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2021年12月31日14:50

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映画「カンウォンドのチカラ」

 昨日、今年の映画の見納めに、京都みなみ会館でやっているホン・サンス特集「カンウォンドのチカラ」(1997)「オー!スジョン」(2000)を見てきた。
 前者は「カンウォンドの恋」、後者は「秘花〜スジョンの愛〜」の題で公開されたことがあり、今回は、原題からの直訳の題名になっての再公開(以前の邦題は原題にはなかった、「恋」とか「愛」とかを入れてたんですねー、まったく)。
 私がホン・サンスの映画を見るようになったのは、2010年以降の「教授とわたし、そして映画」、「ハハハ」「次の朝は他人」の頃からなので、それ以前の作品はまったく見ていない。それで、この2作も今回、初めて見たんだけど、やっぱりおもしろーい。ホン・サンスは、昔から変わってないってことだな。まず、「カンウォンドのチカラ」から。

「カンウォンドのチカラ」は、二部構成。
 第一部では、仲良しの女子大学生3人が、夏休みにカンウォンドに旅行にでるところから始まる。ジスクは1人で夜行列車で。列車は混んでいて、通路に立ちっぱなし。そこに車内販売で、スルメとビールを売りに来る。朝、カンヌン駅で他の2人のウンギョンとミソンに合流し、海岸に行く。
 海辺では分厚い歌集を開き、歌を歌う。「いとしのクレメンタイン」を歌った後、ジスクは「永遠になぜ行ってしまったのか」じゃなく「お前はなぜ行ってしまったのか」でしょ、と言い張る。ウンギョンたちは歌集を開き、「永遠に」だよというが、ジスクは聞かない。
 この「いとしのクレメンタイン」は、日本では「雪山賛歌」として知られる曲。韓国では、もともとのアメリカの歌に近い訳詞で親しまれている。詩人の金時鐘さんの自伝にも出て来たように記憶する(今、思い出せないのだけれど)。多くの映画やドラマに出てくるようだ。

 滝を見たり、洛山寺(ナクサンサ)に行ったり、野外の温泉に行ったり(服を着たまま足だけ浸かる)して、集落の中を歩いていて出会った警官に「民宿は?」と聞いて、教えてもらった民宿に泊まる。民宿の家の子が、「あたしは別の家に行くから」と部屋を空けてあげたようす。まさに民家に泊まる感じだ。ミソンはジスクの服を借りて着てみてご機嫌だ。なぜか、山道を歩いていると生きた魚が落ちている。ジスクは穴を掘って埋めようとする。まだ生きているのにと言われると、どうせ踏まれるなら埋めてやった方が良いというのだ。
 
 その警官は既婚者だがヒマらしくて、彼女らの散策につきあい、夜は一緒に飲む。酔っ払ったミソンは、ジスクが既婚者とつきあっていることを非難し始め、激しい口論に。ジスクは泥酔して歩けなくなり、警官は詰め所に連れて行くが、そこで添い寝(なんじゃい)。翌朝はすっかり元気になり、ミソンも「昨夜はごめんね」なんて仲直り。帰り際、ウンギョンはおじさんの日本土産の大事なナイコンのカメラをなくした、見つかったら知らせてと警官に頼む。帰りは3人一緒にバス。
 ソウルに戻ってきたあと、ジスクはウンギョンに「あんたのとこに泊まったことにして」といって、また警官に会いにカンヌンへ。そして、海辺の刺身屋で刺身を頼むとホヤがサービスで付いてくる。警官はわざわざ自分に会いに来て、夜も泊まっていくというのでその気なのだが、ジスクはまたも泥酔し、ホテルのベッドに横になるがセックスはする気なさそう。つっけんどんな態度のまま別れ、帰りのバスの中で、突如、号泣する。ジスクの行動は何が何だかよくわからない。

