らから失われて行く悲哀を滲ませ、最後にはジョニーをそこに殉じさせるのだ。
映画は、真っ当な職と家庭を得たベニーと、彼の過去をダニーに語るキャシーの姿で締めくくられる――だが、今でもベニーの頭の中にはオートバイの爆音が響いているのだ……そんな失われた情熱と若さを、かつてのアメリカに重ね、ノスタルジックに描くのには心揺さぶられる。
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