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2021年10月04日21:55

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映画「宴の日」

昨日までオンラインで開催されていたSKIPシネマシティ国際Dシネマ映画祭の上映作品。
本来なら、埼玉県川口市で開催されるはずだった映画祭だが、コロナのためにオンライン開催。長編は1本300円、短編は1本100円というチケット代も魅力だ。現地開催ならまず行けなかった映画祭も、こんなことで視聴が可能になった。上映作の中から、今回見たのは、韓国のキム・ロッキョン監督の「宴の日」という長編映画。

 ギョンマンとギョンミ兄妹の父は病気で長く入院中だった。二人は交代で病院に通っていたが、ちょうど妹のギョンミが看病に訪れているときに息を引き取る。ギョンミは兄のギョンマンに電話で知らせ、葬儀の手配をすることになる。葬儀社に言われて急いで用意した遺影も、ギョンミがスマホで撮ったスナップ写真だ。でも、その写真の父はとてもいい顔をしているのだ。なのに、駆けつけてきた親戚の女たちは、「何、この写真は」と文句をつけ、さらに、「こういうときは、「アイゴー、アイゴー」と言って泣くのよ、はい、やってみて」と口うるさく指図する。叔父は父の借金のことを持ち出す。通夜の客に出す料理をどうするかなどでも一人で決断を迫られるギョンミ。

 兄のギョンマンは宴会などの司会業をしているが、父の葬儀だというのに、先輩に頼まれた仕事を引き受け、ソウルから田舎の町に向かっていた。父の葬儀代のことを考えると引き受けざるを得なかった。仕事は、ある年老いた女性の誕生日のお祝いで、村人を大勢招いて行う宴席の司会役だった。依頼人である息子は、父が亡くなって以来、笑顔を見せることのない母をぜひ笑顔にして欲しいと頼む。そして、かつて父親が身につけていた服を取りだして、これをギョンマンに着て欲しいと言う。そこで、ギョンマンはその白いスーツを身につけ、面白おかしく口上を述べ、村人ののど自慢大会、自らの踊りの披露と大活躍。その間、ギョンミは何度も電話をするが出る間もない。

 宴もクライマックスとなり、参加者全員が踊り出す。そこでギョンマンは、主役の老婦人に、さあ、ご一緒にと手招きをすると、彼女はニッコリとわらって「あなた(ヨボ)」と言って手を伸ばすが、とたんに倒れて意識を失ってしまう。宴は一転して大騒動、お祖母さんは救急車で運ばれ、その後、病院で亡くなったことが知らされる。今度は、いったい、誰のせいでこんなことになったのかと責任のなすりあいになり、ギョンマンを招いた側は司会役のギャラさえ支払わずに追い返そうとする。一方、村の婦人会長がギョンマンがきつく手を握ったせいで発作を起こしたに違いないと言い出したために、一同が警察に呼ばれることに。取り調べの最中で、電話をかけてきた先輩に事情を説明、驚いた先輩は、ギョンミにギョンマンの事情を伝える。ギョンマンが葬儀をすっぽかして姿をくらましていたと思い込んでいたギョンミは、今度はギョンマンが巻き込まれた突然の不運を知り、泣き出してしまう。その後、葬儀社から納棺についての問い合わせの電話を受けたギョンマンは言葉少なに「できるだけよいもので」と答える。

 刑事の尋問の最中に、女性が倒れる瞬間の映像がスマホで撮影されていたことがわかる。それを見ると、彼女はギョンマンの手に触れてはおらず、ニッコリ笑って立ち上がった直後に倒れたことがわかる。亡き夫の服を着ていたギョンマンを夫だと思い、「あなた」と呼びかけ、微笑んで立ち上がったのだ。こうして、ギョンマンの疑いが晴れる。また、ギョンマンは「本当は自分の父親が亡くなったばかりで、その葬儀代のためにこの祝宴の司会の仕事を引き受けたのだ」と打ち明ける。村人たちはすっかり同情し、さっきまではギャラも払わずに追い返そうといっていたことなど忘れたかのように、彼に優しく接するようになる。そして、依頼人は分厚い封筒を手渡して彼をねぎらい、見送るのだった。

 夜になってようやく葬儀場に着いたギョンマンは、ギョンミと共に、納棺の儀式を行う。納棺師の立ち会いの下、父の遺体に麻の経帷子を着せる。今日一日、ただただ忙しく過ごしていた二人はようやく静かに父と対面し、父を失った悲しみにともに向き合う。

 葬儀を終えて、遺灰を収めた容器を抱えたギョンミが、ギョンマンに「アボジに海をみせてあげよう」と提案する。遺影に使った写真は、みんなで海釣りに出かけた日に撮ったもの。その日の記憶が蘇る。魚を釣り上げて上機嫌な父と並び、後ろにギョンマンが顔を出したところで3人揃って写真を撮ったのだ。あの日と同じように船に乗る二人。その場には父もいるようだった。

 父が亡くなり、まだ若い息子と娘が後に残される。妹が見守る葬式の進行と同時に進むのが、兄が司会を務める別な場所の別の家族のお祝いの宴。そこで次々に起こるトラブル。ギョンマンは果たして、自分の父の葬式に出られるのか?とハラハラしてしまう。葬儀に参列する親族や知人たちも、祝宴に参加する人々も、それぞれ自分勝手なことばかり。
 しめやかなはずの葬式にハプニングが起こり、当事者たちは大真面目なのに、何かおかしい。こうしたちょっと人を食った葬式映画の嚆矢とも言える「お葬式」の系譜を見事に引き継いだ映画だ。いかにも韓国らしいのは、葬儀の場では、必ず「アイゴー」といって泣くというお約束が出てきたり、葬儀の段取りを決めるのはあくまでも長男であって、その場には妹がいるというのに、葬儀社の人は、妹には目もくれなかったりするところだ。納棺の儀も独得だ。アン・ソンギ主演の「祝祭」では、あの麻の経帷子を着せた後、ぐるぐると縛っていなかったっけ?ラストのしみじみ、ほのぼの的な情感も含めて、なかなかよくできた家族映画でした。
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