 第二部。大学講師のサングォンは、後輩の大学教授、チェワンとカンウォンドに行くことにする。列車ではビールとスルメイカを売りに来るが、ジスクが乗った時とそっくりそのままのシーンを角度を変えて撮っているのである。さらに、二人は、ジスクが警官と行った刺身屋で刺身を頼むが、「ホヤはサービスです」と頼まぬホヤが付いてくるところが、まったく同じでおかしい(ホヤの刺身というのは食べたことがない。日本ではあんまり食べないよね)。
 で、ジスクたちが行ったのと同じような山の中の道を歩いて滝に行ったりして、途中ですれ違った女性に心を惹かれる(最初、私は、ジスクかと思った)。彼女とある場所で会う約束をするが、すっぽかされる。その後も、行く先々で彼女に出会うが、軽く無視され、とうとう頭にきたサングォンは「なんで約束を破ったのか」とつっかかるが、連れの男が出てきて、仕方なく引き下がる。その後はやけっぱちのようにナイトクラブに繰り出して、ロシア人ダンサーのお持ち帰りの値段を聞いたり(30万ウォンだった)、韓国人のホステスをホテルに連れ帰って「さっさとして」といわれてそそくさとセックスしたり。見せられる方はまったくげっそりだが、ホン・サンス、こういうところはとことん男に甘い。
 翌朝は飛行機で帰ろうと空港に行くが、どの便も満席で、キャンセル待ちのためにまた少し観光して時間を潰しては、空港に戻ってくることを繰り返す。最終便には2席があったが、予約済みの客が一人現れ(あの女の連れだった)、チュワンだけが飛行機で帰る。取り残されたサングォンは、その後、新聞であの女性が山で転落死したことを知り、連れの男が殺害したのではと思い、匿名で警察に通報する。
 サングォンはジスクらしい女とうらぶれたホテルで会う。彼女は中絶したからセックスはしない、それはあなたの子ではないといわれ、混乱する。(ここに来て、ジスクがつきあっていた既婚者がサングォンだったという話になるのか・・・見てる最中はわからず)。

 結局、他のサイトの説明などを読んで補うと、ジスクは既婚の大学講師サングォンとつきあっていたが、別れ、仲の良い女友達とカンウォンドのカンヌンへ。旅行中も、屈託のない他の二人とはちょっと変わっていたジスク。たいして好きなわけでもない警官にまた会いに行って、帰りに号泣したのも、何をしても満たされない自分の心の寂寥感ゆえだろうか。

 第二部のサングォンは今はソウルの大学の講師だが、春川大学の教授に応募していて、その応募書類を持って春川まで日帰りで行ったりもしている(春川も同じ江原道だがずっと近いのだ。江陵(カンヌン)は海辺の観光地でかなり遠い)。教授職を得るには、コネと賄賂がものをいうようで、先輩に高級洋酒を届けたりしている。教授たちと酒を飲んで管を巻く場面も出てくるが、すごく下世話でくだらない・・・。また、妻子の住むアパートの中のテレビから日本の大相撲中継の音声が流れてくる。このころ、韓国のテレビで大相撲をやっていたのか。また、目薬を買いに立ち寄った薬屋では、勧められた目薬が日本製なのをいやがり、韓国製のを指名して買ったりもしている。なぜそのような会話を入れたんだか。
 ひょんなことから他人が飼っていた金魚二匹を洗面器で飼うことにするが、旅行から帰ってくると部屋がぐちゃぐちゃになっていて、金魚が一匹いなくなっている。これは、ジスクたちが山道で拾った魚のことを思い出させる。まあ、ありえないんだけど。

 ホン・サンスの映画を面白いと思うか、つまらないと思うか、人によって評価はまったく分かれると思うけど、私は不思議とこの人の映画にひかれる。出てくる人物には共感できないようなクズ男が多い。酔っ払って、くだを巻いて、懲りずに女に手を出す。話はとりとめがなく、わけがわからない。なんか繋がりがありそうでなさそうで、いったいあれは何だったんだろうという変なエピソードが淡々と描かれる。ドキドキはらはらさせられることはない。でも、奇妙な味だけが残って、あー、なんかわかんなかったけど面白かったなと思わせるのだ。

写真は、1997年当時のカンヌン駅。今は平昌オリンピックの際にカンウォンド方面の鉄道も整備され、近代的な駅舎になっているようです。


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