今年2本目の映画は韓国ノワール「ただ悪より救いたまえ」。
大好きなファン・ジョンミンの主演で是非見たいと思いつつ、血なまぐさそうな内容にためらっていた。でも、マイミクさんが見に行ったのを知り、やっぱりすごく見たくなって。
元工作員の暗殺者インナム(ファン・ジョンミン)は、最後のミッションとして東京のヤクザ、在日のコレエダを殺害し、巨額の報酬を手にパナマに渡るつもりでいた。ところが、元恋人ヨンジュ(チェ・ヒソ)がバンコクで殺害され、その娘のユミンが誘拐されたと知り、バンコクへと飛ぶ。そのインナムを追うのがコレエダの実弟のレイ(イ・ジョンジェ)。
ユミンは、身代金目当てに誘拐され、さらにタイの麻薬組織チャオポに臓器売買目的で売られていた。
インナムは、トランスジェンダーのダンサーのユイ(パク・ジョンミン)の力を借りて、誘拐された子どもたちの監禁場所に乗り込むが、ユミンはすでにそこから連れ出された後だった。そしてそこに、レイが乗り込んでくる。他の子どもたちは警察に保護されたものの、警察はチャオポとも裏で癒着していた。
こうして、インナム、レイ、タイの麻薬組織、タイ警察の四つが絡んで死闘を繰り広げることとなる。タイの麻薬組織のトップに「なぜ、おまえはあの男(インナム)を殺したいのだ?」と尋ねられてレイが「わからない。理由なんて忘れた」と答えたセリフがこの映画のキャッチフレーズに使われている。
舞台はインナムの移動に伴い、東京、仁川、そしてバンコクと移っていき、カーチェイス、密室での格闘など、主要なアクションの見せ場はほぼバンコクとなる。
東京のしっとりとしたやや生活感のある色合いから、仁川では暗く硬質な映像となり、バンコクでは、明るく赤みがかった色合いに変わる。小さな商店の密集する市場、屋台の並ぶ細い道路、猥雑な生活音だけでなく、熱帯のねっとりした空気と匂いすら漂ってきそうだ。
インナムもレイも残虐この上ない行為を平気でする人間だが、素早い画面の切り替えにより、残虐シーンを見せない工夫はされている(それでも怖い)。小さな店の密集した通りでのカーチェイスは、同じくファン・ジョンミンが主演の「ベテラン」を思い出す。イ・ジョンジェの狂気をはらんだ演技も迫力があった。しかし、東南アジア独得のオート三輪の乗り合い自動車を駆っての銃撃なんて前代未聞のクレイジーさだ。
しかし、なんと言っても、今回、その演技に唸らされたのは、トランスジェンダーのダンサー、ユイを演じたパク・ジョンミン。彼は「空と風と星の詩人、尹東柱の生涯」では宋夢奎、「それだけが、僕の世界」ではサヴァン症候群のピアノの天才、「スタートアップ」では金髪の高校生と、まるで異なるキャラクターを演じきってきた。まあ、そこそこうまい俳優だとは思っていたけれど、今回はほんとに泣けるほど、ユイになりきっていた。降りかかった災難のように事件に巻き込まれ、逃げるに逃げられなくなる。恐怖を乗り越えて、健気にもたくましく振る舞う。この役で助演男優賞をいくつも受賞したのも頷ける。
また、印象に残ったシーンは手品。コインの手品とペンの手品を見せてくれた2人のことを、ユミンはずっと覚えているだろうか・・・しかし、苛酷な運命ではある。
「金子文子と朴烈」などで知られるチェ・ヒソや、つい最近見たばかりの「息子の名前で」や「コレクターズ」にも出ていたソン・ヨンチャン、「パラサイト」で半地下に住んでいた家政婦の夫役のパク・ミョンフンなど、顔なじみの俳優がけっこう出てきた。コイツも絶対に見たことがある!と思ったのは、刑事役で友情出演のチェ・ビョンモ。「名もなき野良犬の輪舞」で印象的な役だった。日本側では豊原功補、白龍らが出ていた。
しかし、豊原の演じるヤクザの名前が「コレエダ」とはこれ如何に。
韓国でも是枝裕和監督は人気があるので、それを意識した名前じゃないかなあ、と思ったのであった。
写真は左から、トランスジェンダーのユイ、インナムとユミン、狂気のレイ。
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