ようやく見に行きました、韓国映画「パミョ」。墓を破壊するとは物騒な題名です。
代々、跡継ぎの男子が奇病に冒されるというのでアメリカまで呼び出されたムーダンのファリムとその弟子のポンギル。アメリカに移住するような一家でも、いざという時はムーダンを呼ぶっていうのに、けっこう驚いてしまうのですが、まあ、そういうお話ですから。
そして、祖先の墓に問題があるから、土葬の墓を掘り起こして、移葬すべきということになり、風水師のパク・サンドク、葬儀屋のヨングンも加わり、その大事業を行うことに。
それぞれ役割が違うのですよね、霊を鎮めるための儀式を行うムーダンと、お墓の場所や方角の吉凶を見定める風水師と、それからどちらかというと葬儀という実務的な面を取り扱う葬儀屋と。葬儀屋は死者がどんな宗教の信者だろうが葬儀そのものを執り行うというマルチ対応なのに対して、風水、巫俗となると、これは民間信仰というか、迷信と紙一重の世界。この独得な信仰の世界をどう理解したらいいんだ?と思ったら、公式サイトに「キーワード解説」というのを崔盛旭さんが書かれていますね。まあ、見る前に読む人は少ないと思いますが。
https://pamyo-movie.jp/kaisetsu.html
映画では、植民地時代の朝鮮総督府の別名キツネと呼ばれる人物、村山ジュンジというのが出てきたり、さらにはもっと昔の武将みたいのまで出てきたり、どんどん荒唐無稽な方向に行きますが、途中から、その荒唐無稽さが予測不能な楽しさに変わっていきました。
そうして、一連のこういう事件は、やはり21世紀の韓国では「野生の熊の仕業」という解釈となり、一般の人々にとっては、「霊の祟りだ」なんていう話にはなっていないというところも皮肉で、しゃれてます。で、散々な日々の果てには、娘の晴れやかな結婚式という大団円が待っていて、チェ・ミンシク父さん、お疲れさまって感じでした。
ところで、この村山ジュンジという人物の名前が出た途端、「PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ」を見た人たちには、ソル・ギョングの演じた朝鮮総督府の軍人の役名がやはり村山淳次であったことを思いだした人が多かったようです。私もそうでした。
なんで、2作も続いて、日本人の悪役の名が村山ジュンジなのか?きっと朝鮮総督府にそんな名前の人がいたに違いない、と思って調べ始めたら、村山智順という宗教学者・民俗学者がいて、朝鮮の風水、儀礼、信仰などを調べていたというのがわかりました。
彼の著作はほとんど韓国語に翻訳されており、中でも「朝鮮の風水」は、風水ブームに乗ってベストセラーになったほど。つまり、研究者だけでなく、一般の人でも風水に関心のある人には知られた名前だったようです。
ただ、当時の日本人の研究者の例に漏れず、村山の朝鮮研究は、植民地政府の命によって、日本に利するような目的で行われたものと批判され、否定されてきたそうです。
また、村山の研究が、陰謀論にも利用されてしまったということもあり、韓国では「悪」のイメージが強いんでしょう。それで、悪役の名前に村山が使われたのでは?(パンフは買わなかったのですが、崔盛旭さんはそのあたりのこともパンフに詳しく書かれているようです)。
村山智順の研究自体には、今も価値があるのではないかと思います。
雑誌「自然と文化」に「村山智淳の見た朝鮮民俗」という特集号があり、日本財団図書館(電子図書館)で公開されています。そこには村山所蔵の写真が多数掲載されており、1920年代の朝鮮の姿がありありと映し出されています。「死と儀礼」、「生活の中の鬼神」、「カミと祈り」という目次だけ見ても、この映画の世界を理解する手がかりになりそう。
https://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2000/00852/mokuji.htm
オカルトっぽいテーマはさておき、チェ・ミンシク、ユ・ヘジン、キム・ゴウンの共演というところに惹かれて見にいったのですが、さすが、みなさん期待を裏切らぬ演技を見せてくれました。4人目のポンギル役のイ・ドヒョンは今回の映画で初めて見ましたが、なかなかよかったです。
脇役では、キム・ソニョンというベテランが先輩ムーダン役で出てきたり、依頼人の叔母にあたる故人の姉にはパク・チョンジャという超ベテランが出てきたり。パク・チョンジャは、「結界の男」という映画の中でムーダンを演じていました。武将の霊はキム・ミンジュンだったらしいのですが、全くわかりませんでしたね。だって鎧兜を身につけていて顔なんて見えないのですから。
まあ、こういう映画が1000万人以上の観客を動員する韓国、不思議ですけど、それだけよくできた映画だったということなのでしょうね。
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